障がいがあっても「自分でクルマを運転したい」と考える人は少なくありません。
事故や病気で身体が不自由になった方や、元々障がいを持つ若者にとって、クルマは自由な生活を支える大切な手段です。
本記事では、障がいがあっても免許を取得する方法や、自分に合ったクルマの選び方、費用の目安、サポート制度などを具体的にご紹介します。
障がい者でも運転免許は取得できる?
法律上の条件と免許の種類
障がいがある方でも、道路交通法に基づいて運転免許を取得することが可能です。
身体障がい者に対しては、運転時に必要な装置を備えた車両の利用を前提に、運転能力を個別に判断する「適性相談」が用意されています。
ほとんどの運転免許試験場には「適正相談室」があります。
身体の状態による制限と適性検査とは
手足の可動範囲や視覚、聴覚など、障がいの種類に応じて運転が可能かどうかが判断されます。
その上で、運転免許試験場での「運転適性相談」や「適性検査」により、免許取得の可否や条件が決定されます。
免許取得までの具体的な流れ
最初にするべき「適性相談」とは?
免許の取得を検討している段階で、まず運転免許試験場の「適性相談窓口」に相談しましょう。
ここで医師の診断書をもとに、どのような条件で運転可能かが判断されます。
何度でも相談できるので、一度否決されても、医師やリハ療法士に聞き、残存機能で運転可能かどうか納得いくまで確認しましょう。
指定教習所と一般教習所の違い
障がい者対応の教習所(指定教習所)では、専用車両や補助装置のある車での教習が可能です。
手動運転装置のついた車があることが多いようです。
事前に問い合わせて、対応している障がいの種類や設備を確認するのがおすすめです。
卒業までにかかる費用と期間の目安
教習費用は一般的な費用に加えて、特別車両の利用料金が加わる場合があります。
目安として、合計30〜50万円程度かかるケースが多いです。期間は約1〜3ヶ月程度が一般的です。
障がいに応じた自操用車両の種類と特徴
手動運転装置のタイプ別紹介(例:左手アクセル・ブレーキ)
下肢に障がいがある方のために、手だけでアクセル・ブレーキ操作がでる装置があります。操作レバーやスライド式のアクセルなど、いくつかのタイプがあります。
左足アクセルや旋回ノブなど補助装置の活用例
右足が不自由な場合は左足アクセル、握力が弱い方には旋回ノブやグリップ補助装置など、障がいの程度に応じた補助装置の選択肢が広がっています。
また、上肢に障害がある場合は、足踏みペダルでハンドル操作が可能な自操用車両もあります。
車両の選択肢:最初から福祉車両として購入 or 後付け改造
最初から自操用福祉車両として購入する方法と、購入後に改造する方法があります。予算や希望の車種に応じて選ぶことができます。
購入・改造時に知っておきたい費用と支援制度
自操用福祉車両の価格帯と改造パターン
自操用福祉車両は、改造の程度により価格が異なります。新車をベースに改造する場合は100〜300万円程度、中古車の改造であれば50万円前後が目安です。
福祉車両購入時の補助金・助成制度
一部の自治体では、福祉車両の購入や改造に対する助成金制度があります。条件や金額は地域によって異なるため、住んでいる市区町村に問い合わせましょう。
ここでは、実際に助成金や補助金が支給されている東京と大阪の具体例をご紹介します。
たとえば、東京都港区では、車いす同乗用の新車を購入する場合に最大30万円までの助成があります。中古車を購入する場合でも、取得費用の1/5が助成され、上限は同じく30万円です。また、手動運転装置などの自操用改造に対しても、上限13万3,900円の補助が出ます。
同じく東京都品川区でも、新車の購入に対して最大30万円、改造費に対しては最大15万円までの助成制度が用意されています。これらはすべて、購入や改造の前に必ず申請が必要です。
一方、大阪市では、重度の身体障がい者が自ら運転するための車両改造費に対して、費用の50%以内(上限10万円)の補助があります。たとえば、20万円の改造費がかかる場合、そのうちの10万円が補助される計算になります。
また、大阪府内の八尾市や高槻市などでも、自動車改造に対する補助制度があり、いずれも上限10万円までとなっています。
このように、福祉車両の購入・改造に関する支援制度は自治体ごとに用意されており、その内容や金額は地域によって異なります。
必ず事前申請が必要なケースが多いため、購入や改造を検討する前に、住んでいる市区町村の福祉担当窓口に確認することをおすすめします。
後から改造する場合の流れと補助の有無
既に所有している車を改造する場合も、補助が出る可能性があります。改造業者と相談しながら、必要書類の用意や申請手続きを進めます。
自動車税・重量税の減免制度(手続きの流れも解説)
障がい者本人が使用する車や家族が送迎に使う車については、自動車税・重量税の減免が適用されます。必要書類(手帳・車検証など)を準備し、自治体に申請します。
福祉車両に対する自動車税の減免制度は、全国的に基本の仕組みは同じですが、自治体によって助成金・免除額の申請方法や追加要件が異なる場合があります。
● 排気量別の減免額(普通乗用車・自家用)
排気量 | 通常の年税額 | 減免後の免税額目安 |
---|---|---|
~1.0L | 29,500円 | 免除(目安:29,500円減免) |
1.0L超~1.5L | 34,500円 | 免除(目安:34,500円減免) |
1.5L超~2.0L | 39,500円 | 免除(目安:39,500円減免) |
2.0L超~2.5L | 45,000円 | 免除(目安:45,000円減免) |
2.5L超~3.0L | 51,000円 | 免除(目安:51,000円減免) |
3.0L超~3.5L | 58,000円 | 免除(目安:58,000円減免) |
3.5L超~4.0L | 66,500円 | 免除(目安:66,500円減免) |
4.0L超~4.5L | 76,500円 | 免除(目安:76,500円減免) |
4.5L超~6.0L | 88,000円 | 免除(目安:88,000円減免) |
6.0L超 | 110,000円 | 免除(目安:110,000円減免) |
(※上記は普通乗用車・自家用の場合。軽自動車では10,800〜12,900円程度の減免が一般的です)
この「減免額=通常の年税額相当分が非課税になる」方式は、全国的に共通の考え方です。
ただし、自治体によっては全額免除ではなく「一部控除」や「上限額設定」(例:2.0L超2.5L以下に45,000円上限)などの差異があるため、申請前に役所のホームページや窓口で確認が必須です。
また、構造減免制度(車椅子仕様や手動運転装置など特殊構造を有する車両を対象に)についても、排気量に関わらず減免対象となります。
特に法人や施設向けには複数台対象となる場合もありますので、車検証に「用途:特殊/構造:車いす移動車」などの記載があるか要確認です。
【まとめ】
- 排気量別に通常の年税額分が非課税になる仕組みは全国的に共通
- 軽自動車では約1.1万円〜1.3万円程度の減免
- 構造による減免も適用可能(車椅子仕様など)
- 自治体によって申請条件や上限金額に差があるため、事前確認が重要
購入や改造前に、必ずお住まいまたは車両登録地の自治体税務課や福祉課に相談・確認することをおすすめします。
障がい者向け運転に関するその他のサポート制度
障がい者手帳の等級による違い
手帳の等級により受けられる支援が異なります。
たとえば、身体障がい者1〜3級であれば運転に関する多くの制度の対象になります。
地方自治体独自のサポート内容
各自治体では、教習所への通学支援やタクシーチケットなど、独自の支援制度が設けられていることがあります。
免許更新時の注意点と継続支援
障がいのある方は、免許更新時に追加の適性検査が必要になることがあります。
更新の際も、継続的な相談が可能な窓口を活用しましょう。
普通に更新に行っても、適性検査室に案内される場合がほとんどです。
免許取得後の生活はどう変わる?体験談と声
「通院・買い物が自分のペースでできるように」
移動手段が確保されることで、外出の自由度が格段に向上します。通院や買い物を家族に頼ることなく、自分でこなせるようになることは大きな自信につながります。
「仕事や旅行も前向きに考えられるようになった」
移動の選択肢が増えると、通勤や旅行の可能性も広がります。障がいを理由に行動を制限する必要がなくなったという声も多く聞かれます。
自動車通勤が可能になったことで、仕事に関する選択肢が大きく広がります。
別記事で特集します。
「家族の負担が減って関係もよくなった」
家族の送迎負担が軽減され、本人も家族も気持ちに余裕ができたというエピソードも。
運転が「自立」の第一歩になることもあります。
まずは相談から。失敗しないためのチェックリスト
最寄りの運転免許センターや指定教習所を調べる
まずは、自分の住んでいる地域で障がい者に対応している教習所を探しましょう。Webサイトや電話での問い合わせも可能です。
都道府県 | 試験場・センター名 | 電話番号 | 受付時間(平日) |
---|---|---|---|
北海道 | 札幌運転免許試験場 | 0570‑080‑456 | 8:45–17:30 |
青森県 | 運転免許センター | 017‑782‑0081 | 8:30–17:15 |
岩手県 | 盛岡運転免許センター | 019‑606‑1251 | 9:00–17:00 |
宮城県 | 運転免許センター(仙台) | 022‑373‑3601 | 8:30–17:15 |
秋田県 | 運転免許センター | 018‑824‑3738 | 8:30–17:15 |
山形県 | 総合交通安全センター | 023‑655‑2150 | 8:30–17:15 |
福島県 | 運転免許センター | 024‑591‑4372 | 8:30–17:15 |
東京都 | 府中運転免許試験場 | 042‑362‑3591 | 8:30–17:15 |
東京都 | 鮫洲運転免許試験場 | 03‑3474‑1374 | 8:30–17:15 |
東京都 | 江東運転免許試験場 | 03‑3699‑1151 | 8:30–17:15 |
神奈川県 | 運転免許センター(横浜) | 045‑365‑3111 | 8:30–17:15 |
埼玉県 | 運転免許センター(鴻巣) | 048‑543‑2001 | 8:30–17:15 |
千葉県 | 運転免許センター(千葉) | 043‑274‑2000 | 8:30–17:00 |
茨城県 | 運転免許センター | 029‑293‑8811 | 8:30–17:15 |
栃木県 | 運転免許センター | 0289‑76‑0110 | 8:30–17:15 |
群馬県 | 総合交通センター | 027‑253‑9300 | 8:30–17:15 |
新潟県 | 運転免許センター | 025‑256‑1212 | 8:30–17:15 |
富山県 | 運転教育センター | 076‑441‑2211 | 8:30–17:00 |
石川県 | 運転免許センター | 076‑238‑5901 | 8:30–17:00 |
福井県 | 運転者教育センター | 0776‑51‑2820 | 8:30–17:15 |
山梨県 | 総合交通センター | 055‑285‑0533 | 9:00–16:00 |
長野県 | 北信運転免許センター | 026‑292‑2345 | 8:30–17:00 |
静岡県 | 中部運転免許センター | 054‑272‑2221 | 9:00–17:00 |
愛知県 | 運転免許試験場(名古屋) | 052‑801‑3211 | 9:00–17:00 |
三重県 | 運転免許センター | 059‑229‑1212 | 8:30–17:15 |
滋賀県 | 運転免許センター | 077‑585‑1255 | 10:00–17:00 |
京都府 | 運転免許試験場(京都) | 075‑631‑5181 | 8:30–17:15 |
大阪府 | 門真運転免許試験場 | 06‑6908‑9121 | 9:00–17:00 |
大阪府 | 光明池運転免許試験場 | 0725‑56‑1881 | 9:00–17:00 |
兵庫県 | 運転免許試験場(明石) | 078‑912‑1628 | 9:00–17:30 |
奈良県 | 運転免許センター | 0744‑22‑5541 | 10:30–16:30 |
和歌山県 | 交通センター | 073‑473‑0110 | 9:00–17:00 |
鳥取県 | 運転免許センター | 0857‑36‑1122 | 9:00–17:00 |
島根県 | 免許センター | 0852‑36‑7400 | 8:30–17:15 |
岡山県 | 運転免許センター | 086‑724‑2200 | 8:30–17:15 |
広島県 | 運転免許センター | 082‑228‑0110 | 8:30–17:15 |
山口県 | 総合交通センター | 083‑973‑2900 | 8:30–17:00 |
福岡県 | 運転免許試験場(福岡) | 092‑565‑5010 | 9:00–17:00 |
佐賀県 | 運転免許試験場(佐賀) | 0952‑98‑2220 | 9:00–17:00 |
長崎県 | 運転免許試験場(大村) | 0957‑53‑2128 | 9:00–17:00 |
熊本県 | ── | ※PDF参照 | ※PDF参照 |
※熊本県以下の九州・沖縄エリアは長くなるため省略しましたが、全件一覧は警察庁の「各都道府県警察運転免許センター等の問い合わせ先」PDFでご確認いただけます 。
※連絡先や受付時間は変更される可能性があります。最新の情報は各都道府県警察の公式サイト、またはPDFからご確認ください。
障がい者運転相談窓口を活用する方法
免許センターには「適性相談窓口」が設置されていることがあります。
自分の障がいの内容や運転の希望を伝えて、適切なアドバイスをもらいましょう。
準備すべき書類と面談時のチェックポイント
主に必要な書類は、医師の診断書、障がい者手帳、本人確認書類などです。教習所によって求められる書類は異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
まとめ:自分の可能性を信じて、一歩踏み出そう
障がいがあっても、運転を諦める必要はありません。
正しい手続きと自分に合った支援を受けることで、移動の自由が手に入ります。クルマの選択肢も広がっており、購入・改造・税制面の支援も受けられます。まずは気軽に相談して、自分にぴったりの道を一緒に見つけましょう。
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