福祉車両を使っている方やそのご家族、介助者の中には、「車椅子の積み込みが毎回重労働…」と感じている方も多いのではないでしょうか。
特にドライバーが一人で作業をする場合、車椅子の重さや車種による積み込みにくさは、予想以上の負担となります。
この記事では、福祉車両ドライバーの実体験をもとに、「効率的かつ安全に車椅子を収納するための知識と工夫」を丁寧にまとめました。
さらに、作業を劇的にラクにする便利グッズや、使う人・積まれる人、両方の視点に立った収納アイデアも紹介します。
また、自操用車両か介護用車両か、つまり車椅子を積むのが車椅子ユーザー本人か介護者かで積み方は大きく変わってきます。
目次
福祉車両における車椅子収納の基本
福祉車両の種類と収納スペースの違い
- スロープ付きタイプ:後部や側面からスロープで乗り入れる構造。スペースを広く取れるが、斜面の角度に注意が必要。
- リフト付きタイプ:昇降機で車椅子ごと持ち上げて収納。積み込みがラクな反面、車両価格やメンテナンス費が高め。
- シート収納タイプ:後部座席をたたんでラゲッジスペースに車椅子を収納。手作業での積み下ろしが前提。
車椅子の種類による収納方法の違い
- 自走式車椅子:後輪が大きくフレームも大きめ。タイヤを外してコンパクトにすると収納しやすい。
(狭い車内の場合) - 介助式車椅子:軽くて小さめなので、スムーズに収納可能。折りたたみ機能の活用がカギ。
- 電動車椅子:重量があるため、リフトやウインチの併用が望ましい。
収納の際に注意すべき安全ポイント
- タイヤのロックを必ず確認
- ベルトやストッパーで固定する
- 車内での荷重バランスに配慮(車椅子ユーザーがシートに移乗するかどうかで大きく変わります)
車椅子ドライバーが実践する積み方の工夫
一人でもスムーズに積めるテクニック
- テコの原理を活かす
- タイヤ先行で滑り込ませる
(積み終わるまではタイヤをロックしない) - 持ち手やグリップ位置を工夫する
- タイヤの汚れが気になるときは積み込み前にさっと拭く
あるいは汚れても構わない服装で作業する
積み込み場所の工夫
- ラゲッジスペース
(ドライバーズシートまで戻る必要あり) - 後部シート
(間口は後のドア? 前のドア?) - サイドシート
(自分の体の上を通す必要あり)
ドライバーの負担を減らすには? 腰痛や手首の炎症に注意
- 膝を使った積み方を意識
- 積み込み位置の高さに注意
- 荷物の出し入れ回数を減らす
便利グッズで収納作業が劇的にラクに
ポータブルスロープ・折りたたみラダーの紹介
商品名 | 特徴 | 対応段差 |
---|---|---|
軽量アルミ製スロープ | 持ち運び簡単・折りたたみ式 | ~15cm |
ラバータイプスロープ | 滑りにくく、屋外でも使用可能 | ~10cm |
昇降リフト・電動ウインチの活用例
- リフトはスイッチ操作で昇降可能。力が不要で安心。
- ウインチは電動で引き上げ。特に重たい電動車椅子に便利。
- 特殊な方法としてルーフに収納スペース(ケース)がある車両もあります。
(バッテリ=の負担が大きいのが気になりますが…)
固定用ベルト・ストッパーなど安全グッズ
- クロスベルトで車椅子をしっかり固定
- タイヤストッパーで滑り防止
- 滑り止めシートで床面の安定性向上
介護用車椅子の場合
積む側と積まれる側、両方の目線でチェックすべきこと
- 積む側の動作負担を減らせるか?
- 積まれる側の安心感はあるか?
収納中の振動・衝撃から車椅子を守る工夫
- クッションや緩衝材を間に挟む
- 他の荷物とぶつからない配置を工夫
雨の日や夜間の積み込みにも配慮しよう
- 基本的に屋根がある場所を選んで下さい。
やむを得ない場合、跳ね上げ式のリアドアは重宝します。 - クッションを濡らさないようにしましょう。
ビニール袋で覆う時は空気抜きの穴を開けないと、人が座れません。 - 少しでも人や車が横を通る場所では、ハザードはもちろんのこと、追加のライトや、積み下ろしする人の視認性にも考慮して下さい。
車種別・シーン別の積み方アイデア集
軽バン/ワゴン車/スライドドア車タイプ別のコツ
- 軽バンは折りたたみ+斜め積みが基本
- ワゴン車は2列目のシート収納でスペース拡大
- スライドドア車は地面との段差に注意
路肩で車椅子を積み下ろしする際の注意点
- 安全な場所か確認する:交通量が多い道路ではなく、できるだけ広いスペースのある路肩を選びましょう。
- ハザードランプを点灯:後続車や通行車に対して、停車していることを明示します。
- できるだけ歩道側で作業する:車道側ではなく、歩道側から積み下ろしできる位置に停めると安全です。
- 車椅子が転がらないように固定:スロープの傾斜や地面の勾配に注意し、車椅子はブレーキでしっかりロックしましょう。
- ドアの開閉スペースを確認:周囲に障害物がないか、ドアが全開できるかを事前に確認しておきます。
- 夜間や雨天時は特に注意:視界が悪いときは、LEDライトや反射板などを活用して視認性を確保してください。
長距離移動や旅行時の収納のポイント
- 複数箇所でしっかり固定する
- 休憩時に荷物や車椅子の状態を再確認
まとめ|自分に合った収納術で、移動の快適さを
車椅子を積む作業は、毎日の小さな積み重ね。
しかし、ちょっとした工夫や便利な道具を取り入れることで、身体的な負担や不安感を大きく軽減することができます。
今回ご紹介した内容は、すべて現場の経験から得た実践的な知恵ばかり。あなたの生活にもきっと取り入れられるヒントがあったはずです。
車椅子ドライバー、介助者、そして乗る人本人——それぞれの立場に寄り添いながら、快適で安全なお出かけを楽しめるように。あなたにぴったりの「車椅子収納術」を、ぜひ見つけてくださいね。
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