福祉車両は、車いす利用者や介助する家族にとって、日常生活を支える大切な移動手段です。
通院、通学、買い物、デイサービス、家族での外出。
福祉車両があることで、できることが大きく広がります。
しかし、忘れてはいけないことがあります。
それは、福祉車両は「車本体」だけで成り立っているわけではない、ということです。
車いすを乗せるスロープ。
車いすを引き上げる電動ウインチ。
車いすを固定する装置。
リフト、昇降シート、回転シート。
こうした福祉装置がきちんと動くことで、初めて福祉車両として使えます。
つまり、エンジンが元気でも、スロープやリフトが動かなければ、車いす利用者にとっては「使えない車」になってしまうことがあります。
この記事では、福祉車両のリフトやスロープが故障したときに、修理はディーラーに頼むのか、それとも改造業者・架装業者に相談するのかを整理します。
また、購入前に必ず確認しておきたいポイントも紹介します。
福祉車両の故障は、普通の車の故障とは少し違う
一般的な車の故障であれば、エンジン、ブレーキ、エアコン、バッテリー、タイヤなど、車両本体の不具合が中心です。
もちろん、それだけでも困ります。
しかし福祉車両の場合は、車本体が正常でも、福祉装置が動かないだけで生活に大きな影響が出ます。
たとえば、次のようなトラブルです。
・スロープが出ない
・スロープが戻らない
・電動ウインチが動かない
・車いす固定ベルトがロックしない
・リフトが途中で止まる
・リモコンやスイッチが反応しない
・昇降シートが動かない
・バッテリーが弱って装置が作動しない
こうなると、車いすの方を安全に乗せることができません。
家族だけで無理に対応しようとすると、車いす利用者にも介助者にも危険があります。
特にリフトやスロープは、体重や車いすの重さを支える装置です。
「少し調子が悪いけど、なんとか使えるから大丈夫」と考えるのは危険です。
異音がする。
動きが遅い。
途中で止まりそうになる。
固定装置がうまく締まらない。
こうした小さな違和感が出た時点で、早めに点検してもらうことが大切です。
修理はディーラー?それとも改造業者?
福祉車両の修理で迷いやすいのが、相談先です。
「車を買ったのはディーラーだから、全部ディーラーで直せるのでは?」
「後付け改造した部分も、販売店に頼めばいいのでは?」
「中古で買った場合は、どこに相談すればいいの?」
このあたりは、購入前に整理しておいた方がよいです。
基本的には、故障した場所によって相談先が変わります。
車両本体の故障であれば、ディーラーや販売店が窓口になります。
たとえば、エンジン、ブレーキ、エアコン、ライト、ドア、バッテリー、電装系など、通常の車としての部分です。
一方で、後付けで取り付けたスロープ、リフト、電動ウインチ、車いす固定装置、手動運転装置などは、改造業者や架装業者、装置メーカーが関係してくることがあります。
ここが大事です。
福祉車両は、車本体と福祉装置が一体になって見えます。
しかし保証や修理の考え方では、「車両本体」と「架装部分・改造部分」が分かれていることがあります。
つまり、見た目は1台の車でも、修理の窓口は1つとは限らないのです。
純正福祉車両なら、まずディーラーに相談しやすい
メーカーが最初から設定している純正福祉車両の場合は、基本的にディーラーへ相談しやすいです。
たとえば、トヨタのウェルキャブ、ホンダの福祉車両、日産のライフケアビークル、ダイハツのフレンドシップシリーズ、スズキの福祉車両などです。
このようなメーカー系の福祉車両であれば、購入した販売店やメーカー系列のディーラーに相談する流れになりやすいです。
もちろん、すべての販売店がその場で福祉装置の細かい修理までできるとは限りません。
ただ、純正福祉車両の場合は、ディーラーが窓口になり、必要に応じてメーカーや専門部署に確認してくれる可能性があります。
購入時にも、保証内容や点検方法を確認しやすいです。
福祉車両を初めて買う人にとっては、これは大きな安心材料です。
後付け改造の場合は、特に注意が必要
一方で、注意したいのが後付け改造です。
もともと普通の車として販売されていた車に、あとからスロープ、リフト、電動ウインチ、手動運転装置、左足アクセル、旋回シートなどを取り付けるケースです。
後付け改造そのものが悪いわけではありません。
むしろ、利用者の体の状態や家族の使い方に合わせて細かく調整できるため、とても有効な選択肢になることがあります。
ただし、後付け改造の場合は、故障時の窓口を必ず確認しておく必要があります。
なぜなら、車両本体はディーラー、改造部分は改造業者というように、責任の範囲が分かれることがあるからです。
たとえば、エンジンやブレーキの不具合ならディーラー。
後付けの電動ウインチが動かないなら改造業者。
手動運転装置の調整なら取り付けた業者。
車いす固定装置の不具合なら架装業者や装置メーカー。
このように、故障内容によって相談先が変わることがあります。
さらにややこしいのは、改造部分が車両側の電気系統と関係している場合です。
「これは車のバッテリーの問題なのか」
「装置側のモーターの問題なのか」
「スイッチや配線の問題なのか」
この切り分けが必要になることがあります。
そのため、後付け改造の福祉車両を買う場合は、購入前に次のことを確認しておきましょう。
・故障時の最初の相談窓口はどこか
・購入店が窓口になってくれるのか
・改造業者に直接連絡する必要があるのか
・ディーラーで見られる範囲はどこまでか
・改造部分の保証書はあるのか
・保証期間は何年か
・中古車の場合、架装部分も保証対象なのか
この確認をせずに買うと、故障したときに「販売店に聞いてください」「改造業者に聞いてください」「メーカーでは対応できません」と、窓口をたらい回しにされる可能性があります。
福祉車両でそれはかなり困ります。
普通の車なら、少し不便でも別の交通手段でなんとかなるかもしれません。
しかし車いす利用者にとっては、車が使えないことが外出そのものを止めてしまうことがあります。
基本的に、福祉車両の代車は無いと思っておく
福祉車両の修理で特に大きな問題になるのが、代車です。
普通の車なら、修理中に販売店から代車を借りられることがあります。
しかし福祉車両の場合、同じようには考えない方がよいです。
特に、車いすのまま乗れるスロープ車やリフト車、特殊な運転補助装置が付いた車の場合、同じ仕様の代車が用意されているとは限りません。
というより、基本的に代車は無いと思っておいた方が安全です。
もちろん、販売店や専門店によっては福祉車両の代車を用意している場合もあります。
福祉車両専門店やレンタカー会社で、スロープ車やリフト車を借りられることもあります。
しかし、それはどこでも当たり前に受けられるサービスではありません。
「修理に出せば代車を貸してくれるだろう」
「軽自動車の代車でも何とかなるだろう」
「数日くらいなら大丈夫だろう」
そう考えていると、実際に故障したときに困ることがあります。
車いすのまま乗る必要がある人に、普通の軽自動車の代車を渡されても使えません。
介助者が抱きかかえて乗せることができない場合、代車があっても意味がありません。
福祉車両の代車で大切なのは、「車があるか」ではなく「いつもの使い方ができるか」です。
購入前には、必ず次のように確認しておきましょう。
・修理中に福祉車両の代車はあるか
・スロープ車の代車はあるか
・リフト車の代車はあるか
・車いす固定装置付きの代車はあるか
・代車がない場合、レンタカーの紹介はあるか
・修理期間中の移動手段をどうするか
・通院や通学の予定がある場合、優先対応してもらえるか
ここは遠慮せず、購入前に聞いておくべきです。
福祉車両は、壊れたときに「しばらく乗れません」では済まないことがあります。
だからこそ、代車の有無は価格や年式と同じくらい大切な確認項目です。
故障してからではなく、買う前に確認する
福祉車両を選ぶとき、多くの人は車種、価格、サイズ、乗車人数、スロープの角度、車いすの固定方法などを重視します。
それはもちろん大切です。
しかし、もう一つ大切なのが「壊れたときにどうなるか」です。
福祉車両は、買った瞬間よりも、使い続ける時間の方が長いです。
毎日の送迎で使う。
雨の日も使う。
病院へ行く日も使う。
家族の予定に合わせて使う。
そう考えると、故障時の対応はとても重要です。
特に電動装置が付いている車両は、バッテリー、モーター、スイッチ、配線、リモコンなど、確認すべき部分が増えます。
中古の福祉車両であれば、さらに注意が必要です。
前の所有者がどのくらい使っていたのか。
福祉装置の点検記録は残っているのか。
電動ウインチは正常に動くのか。
固定ベルトは劣化していないか。
スロープの開閉はスムーズか。
リフトに異音はないか。
保証は車両本体だけなのか、架装部分も含むのか。
こうした点を確認しないまま購入すると、納車後すぐに修理が必要になる可能性もあります。
中古車の場合は、特に「福祉装置まで保証されるのか」を確認してください。
中古車販売店の保証が、エンジンやミッションなど車両本体だけを対象にしている場合、スロープやリフト、電動ウインチなどは対象外になることがあります。
価格だけで判断せず、保証範囲を確認することが大切です。
購入前に聞いておきたい質問リスト
福祉車両を買う前には、販売店に次の質問をしておくと安心です。
1つ目は、「この車の福祉装置が故障した場合、最初にどこへ連絡すればいいですか?」という質問です。
これで、窓口が販売店なのか、ディーラーなのか、改造業者なのかがわかります。
2つ目は、「修理はこの店舗でできますか?それとも専門業者に出しますか?」です。
その場で直せるのか、外部業者に依頼するのかによって、修理期間が変わります。
3つ目は、「福祉装置の保証期間はどれくらいですか?」です。
車両本体の保証と、福祉装置の保証は別に考える必要があります。
4つ目は、「保証対象になる部品と、対象外になる部品を教えてください」です。
電動ウインチ、固定ベルト、スロープ、リフト、スイッチ、リモコンなど、どこまで保証されるのか確認しましょう。
5つ目は、「修理中の福祉車両の代車はありますか?」です。
ここはかなり重要です。
普通車の代車ではなく、車いすのまま乗れる代車があるのかを確認してください。
6つ目は、「代車がない場合、福祉車両レンタカーの紹介はできますか?」です。
代車がないなら、代わりの移動手段を考える必要があります。
7つ目は、「定期点検で福祉装置も見てもらえますか?」です。
車検や点検のときに、福祉装置まで確認してもらえるかは大事です。
8つ目は、「故障時に出張対応はありますか?」です。
リフトやスロープが動かず、車を持ち込めないケースもあります。
9つ目は、「後付け改造の場合、ディーラー保証に影響はありますか?」です。
改造内容によっては、車両本体の保証との関係を確認する必要があります。
10個目は、「修理費の見積もりは、車両本体と架装部分で分けて出せますか?」です。
福祉の架装部分の修理は、消費税の扱いが通常の修理と異なる場合があります。あとで混乱しないためにも、明細を分けてもらえるか確認しておくと安心です。
修理費だけでなく、生活への影響も考える
福祉車両の故障で困るのは、修理費だけではありません。
むしろ大きいのは、生活への影響です。
通院に行けない。
デイサービスに行けない。
学校や施設への送迎ができない。
家族の外出予定が全部止まる。
介助者が無理をして腰を痛める。
こうしたことが起こり得ます。
だから、福祉車両を選ぶときは「安く買えるか」だけでなく、「壊れたときに助けてもらえるか」まで考えておく必要があります。
特に家族で介助している場合、車が使えない数日間は想像以上に大変です。
「修理に何日かかるのか」
「部品の取り寄せに時間がかかるのか」
「その間の移動手段はあるのか」
「通院日と重なったらどうするのか」
ここまで考えておくと、購入後の不安がかなり減ります。
まとめ:福祉車両は、壊れたときの窓口まで含めて選ぶ
福祉車両は、車両本体だけでなく、スロープ、リフト、電動ウインチ、車いす固定装置などの福祉装置があって初めて役に立ちます。
そのため、福祉装置が故障したときの対応はとても重要です。
純正福祉車両であれば、まずディーラーに相談しやすいです。
一方で、後付け改造の場合は、車両本体はディーラー、改造部分は改造業者や架装業者というように、相談先が分かれることがあります。
購入前には、必ず次の点を確認しておきましょう。
・故障時の窓口はどこか
・車両本体と福祉装置の保証範囲
・後付け改造部分の保証期間
・修理中の福祉車両の代車の有無
・代車がない場合の移動手段
・定期点検で福祉装置も見てもらえるか
・中古車の場合、架装部分も保証対象か
特に、福祉車両の代車は基本的に無いと思っておいた方が安全です。
普通車の代車があっても、車いすのまま乗れなければ意味がありません。
福祉車両は、買って終わりではありません。
家族の生活を支える車だからこそ、壊れたときに誰が助けてくれるのかまで含めて選ぶことが大切です。
価格や車種だけでなく、修理、保証、代車、相談窓口。
この4つを確認しておくことで、購入後の安心感は大きく変わります。
福祉車両選びで本当に大切なのは、乗れることだけではありません。
「困ったときに止まらないこと」
そして、
「止まったときに助けてもらえること」
ここまで考えて選ぶことが、家族にとって本当に安心できる福祉車両選びです。

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