雨の日の外出は、ただ「レインコートを着れば大丈夫」というわけではありません。
車いすを自分でこぐ人なら、濡れたハンドリムを操作しなければなりません。
杖や歩行器を使う人なら、傘を持つことで手がふさがることがあります。
介助者と一緒に出かける場合も、雨具の着脱や車への乗り降りなど、晴れた日にはない手間が増えます。
そして、意外と困るのが目的地に着いたあとです。
濡れた雨具をどこに置くのか。
濡れた車いすをどうするのか。
外出先からスロープ車へ戻ったとき、タイヤについた雨水や泥をどうするのか。
雨の日のおでかけを少しラクにするには、「雨に濡れない方法」だけではなく、
出発前 → 移動中 → 目的地 → 車へ戻る → 帰宅後
まで考えて準備しておくことが大切です。
この記事では、車いす・杖・歩行器などを利用する人が、雨の日に外出するときに考えておきたい基本的なポイントをまとめます。
雨の日の外出は「濡れない」だけでは足りない
一般的な雨対策というと、
・傘
・レインコート
・防水の靴
などを思い浮かべます。
しかし、障害がある人や福祉用具を使っている人の場合は、それだけでは足りないことがあります。
雨具を着たことで、
・車いすを操作しにくくなった
・杖を持ちにくくなった
・歩行器のブレーキを操作しにくくなった
・フードで周囲が見えにくくなった
・介助者が車いすを押しにくくなった
となってしまっては困ります。
雨具そのものの性能だけではなく、普段の移動方法を邪魔しないかを考えることが大切です。
外出前にまず確認したい4つのこと
雨具や便利グッズを選ぶ前に、まず普段の外出方法を整理してみましょう。
1.誰が移動を操作するのか
同じ車いすでも、
・本人が自走する
・家族や介助者が押す
・電動車いすを本人が操作する
では必要な雨対策が変わります。
本人が操作する場合は、雨具を着ても手や腕を普段どおり動かせることが重要です。
介助者が押す場合は、介助者が押し手やブレーキを確実に操作できる状態を確保します。
2.どの福祉用具を使うのか
車いす、杖、歩行器では、雨の日の困りごとも違います。
特に両手を使って操作する福祉用具では、傘を持つこと自体が負担になる場合があります。
「雨だから傘を使う」と考えるのではなく、普段必要な操作を残したうえで雨を防ぐと考えたほうが分かりやすいでしょう。
3.雨の中をどのくらい移動するのか
自宅から車まで数十秒だけ移動する場合と、駅まで長い距離を移動する場合では必要な準備が違います。
短時間なら、すぐに着脱できることを優先できます。
長時間移動する場合は、濡れにくさに加えて、蒸れやすさ、動きやすさ、雨具を着続けられるかも考える必要があります。
4.目的地に着いたあとどうするのか
ここは忘れやすいポイントです。
病院、スーパー、施設、職場などへ着いたあと、
・どこで雨具を脱ぐのか
・濡れた雨具をどこへ置くのか
・車いすについた水や泥をどうするのか
・帰りに再び濡れた雨具を使えるのか
まで考えておくと、雨の日の外出がかなりスムーズになります。
車いす利用者の雨対策
車いすでは、身体だけでなく車いすそのものも雨にさらされます。
特に濡れやすいのが、
・膝から足先
・背中や腰まわり
・座面やクッション
・ハンドリム
・後輪やキャスター
です。
一般的なレインコートでは身体は守れても、座った姿勢では膝や足元、座面付近まで十分に覆えないことがあります。
また、自走式車いすでは両手でハンドリムを操作するため、傘を持ちながら普段どおり操作するのは現実的ではありません。
介助式でも、介助者が傘を持ちながら片手で車いすを押すより、両手で車いすを操作できる状態を確保したいところです。
そのため車いすでは、身体だけでなく座った姿勢まで考えた車いす用レインコートやレインポンチョが選択肢になります。
ただし、車いす用雨具には袖付き、ポンチョ型などさまざまなタイプがあり、自走式・介助式によって確認するポイントも変わります。
車いす用雨具の詳しい選び方については、
「車いす用レインコート(ポンチョ)の選び方|クッションの濡れ・蒸れ・ハンドリム対策」
で詳しく解説しています。
杖を使う人は「傘で片手がふさがる」ことを考える
杖を使っている場合、雨の日に難しくなるのが傘との併用です。
基本的に傘と杖は両立しません。
普段は空いている手で、
・手すりにつかまる
・ドアを開ける
・荷物を持つ
・身体のバランスを取る
といった動作をしている場合、雨の日はその手が使えなくなります。
なので、両手をできるだけ自由にできるレインコートやポンチョなどが選択肢に入ります。
雨具を選ぶときは、着た状態で実際に杖を使って歩き、
・腕を動かしやすいか
・裾を踏まないか
・足元が見えるか
・フードで左右の視界が狭くならないか
を確認しておくと安心です。
歩行器を使う人は両手で操作できることを優先
歩行器では、左右のグリップを握りながら身体を支えたり、ブレーキを操作したりします。
そのため、片手で傘を持つと普段と同じ操作ができなくなることがあります。
歩行器を使う場合も、両手を空けられる雨具を基本に考えます。
また、長いレインコートやポンチョの裾が歩行器の車輪へ近づかないかも確認しておきましょう。
雨の日は路面も濡れています。
晴れた日より急がず、段差や傾斜、濡れた床などでは特に慎重に移動します。
電動車いすは操作部分も確認する
電動車いすでは、利用者自身の雨対策だけでなく、ジョイスティックなど操作部分についても確認が必要です。
雨への対応方法は機種によって異なるため、使用している電動車いすの取扱説明書やメーカーの案内を確認してください。
雨具を使う場合も、
・ジョイスティックを操作できるか
・スイッチ類が見えるか
・雨具の生地が操作部分へかからないか
・充電端子などに水が入りやすい状態になっていないか
を確認しておきます。
雨の日はタオルを「用途別」に数枚持つ
雨の日に役立つものの中で、もっとも単純で使いやすいのがタオルです。
ただし、大きなタオルを1枚だけ持つより、小さめのタオルを数枚に分けたほうが使いやすくなります。
例えば、
身体用
顔、手、髪などを拭く。
車いす・福祉用具用
ハンドリム、肘掛け、操作部分などを拭く。
タイヤ・泥汚れ用
後輪やキャスターなどを拭く。
と分けておけば、タイヤを拭いたタオルで身体を拭くこともありません。
…というものの邪魔くさいですけどね、笑。
ビニール袋や防水バッグも一緒に用意して、濡れたタオルと乾いたタオルを分けて収納しておくと便利です。
足元と荷物も忘れずに雨対策する
レインコートを着ていても、足元や荷物が濡れることがあります。
特に車いすでは膝から足先が前に出ているため、靴や靴下が濡れやすくなります。
長時間外出する場合は、
・替えの靴下
・小さめのタオル
・濡れた靴下を入れる袋
などを用意しておくと安心です。
スマートフォン、診察券、お薬手帳、書類、モバイルバッテリーなど、濡らしたくないものはバッグそのものだけに頼らず、バッグの中でも防水ポーチや袋へ入れておきます。
外出先では「濡れた雨具をどうするか」が問題になる
雨の日に意外と困るのが、目的地へ着いてからです。
病院や店舗へ入ったあと、濡れたレインコートやポンチョを着たまま移動するわけにはいきません。
しかし、濡れた大きな雨具を広げて置ける場所があるとも限りません。
そこで、
・水滴を軽く落とす
・タオルで表面の水分を取る
・大きめの袋へ入れる
・書類や電子機器とは分ける
といった方法を考えておきます。
帰りにも同じ雨具を使う場合は、可能なら少しでも広げておき、水滴を乾かすようにしましょう。
濡れたレインコートを再び着るほど不快なことはありませんよね。
スロープ車へ戻るときは「車内へ持ち込む雨」を減らす
スロープ車を利用している家庭では、もう一つ特有の困りごとがあります。
例えば、
スロープ車で目的地へ行く
↓
車いす利用者を降ろす
↓
雨の中を車いすで移動する
↓
用事を済ませる
↓
再び車いすのままスロープ車へ戻る
という場面です。
このとき、車いすの後輪やキャスターには雨水だけでなく、路面の砂や泥が付いていることがあります。
そのままスロープを上がると、
・スロープ床
・車いす固定スペース
・車内の床
へ水や泥を持ち込みます。
外出先で車いすを完全にきれいにする必要はありません。
車へ乗る前に屋根のある場所などで、
・後輪の大きな水滴を取る
・キャスターについた泥を軽く取る
・車いすフレームから垂れる水を拭く
程度でも、車内へ持ち込む水や泥を減らせます。
タオルや吸水用品をスロープ車の取り出しやすい場所へ常備しておくと、雨の日だけ急いで準備する必要もありません。
この「スロープ車へ戻った直後の簡単なお手入れ」と「車内の雨・泥汚れ対策」については、別の記事で詳しく紹介します。
帰宅したら車いすと雨具をそのまま放置しない
帰宅したら、まず濡れたものを分けます。
・雨具
・タオル
・バッグ
・車いす
・クッション
・靴
など、それぞれ濡れ方が違います。
雨具は広げて乾かし、濡れたタオルは取り出します。
車いすに水滴や泥が残っている場合は、目立つ水分や汚れを早めに拭き取ります。
特に後輪やキャスターは、屋外の水や砂をそのまま室内へ持ち込みやすい場所です。
玄関や室内を汚さない方法、雨で濡れた車いすの簡単なお手入れについては、別記事で詳しく解説します。
雨の日は「周囲から見えること」も大切
雨の日は空が暗くなり、夕方や夜間はさらに周囲から見えにくくなります。
雨具を選ぶときは、黒や紺など目立ちにくい色だけでなく、明るい色や反射材が付いたものも検討できます。
車いすの場合は、本人の雨具だけでなく、
・背もたれ
・バッグ
・車いすの側面
・脚用カバー
など、前後左右から見える位置に反射材があると確認されやすくなります。
特に道路を横断するときは、正面だけでなく横方向から車が近づく場合があります。
雨の日の夜間や薄暮時は「自分から車が見えているから大丈夫」ではなく、相手から自分が見えているかも意識しておきましょう。
大雨や強風なら「出かけない」も雨対策
雨具を準備していても、すべての天候で安全に外出できるわけではありません。
特に、
・強い雨
・強風
・台風
・道路の冠水
・視界が悪い状態
では、普段使っている道路やスロープでも状況が大きく変わります。
外出前には天気予報だけでなく、警報・注意報なども確認します。
通院など予定を変更しにくい場合でも、
・時間をずらす
・送迎を利用する
・タクシーを使う
・家族や介助者に同行してもらう
など、雨の中を移動する距離を短くできないか考えてみましょう。
雨具を着て出かけることだけが雨対策ではありません。
安全に移動しにくい天候なら、予定を変えることも立派な対策です。
車いす用雨具を詳しく選びたい人へ
この記事では、車いす・杖・歩行器などを含めた「雨の日の外出全体」を紹介しました。
車いす利用者の場合は、さらに、
・一般的なレインコートではクッションまで守りにくい
・自走式と介助式で使いやすい形が違う
・裾の車輪への巻き込みを防ぐ必要がある
・濡れたハンドリムでは操作感が変わる
・背もたれの高い車いすではサイズ確認が必要
など、車いす特有のポイントがあります。
詳しくは、
車いす用レインコート(ポンチョ)の選び方|クッションの濡れ・蒸れ・ハンドリム対策【車いすで外出するときの便利グッズ・全3回/第1回】
をお読みください。
車いすで使える便利グッズを探している人へ
レインコートだけでなく、
・車いす用グローブ
・防水クッションカバー
・バッグ
・防寒用品
・タイヤカバー
など、外出時に役立つ用品をまとめて探したい場合は、
車いすでの外出をラクにする便利グッズ10選|雨・収納・防寒・汚れ対策【全3回・第3回】
で紹介しています。
まとめ|雨の日は「出発から帰宅まで」を考えて準備する
障害がある人の雨の日対策は、雨具を選ぶだけでは終わりません。
大切なのは、
・普段の移動方法を邪魔しない雨具を使う
・両手で必要な操作ができる状態を確保する
・タオルや防水袋を準備する
・濡れた雨具を外出先でどう扱うか考える
・スロープ車へ戻るときの水や泥を減らす
・帰宅後に車いすや雨具を乾かす
・天候によっては予定変更も考える
ことです。
晴れた日なら何でもない移動でも、雨が降ると小さな不便がいくつも重なります。
逆に言えば、「どこで困るか」を先に考えて準備しておけば、雨の日の外出はかなりラクになります。
まずは、
出発前 → 移動中 → 目的地 → 車へ戻る → 帰宅後
の順番で、自分や家族の場合に困りそうな場所を一つずつ確認してみてください。
そして車いすの場合は、「濡れないための対策」だけでなく、外出後の水や泥への対策も必要です。
雨で濡れた車いすのお手入れ、室内へ持ち込むタイヤ汚れ、スロープ車の車内汚れについては、今後それぞれ詳しく紹介していきます。

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