2025年版:中古福祉車両の補助金・税制ガイド

中古の福祉車両を検討していると、「補助金は使えるのか」「税制の優遇はあるのか」「自治体ごとに何が違うのか」が分かりづらく、意思決定が止まりがちです。

本記事では、2025年時点の情報として、全国助成(JKA・日本財団)の実施状況、自治体の改造費助成の考え方、そして中古でも効きやすい税制(消費税・自動車税等)を“中古”という観点から整理します。

結論として、全国助成は新車前提が主流です。
一方で、中古の場合は税制優遇と自治体の改造助成の組み合わせが攻略ポイントです。いずれも申請前に要件と時期の確認が必須です。

目次

まず結論:中古×補助金の現実と最短ルート

全国助成は“新車”前提が多い → 中古購入単体は対象外が基本(JKAは明記)

2025年も、全国規模の代表的な助成は新車の導入を前提としているものが中心です。
特にJKAの福祉車両整備は、中古・新古・リースが対象外と明記される運用が続いており、中古購入単体で全国助成を当て込むのは現実的ではありません。日本財団の通常公募も原則として新車設定での配備を前提に設計されるため、中古は想定外と考えて準備した方が安全です。

中古でコスト最適化するなら税制(消費税非課税・自動車税等減免)+自治体の改造助成を組み合わせる

中古で費用を抑える場合は、福祉車両の定義に合致することを前提に、消費税の非課税の取り扱い、自動車税・軽自動車税の減免、環境性能割や重量税の特例などを確認します。さらに、個人向けには自治体の改造費助成(運転補助装置や車いす収納装置、移乗補助等)を活用することで、総負担を大きく下げられます。

申請は購入・改造の“前”に要件確認(事後は不支給になりがち)

助成や減免の多くは、購入後や改造後の事後申請を認めません。契約前・施工前に、対象者・対象装置・対象経費・必要書類・見積書の記載方法まで確認し、見積・仕様書・写真等の添付手順を決めてから進めるのが基本です。

全国助成の最新実施状況(法人向け中心)

JKA「福祉車両の整備」—2025年度は募集実施。新車のみ対象/中古・新古・リース不可。次回日程は公式で確認。

2025年度も法人・事業所向けに公募が実施されました。
要件は例年通り、原則として新車が対象で、中古・新古・リースは不可という運用です。対象となる車種・仕様、補助率・上限、事業期間、申請書式、オンライン申請手順等は毎年度更新されるため、次回以降の実施については公式の最新要項を確認し、スケジュールを逆算して準備します。

日本財団「福祉車両配備」—2025年度は7/1〜7/14で受付済(終了)。申請は“設定車両の見積”が前提。

2025年度の通常公募は短期間で受付が行われ、すでに終了しています。申請には、あらかじめ設定車両の見積取得や要件の適合確認が求められます。法人は次年度の公募時期や要件変更の可能性を見据え、メーカー・ディーラー・改造事業者との事前連携を進めておくと、短い公募期間でも落ち着いて対応できます。

例外的な災害対応枠では中古可のケースもある(被災車両代替)。通常公募とは別枠。

大規模災害時の代替車両として、中古を例外的に認める特別枠が設けられることがあります。これは通常公募と異なる運用で、条件や受付時期も個別に示されます。被災による代替が必要な場合は、必ず最新の公式周知や窓口照会で可否と必要書類を確認してください。

個人の「中古×改造」攻略:自治体助成の使い方

代表例(横浜市ほか)—移乗装置・車いす収納・運転補助装置などの改造費を助成(上限額・対象者・所得制限あり)

多くの自治体では、個人の自動車改造に対して助成制度を設けています。

対象は、運転補助(手動運転装置、ペダル改造、ステアリングノブ等)や、同乗・外出支援に必要な装置(スロープ追加、車いす収納、リフト、回転シート、移乗補助装置など)です。
上限額、対象経費、対象者、所得制限の有無、申請時期は自治体により大きく異なります。

運転者本人向けの改造費助成(浜松市など)の典型要件と申請タイミング

運転者本人が障害当事者である場合(自操用車両)の改造費助成も、自治体によっては整備されています。

典型要件として、身体障害者手帳や診断書、運転に必要な装置の合理性、改造前の見積・仕様確認、装置取り付け後の写真・領収書等の提出が求められます。
特に申請タイミングは重要で、契約・施行の前に申請・審査・交付決定の順を踏むことが前提です。

自治体差が大きい→居住地の福祉課に事前相談&見積・仕様書を揃える

自治体助成は制度設計・金額・対象範囲に大きな差があります。
まずは居住地の福祉課に電話・窓口・ウェブで事前相談し、制度の有無、対象装置、必要書類、申請期限、交付決定のタイミングを確認します。販売店・改造事業者と連携して、見積・仕様書・装置カタログ・取り付けイメージ(写真・図)を揃えてから申請に進むと、差し戻しを防げます。

中古でも効く税制:非課税・減免の実務

消費税の非課税—国税庁の定義に合致する福祉車両なら譲渡(中古売買)や一体販売の付属品も非課税。注文書の書き方も要注意。

福祉車両に該当する条件を満たす場合、譲渡(中古売買)においても消費税が非課税となる取り扱いがあります。
対象となる装備や用途が要件に適合していること、一体販売とみなされる付属品・架装品の範囲、注文書・請求書の記載方法など、実務上の注意点を販売店・税理士・所轄税務署で確認しておくと安心です。
中古の場合は、既存装備の適合性や追加装備の扱いが焦点になるため、装備仕様・シリアル・型式情報を明確化しておきます。

自動車税・軽自動車税の減免—手帳所持や構造要件等、自治体ごとに条件と提出書類が異なる。

自動車税・軽自動車税の減免は、障害の種別・等級、使用目的、車両の構造や装備などの要件により判断されます。自治体によって申請窓口や必要書類が異なるため、居住地の運輸・税務窓口で最新要件を確認してください。
中古購入でも、福祉車両としての要件を満たすことが確認できれば適用可能なケースがあります。名義変更時や年度の切り替え時期は、受付期限にも注意が必要です。

環境性能割・重量税の特例—自治体運用の違いと必要書類の基本。

環境性能割や重量税の特例は、車両の環境性能や用途、福祉目的の利用実態などによって扱いが異なります。

中古車の場合は初度登録年や排出基準、改造後の構造等が影響します。減免や非課税の判断には、車検証上の“用途”“車体形状”“原動機区分”、装置の有無などが関わるため、登録前に販売店と運輸支局での確認を済ませ、申請書類・添付物(写真・仕様書等)を揃えておきましょう。

中古購入の実務:チェックリスト

税・助成を通すための書類(車検証の形状・用途、装置の型式、見積・注文書への記載)

実務で最もトラブルになりやすいのは、書類の不備です。
車検証の“用途”“車体形状”が要件に合っているか、対象装置の型式・仕様が分かる資料が揃っているか、見積・注文書に装置名・数量・金額が明瞭に記載されているかを事前に確認します。

中古の場合は既存装置の状態・型式が不明確なことがあり、販売店に装備リストの提示や写真記録を求めると、後の審査がスムーズです。

“福祉車両の定義”を満たす装備(スロープ/リフト・手動運転装置 等)と、販売店での一体販売処理

消費税の非課税や各種減免の前提になるのは、「福祉車両に該当するかどうか」です。

スロープ・リフト・回転シート・手動運転装置・固定装置などの有無と、目的に合致した使用実態が重要です。中古購入時に追加で装置を取り付ける場合は、車両本体と装置を一体として販売・請求する処理にしておくと、非課税等の適用判断が明確になります。

よくあるNG:事後申請、仕様が要件外、他助成と重複申請、中古単体を全国助成に当て込む等

典型的な失敗は、交付決定前に契約・施工してしまう事後申請、要件外の装置や用途で進めてしまうケース、同一経費を複数助成で二重取りしようとして差し戻されるケース、中古購入単体を全国助成で賄えると誤解するケースです。いずれも計画段階での窓口確認と書面の整備で回避できます。

法人・事業者の中古活用と“現実解”

全国助成は新車前提なので、中古導入は自己資金+自治体(場合により)+税制で設計

小規模事業所やNPOが車両を早期に確保したい場合、中古導入は即応性があります。
ただし全国助成は原則新車前提のため、自己資金を軸に、自治体の改造助成(該当があれば)や税制優遇を組み合わせて、耐用年数・維持費・稼働計画まで見据えて設計します。運行実態と安全管理計画も同時に整理しておくと、後続の新車配備(全国助成)への橋渡しがしやすくなります。

日本財団・JKAの最新募集ページを“期日逆算”でモニタ—見積取得→オンライン申請→郵送等の段取り

両制度は公募期間が短く、書類も詳細です。次年度の募集想定時期をカレンダー化し、車種選定、見積取得、オンライン申請アカウント整備、必要添付(図面・見積・仕様・写真・団体要件資料)を前広に揃えます。中古は当面の運行確保策、新車は公募採択の見込みと更新計画、という二段構えが現実的です。

災害代替など特殊枠の有無を確認

法人・施設が被災等で車両を失った場合には、通常公募とは別枠の支援が設定されることがあります。中古可の扱いが検討されることもあるため、必要時は必ず公式の特設ページや窓口に相談し、個別条件を確認します。

ケース別シナリオ

個人ドライバー(自操)—中古×運転補助装置→改造助成+税減免を先に確認

運転者本人が障害当事者である場合、手動運転装置やペダル改造などが必要になります。

中古でベース車を確保し、自治体の改造助成と自動車税等の減免を先に確認したうえで、見積・仕様を固めます。装置は安全性・耐久性・メンテ性を優先し、取付事業者の実績や保証条件も比較しましょう。

家族送迎(同乗)—中古×スロープ車→消費税非課税・自動車税減免の可否と自治体制度

家族の送迎が主目的なら、スロープやリフトなど同乗支援装置の適合と、消費税の非課税要件や自動車税減免の条件を確認します。

中古車の場合、既存装置の状態(腐食・作動音・シリンダーの油漏れ)を点検し、必要があれば納車前整備・部品交換を見積に含めます。自治体の改造助成があれば、補助対象の範囲を事前に特定します。

小規模事業所・NPO—来期の新車助成スケジュールに合わせ、中古は橋渡し(短期運用)と割り切る

繁忙期の送迎や新規事業の立ち上げ時は、中古で稼働を確保しつつ、来年度の全国助成で新車導入を狙う二段階戦略が妥当です。中古の耐用・整備計画、保険・運行管理、将来の下取り・再販価値も加味して、総コストを最適化します。

ひと目で分かる補助金関係チェック表(新車/中古で比較)

※記号:〇=原則対象 △=条件次第/自治体差あり ×=原則対象外

項目新車中古車申請タイミング(原則)主な窓口・確認先必要書類・実務ポイント
全国助成:JKA「福祉車両の整備×公募前〜公募期間内(交付決定前に契約不可)JKA公式(事業ページ)JKA公式(FAQ:中古不可)新車前提。設定仕様・見積・計画書・写真等。短期公募=逆算準備必須。
全国助成:日本財団「福祉車両配備 募集要項 2025×(通常枠)公募前準備→公募期間(交付決定前に契約不可)日本財団(2025年度募集案内)要項ページ設定車両の見積取得が前提。年度によって要件・期日変動。
例外枠:災害代替・特別枠△(可のケースあり)個別告知に従う(例)日本財団の助成ページ被災証明等が必要。通常公募と運用別。条件は都度確認。
自治体助成:個人の自動車改造費△(自治体差)△(自治体差)改造・購入の「前」居住地の福祉課(例:横浜市の案内:自動車改造費用の助成手帳/診断書、見積・仕様書、装置カタログ、写真。事後申請NGが多数。
税制:消費税非課税(福祉車両の譲渡)購入・契約時国税庁:身体障害者用物品に該当する自動車「福祉車両」の定義適合が前提。車両+装置の一体販売記載が要点。
税制:自動車税・軽自動車税の減免登録・名義変更時など(例)東京都主税局の減免案内大阪府の案内手帳種別・等級、用途、構造要件。年度切替や期限に注意。
税制:環境性能割・重量税の特例登録時(参考)JAMA:環境対応車の税制軽減まとめ初度登録年・排ガス基準・用途等の要件あり。書類の事前確認必須。

追加の共通チェック

チェック項目抜け漏れ防止ポイント
交付決定前の契約・改造の回避事後申請は不支給になりがち。公募要領の「契約禁止期間」を確認(JKA日本財団)。
車検証記載の適合用途・車体形状が要件に合致しているかを事前確認。
装置の型式・仕様の明記見積・注文書に装置名/数量/金額を明記。写真・カタログ添付。
一体販売の記載(消費税)車両本体+福祉装置を一体販売として記載して非課税判定を明確化(国税庁)。
自治体差の吸収居住地の福祉課へ事前相談(例:横浜市の自動車改造費用の助成)。
公募の期日逆算JKA日本財団は公募短期。見積・アカウント・添付資料を前倒し準備。

最後のまとめ

中古の福祉車両は、全国助成の対象外が基本である一方、税制優遇と自治体の改造助成の組み合わせで十分にコストを抑えられます。
ゴールは「要件を満たす装備」「正しい書類」「期限厳守」です。購入前に自治体・販売店・改造事業者・申請窓口を横串で確認し、事前審査と書類整備を済ませてから契約に進みましょう。

まずはお住まいの自治体の福祉課へ連絡し、対象要件と申請時期を今日確認して一歩を踏み出してください。

この記事を書いた人

やんち
出歩くのが好きなやんちが、外出が困難な方に役立つ色んな情報を発信しています。

住所:大阪
仕事:技士をしていましたが現在事務職です。
趣味:テニスと英語
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