
2024年4月1日の改正障害者差別解消法で、事業者の「合理的配慮」の提供が義務化されました。
「配慮してほしい」と頼まれれば「できる範囲でやらなければいけない」んですが、実際に行われてるのか? 自分が頼む側ならどうやって頼むのか? など、なんか実態が見えないのでモヤモヤしてしまいます。
この記事では、具体的に「どうしたらいいか」というアドバイスと、その根拠、さらには提供側の視点を踏まえ、利用者と事業者双方がスムーズにサービスを受け渡しできるように解説していきます。
セルフガソリンスタンドでの給油補助対応

自分で給油できないドライバーが頼む場合
セルフスタンドは、利用者自身が給油を行う仕組みですが、自分で給油するのが困難なドライバーの場合はどうしたらいいのでしょうか?
以下のような方法が一番スムーズです。
到着時の声かけ
店舗に到着したら、まず店員に声をかけるのですが、これが一苦労です。
…というのは、声の届く場所に店員さんがいないことが多いです。
給油機のインターホンを、車の中から手を伸ばして押せればいいのですが、給油口が運転席と逆側にあったり、ホースにミラーが引っかかりそうだったり、給油機にクルマが接触しそうだったりすると押せません。
そんなときの方法は…
- 見える場所までクルマで移動する。
- クラクションを鳴らす。
- 他のお客さんにインターホンを押してもらう。
- 店舗に電話をかける。
- ハザードを付けてひたすら待つ。
などがいいでしょう。
そして声掛けとして
「●●なので自分で給油ができません。お願いできますか?」
でいいと思います。
「自分でできない」だけだと、「自分でやって下さい。お手伝いしましょう」になってしまいます。
そして、店員さんが他の仕事で忙しいときは、快く待つようにしましょう。
スムーズな配慮をしてもらうために必要です。
常連客になる
行きつけのガソリンスタンドを作るのも、いい方法です。
セルフ給油が当たり前になったころは、こんな風に声を掛けました。
「ずっとここを使うので入れてもらえますか?」
こう言うと、ナンバーを控えるなどクルマを特定してくれました。
合理的配慮が義務化しても、ガソリンスタンドとこういった付き合い方をしたほうがスムーズなサービスを受けられます。
法的根拠
繰り返しになりますが、このような対応の根拠としては、障害者差別解消法の改正による「合理的配慮の提供義務」です。
従来、民間事業者による合理的配慮は努力義務とされていましたが、2024年4月1日からは法的義務となりました。
これにより、セルフスタンドにおいても利用者からの要望に応じた給油補助が義務化されています。
さらに、経済産業省が示すガイドラインにより、安全確保を前提とした補助対応が各店舗で進められるよう、具体的な運用方法が整備されています。
提供側の視点
一方で、ガソリンスタンド側は、長らくセルフサービスを基本とした運用が中心であったため、法改正後の体制整備が求められています。
特に人手不足や研修の遅れなどにより、実際の現場で十分な対応がなされないケースもあるようです。
店舗側としては、補助対応を円滑に行うために、スタッフへの意識付けや研修が必要でしょう。
お互いスムーズに進めるために
利用者側は、店舗の忙しさと対応状況を把握し、給油補助をお願いする際は、上で書いたような声掛けやちょっとしたコツが必要となってきます。
また、店舗側は、補助対応のルールを周知徹底し、万が一のトラブル時にも迅速に対応できる体制づくりを進めるべきです。
両者のコミュニケーションが円滑に行われることで、安心してサービスを利用できる環境が整います。
「出光」さんのポスター

このポスターは今回の改正に合わせたものでなく、障害者差別解消法が施行された2016年ころのものと思われます。
なぜ見かけなくなったのか理由は分かりませんが、店舗側の対応としては素晴らしいアイデアです。
是非、復活してほしいですね!
聴覚障害者の契約時対応と電話リレーサービス

聴覚障害者の契約
さまざまな契約時の窓口対応において、聴覚障害者が困難を感じる場面は少なくありません。
たとえば、銀行などでのお金や資産に関する契約、または不動産や車など金額が大きい契約などでは、電話や対面での説明がより重要になってきます。
しっかり契約内容を理解せずに進めてしまうと、小さな誤解が取り返しのつかないことになりかねません。
円滑に進めるためには、次のような方法が有効です。
筆談ツールの活用
紙とペン、またはタブレットなどのメモ機能を利用し、簡潔な文章でやりとりをすることで、誤解を防止できます。
あらかじめ必要な情報を整理しておくと、契約内容の確認がスムーズに進みます。
50音の指差しボードや想定される回答、写真などもあると効果的です。
電話リレーサービスの利用
日本では、聴覚障害者が電話でのやりとりを行う際に「電話リレーサービス」を利用することが推奨されています。
これは、障害を持つ利用者と契約窓口との間で、中継者(オペレーター)が電話の内容を伝え、双方のコミュニケーションを円滑にする仕組みです。
→ 公式サイト
契約前に電話リレーサービスの内容や利用の仕方を確認しておくと、スムーズに利用できます。
企業側も仕組みを理解しているところが増えています。
事前のウェブ確認と予約
もし契約に必要な手続きがウェブで公開されている場合、事前の準備で負担を減らすことができます。
また、予約制の窓口があれば、焦らず安心して契約が進められます。
法的根拠
聴覚障害者への合理的配慮も、障害者差別解消法の改正によって強化されています。
契約時においても、事業者は筆談や電話リレーサービスを活用するなど、利用者が不利益を被らないような対応を行うことが求められています。
また、総務省や経済産業省からも、障害者に対する適切なサービス提供を促進するためのガイドラインが出されており、電話リレーサービスの利用はその一環として位置づけられています。
提供側の視点
契約窓口のスタッフにとって、聴覚障害者への対応は、従来のマニュアルに加え、新たなコミュニケーションツールやシステムの習得が求められるため、一定のハードルとなっています。
特に、電話リレーサービスの利用に関しては、事前にオペレーターとの連携や、適切な手続き方法を理解しておく必要があります。
そうしないと、オペレーターを第三者と勘違いして契約がスムーズに進まないからです。
企業側としては、スタッフへの研修や、利用者からのフィードバックを取り入れたマニュアル整備が急務です。
お互いスムーズに進めるために
聴覚障害者の利用者は、契約前に「筆談希望」や「電話リレーサービスの利用」を明確に伝えることが大切です。
これにより、契約窓口側も事前準備ができ、スムーズな対応が可能となります。
また、契約窓口の事業者は、電話リレーサービスの利用方法や対応マニュアルを明文化し、スタッフ全員が共通の理解を持つことが求められます。
双方があらかじめ準備を整えることで、コミュニケーションの誤解を減らし、安心して契約手続きを進めることができます。
まとめ
障害を持つ方々がサービスを利用する際、利用者側と提供側の双方が共に歩み寄ることで、よりスムーズな対応が実現します。
セルフサービスのガソリンスタンドでは、事前の確認と明確な要望伝達が鍵となり、契約時の聴覚障害者対応では、筆談ツールや電話リレーサービスの活用が大きな助けとなります。
また、法改正により、これまで努力義務だった合理的配慮が法的義務となったことで、利用者はより安心してサービスを受けられる環境が整いつつあります。
しかし、現場の実情としては提供側の対応のばらつきや認識不足も指摘されており、今後は双方が情報共有や研修強化を通じて、さらに改善を図る必要があります。
万が一トラブルになったとき、利用者は「自分は客だから相手が悪い」となりがちですが、そうならないためにも初めから事業者側の事情を知っておきましょう。
本記事を通じて、読者が具体的な対策と法的根拠、そして提供側の視点を理解し、実際の場面で有効に活用できるヒントが得られることを願います。
今後も、より良いサービス提供に向けた取り組みや事例を紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
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