老親が車椅子生活になり、外出のたびに「どうやって乗せるか」を家族が何度も工夫しなければならない状況は、どの家庭でも突然訪れます。
そのとき選択肢として浮かぶのが「スロープ付き軽ワゴン車の購入」ですが、実際には 新車を買うのか/中古で探すのか/今ある車を改造するのか によって、使える助成制度や申請窓口が大きく変わります。
さらに、福祉車両の助成や税金の減免は
- 岐阜市の制度
- 岐阜県(税務関係)の制度
この“二段構造”で成り立っているため、どちらかだけ調べても不十分になりがちです。
この記事では、岐阜市に住むご家族を想定し、新車・中古・改造の3パターンで どこに何をいつまでに申請するのか をわかりやすく整理します。
1. 岐阜市で福祉車両を検討するときに押さえるべき支援の全体像
岐阜市+岐阜県で使える主な制度一覧(ざっくりマップ)
岐阜市で福祉車両を検討する際、まず押さえるべき制度は次の4つです。
① 介助用自動車の購入・改造費助成(岐阜市)
在宅の重度身体障がい者のために、介助者が運転する福祉車両の「購入費」または「改造費」を助成します。
対象はスロープ付き・リフト付きの車で、新車・中古どちらも対象になります。上限は24万円です。
② 身体障害者用自動車改造費助成(岐阜市)
障がい者本人が自ら運転するための改造費(手動装置・左アクセルなど)が対象で、上限10万円です。
③ 自動車税・軽自動車税の減免(岐阜県+岐阜市)
障害者手帳の種別・等級に応じて、軽自動車税や自動車税(種別割・環境性能割)が減免されます。
新車取得時は登録日から30日以内に申請が必要です。
④ 高速道路などの障害者割引(全国)
事前手続きで、高速道路料金などが割引対象になります(ETCカード登録方式)。
この記事で詳しく扱う「3つのケース」
- 老親のために スロープ付き軽ワゴン車を新車で購入する
- 費用を抑えるために 中古の福祉車両を購入する
- 今持っている車に スロープや手動装置などを後付け改造する
この3ケースは同じように見えますが、助成金・申請窓口・提出書類・タイミングがそれぞれ違います。以下ではケース別に詳しく説明します。
2. ケース1 老親のためにスロープ付き軽ワゴン新車を買う場合(介助用自動車購入等助成)
岐阜市の「重度身体障害者介助用自動車購入等の助成」とは
この制度のポイントは以下のとおりです。
- 在宅で重度身体障がいのある方の移動を確保するための制度
- 介助者(家族など)が運転する車を対象とする
- 助成対象は
- リフト・スロープ等の「改造費」
- すでに改造された福祉車両の「購入費」(新車・中古どちらも対象)
- 助成上限は 24万円
- 所得制限・重複助成禁止・5年以内の再利用不可などの決まりがある
特に重要なのは、購入前に相談・申請が必須という点です。購入後では一切対象になりません。
申請前に必ず確認しておきたいポイント
- 車の契約より先に相談すること
ディーラーで契約書を交わしてしまうと、その時点で助成対象外になります。 - 名義の扱い
介助者名義の車であることが原則です。老親本人名義にはしません。 - 見積書の形式が厳密
業者住所・会社名・代表者印・車両仕様などが必要で、ディーラー側に説明が必要です。 - ベース車+架装(スロープ)の形式がわかる資料が必須
新車の場合は純正カタログでOKですが、メーカーによって表記が異なるため要確認です。
具体的な申請手順(窓口・書類・タイミング)
① 事前相談(最重要)
窓口:岐阜市 障がい福祉課
電話相談も可能で、「重度身体障害者介助用自動車の助成を検討中」と伝えます。
② ディーラーで見積書とカタログを準備
スロープ付き軽ワゴンの見積書と、架装部分の説明が分かる資料(純正カタログなど)を用意します。
③ 申請書類一式を提出(必ず購入前)
提出書類は自治体の指定書式に加え、一般的に以下を求められます。
- 身体障害者手帳(本人)
- 運転者(介助者)の運転免許証
- 見積書
- 車両カタログ
- 世帯の所得確認書類
- マイナンバー関連書類
- その他自治体が指定する書類
④ 交付決定通知を受け取る
審査の上、助成の可否と助成額(上限24万円)が通知されます。
⑤ 車両の購入・登録(決定後に契約)
通知後に正式契約を行います。名義は介助者とし、税金減免の申請もこの段階で準備します。
⑥ 完了届・実績報告の提出
購入後に以下の書類を提出します。
- 完了届
- 領収書(見積と同一業者)
- 車検証
- 改造部分の写真
- 助成金振込の口座情報
⑦ 助成金受取り
ここまでで、新車の場合の手続きは完了です。
3. ケース2 中古の福祉車両を購入する場合の注意点と手順
新車との違い(岐阜市助成のポイント)
中古車も「重度身体障害者介助用自動車購入等の助成」で対象になりますが、次の点に注意が必要です。
- 福祉車両とベース車両の2種類の見積書が必要
架装済み中古車は、構造が見えにくいため詳細書類が要求されやすいです。 - 改造部位の説明資料が必要になることが多い
- 走行距離・年式により対象外の可能性がある
これは自治体により基準が異なるため、必ず相談が必要です。
中古購入の具体的フロー
- 中古販売店で見積書を取得
住所・会社名・押印の入った正式見積書が必要です。 - 岐阜市障がい福祉課に事前相談
中古車は“販売店の動きが早い”ため、相談→申請の順番がとくに重要です。 - 申請書提出(購入前)
- 交付決定通知
- 購入・名義変更
- 完了届・実績報告書の提出
中古車でよくある質問(Q&A)
Q. 契約してしまった中古車は助成対象になる?
A. 原則対象外です。購入前申請が大前提です。
Q. ネット販売や県外業者から購入しても良い?
A. 可能ですが、見積書様式が自治体要求に合わないことがあるため、事前確認が重要です。
Q. 名義変更だけでは助成対象になる?
A. 購入費用に対する助成のため、名義変更だけでは対象外です。
4. ケース3 今ある車を改造する場合(本人運転/介助者運転)
本人が運転するための改造(身体障害者用自動車改造費の助成)
この制度は「本人が自分で運転する」場合に使います。
対象改造は、
- 手動運転装置
- 左アクセル
- 操向装置
など“運転操作そのものに関わる改造”で、助成上限は10万円です。
対象者は、
- 身体障がい者本人
- 18歳以上
- 就労や日常生活のため運転する必要がある
などの条件があります。
本人運転の改造フロー(どこに何を出すか)
- 障がい福祉課に事前相談
- 改造業者から見積書を取得
- 申請書類提出(購入・改造前)
- 決定通知後、改造を実施
- 完了届提出(領収書・写真・車検証など)
- 助成金受け取り
介助者が運転するための改造(介助用自動車購入等助成との違い)
本人運転の制度(改造費助成)と、介助者運転の制度(介助用自動車購入等助成)は対象も目的も違うため、どちらの制度を使うべきか相談段階で必ず確認しておきます。
5. 税金の減免手続き(岐阜県自動車税事務所+岐阜市税制課)
自動車税・軽自動車税の減免の基本
岐阜市では、障害者手帳の等級に応じて
- 自動車税(種別割)
- 環境性能割
- 軽自動車税(種別割)
の減免が受けられます。
対象は、
- 本人が運転する場合
- 生計を同じくする家族が運転する場合
- 常時介護者が運転する場合
など用途により条件が変わります。
新車・中古車取得時の申請タイミングと窓口
最重要ポイント:登録日から30日以内が期限です。
- 自動車税(県税):岐阜県 自動車税事務所
- 軽自動車税(市税):岐阜市 税制課
電子車検証が導入されたため、提出書類が「自動車検査証記録事項のコピー」になる点にも注意が必要です。
よくある落とし穴(期限・名義・台数制限など)
- 契約後に「税金が安くなるなら先に言ってほしかった」となりやすい
- 台数制限があり、2台目以降は対象外になる場合が多い
- 名義が本人でも使用者設定が違うと対象外になり得る
6. モデルケースで見る 老親のためのスロープ付き軽ワゴン新車購入のタイムライン
相談〜申請〜納車までの時系列
- 車いす利用が増え、外出が困難に
- ディーラーでスロープ付き軽ワゴンの見積を取得
- 障がい福祉課で相談 → 申請書提出
- 助成額が決定
- 決定後に正式契約・登録
- 車両納車
- 完了届+写真+領収書を提出
- 助成金振込
家族がやっておくと良い準備
- 障害者手帳の等級確認
- 所得制限の確認
- 将来の介護度変化を考えた車種選定
- 税金減免の窓口・必要書類の早めの調査
7. まとめ 岐阜市で福祉車両を検討するときの3つの鉄則
- 購入・改造前に必ず「障がい福祉課」に相談すること
- 新車・中古・改造のどれに該当するかを最初に切り分けること
- 助成+税金減免をセットで考えること(片方だけだと損をする)
この記事は2025年時点の制度をもとに整理しています。制度は変更されるため、最終確認は必ず岐阜市障がい福祉課・岐阜県自動車税事務所・岐阜市税制課にて行ってください。

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