福祉車両を買い替えるサインとは?修理か買い替えか迷ったときの判断基準【全4回・第1回】

福祉車両を長く使っていると、「そろそろ買い替えたほうがいいのかな」と迷う時期がやってきます。

一般的な車であれば、年式や走行距離、車検費用などを目安に買い替えを考えることができます。

しかし、福祉車両の場合は、それだけでは判断できません。

車いすを乗せるスロープやリフト、車いす固定装置、回転シートなど、福祉車両には通常の車にはない装備が付いています。

車そのものに問題がなくても、福祉装置の使いにくさや介助者の負担が大きくなれば、買い替えを考えるタイミングかもしれません。

この記事では、福祉車両を買い替える代表的なサインと、修理を続けるか買い替えるかを判断するポイントを解説します。

目次

福祉車両は「まだ走れる」だけで判断しない

福祉車両の買い替えを考えるとき、最初に確認したいのは、車が走れるかどうかだけではありません。

大切なのは、現在の車が利用者と介助者に合っているかどうかです。

たとえば、エンジンやブレーキに大きな問題がなくても、次のような状態になっていることがあります。

・車いすをスロープで乗せるのが重くなった
・車いす固定装置の操作に時間がかかる
・車内で頭や足が当たる
・乗り降りのたびに介助者が無理な姿勢になる
・福祉装置の故障が増えてきた

このような不便を毎日我慢していると、外出そのものが負担になってしまいます。

福祉車両は、単に移動するための車ではありません。

本人と家族が安全に外出するための生活用品でもあります。

「まだ走れるから大丈夫」と考えるのではなく、「今も安全に、無理なく使えているか」という視点で判断することが大切です。

福祉車両を買い替える代表的な7つのサイン

1.福祉装置の故障や不具合が増えてきた

スロープ、リフト、電動ウインチ、車いす固定装置、回転シートなどに不具合が増えてきた場合は、買い替えを考えるサインです。

福祉装置は、一般的な車の部品とは構造や修理方法が異なる場合があります。

故障のたびに修理できたとしても、別の部分が続けて不調になることもあります。

たとえば、次のような変化には注意が必要です。

・電動ウインチの動きが遅い
・作動中に異音がする
・スロープの開閉が重い
・リフトが途中で止まる
・車いす固定ベルトが戻りにくい
・回転シートの動きが不安定になった

福祉装置の不具合は、乗り降りの途中で利用者が動けなくなる危険にもつながります。

小さな異常でも放置せず、早めに販売店や整備工場へ相談しましょう。

修理を繰り返すようになった場合は、修理費だけでなく、今後も安心して使い続けられるかを考える必要があります。

2.修理費や車検費用が高くなってきた

車の年数がたつと、交換が必要な部品が増えてきます。

タイヤやバッテリーなどの消耗品だけでなく、エアコン、足回り、電装系などの修理が重なることもあります。

福祉車両の場合は、通常の車の修理に加えて、福祉装置の点検や修理費用が必要になる場合があります。

一度の修理費だけを見ると、「買い替えるより安い」と感じるかもしれません。

しかし、数か月ごとに修理が続くのであれば、合計金額は大きくなります。

次の車検までに必要になる費用を整理してみましょう。

・車検費用
・消耗品の交換費用
・故障している部分の修理費用
・福祉装置の修理費用
・近いうちに交換が必要な部品の費用

これらの費用を合計したうえで、あと何年使えそうかを考えることが大切です。

修理費用が高くなってきた場合は、修理の見積もりと一緒に、現在の車の査定額も確認すると判断しやすくなります。

3.現在の車いすが車に合わなくなった

福祉車両を購入した当時と、現在使っている車いすが同じとは限りません。

利用者の身体状況が変わり、より大きな車いすや電動車いすに変更することもあります。

車いすが変わると、以前は問題なく乗れていた車でも、車内が狭く感じることがあります。

確認したいポイントは次のとおりです。

・車いすに座った状態で頭上に余裕があるか
・足元やひざ周りが窮屈ではないか
・車いすの横幅が固定位置に収まるか
・スロープの幅に余裕があるか
・車いすの重量が福祉装置に対応しているか
・乗車中の視界や姿勢に無理がないか

特に、リクライニング式車いすや電動車いすは、一般的な車いすより大きく重くなる傾向があります。

車内に入るだけでなく、安全に固定できるかどうかも重要です。

車いすを変更したあとに乗り降りしにくくなった場合は、現在の福祉車両が合わなくなっている可能性があります。

4.利用者の身体状況が変化した

年齢や病状の変化によって、以前と同じ方法では乗り降りが難しくなることがあります。

購入当時は座席へ移乗できていても、現在は車いすに乗ったまま移動するほうが安全な場合もあります。

反対に、車いすのまま乗車するタイプから、回転シートや昇降シートを使うタイプへ変更したほうが負担を減らせることもあります。

次のような変化があれば、車の使い方を見直すタイミングです。

・立ち上がることが難しくなった
・座席への移乗で体が不安定になる
・首や体幹を支える必要が増えた
・長時間同じ姿勢で座るのがつらくなった
・車いすの種類が変わった
・介助に必要な人数が増えた

福祉車両は、利用者の身体状況に合っていることが最優先です。

以前は使いやすかった車でも、現在の状態に合わなくなることは珍しくありません。

5.介助者の負担が大きくなった

福祉車両の買い替えは、利用者だけでなく介助者の負担も含めて考える必要があります。

乗り降りのたびに強い力が必要だったり、腰を曲げた状態で車いすを固定したりしていると、介助者の体に負担がかかります。

次のような状態が続いている場合は注意しましょう。

・スロープを押し上げるのが重い
・車いすを固定するために車内へ深く入り込む必要がある
・低い位置での作業が多く、腰やひざが痛い
・雨の日の乗り降りに時間がかかる
・一人では介助できなくなった
・外出後に強い疲労が残る

介助者が年齢を重ねることで、以前は問題なくできていた作業が難しくなる場合もあります。

電動ウインチや自動固定装置など、介助負担を軽くする装備が付いた車へ買い替えることで、外出しやすくなる可能性があります。

「まだ介助できる」と無理を続けるよりも、負担が大きくなった段階で早めに検討することが大切です。

6.家族構成や利用目的が変わった

福祉車両を使う目的は、家庭によって異なります。

通院や施設への送迎だけに使う家庭もあれば、買い物や旅行、家族全員での外出に使う家庭もあります。

購入後に家族構成や使い方が変わると、必要な車の大きさも変わります。

たとえば、次のような変化です。

・送迎する家族が増えた
・介助者が一人から二人になった
・荷物や医療機器を積む必要が増えた
・長距離移動が増えた
・自宅周辺の狭い道を走る機会が増えた
・駐車場の条件が変わった

車いすを乗せることができても、家族や荷物を十分に乗せられないのであれば、使いやすい福祉車両とはいえません。

日常の送迎が中心なら小回りの利く軽自動車が便利な場合があります。

一方で、家族全員での移動や旅行が多い場合は、普通車やミニバンタイプのほうが使いやすいこともあります。

現在の生活に合っているかを、あらためて確認してみましょう。

7.安全面に不安を感じるようになった

福祉車両を使っていて、「少し怖い」「以前より不安定に感じる」と思うことが増えた場合は、その感覚を軽視してはいけません。

たとえば、次のような状態です。

・走行中に車いすが揺れる
・固定装置にゆるみを感じる
・スロープで車いすが傾く
・乗り降りの途中で車いすがずれそうになる
・車内で利用者の姿勢が安定しない
・ブレーキやハンドル操作に違和感がある

安全に関わる異常がある場合は、使用を続ける前に点検を受ける必要があります。

点検や修理で改善できることもありますが、車の構造や現在の車いすとの組み合わせが原因の場合は、買い替えが必要になることもあります。

事故が起きてからでは遅いため、不安を感じた段階で専門家に相談しましょう。

年式や走行距離だけで買い替えを決めてよい?

車の買い替えでは、年式や走行距離が目安としてよく使われます。

しかし、福祉車両の場合は、年式や走行距離だけで判断するのはおすすめできません。

同じ年式、同じ走行距離でも、使われ方によって車の状態は大きく異なります。

短距離の送迎を何度も繰り返している車は、走行距離が少なくてもスロープや固定装置の使用回数が多いことがあります。

反対に、走行距離が多くても、福祉装置の使用回数が少なく、定期的に整備されている車もあります。

確認したいのは、次の4点です。

・車本体の状態
・福祉装置の状態
・利用者との相性
・介助者の負担

この4つを総合的に見て判断しましょう。

修理を続けるか買い替えるかの判断基準

不具合が見つかったからといって、すぐに買い替える必要があるとは限りません。

修理をすれば、まだ長く使える車もあります。

一方で、修理を続けるより、早めに買い替えたほうが負担を減らせる場合もあります。

修理を検討しやすいケース

・不具合が一か所だけである
・修理後も数年間使える見込みがある
・現在の車いすや身体状況に合っている
・介助者の負担が大きくない
・車本体や福祉装置の部品が確保できる
・修理費用が大きくない

現在の車が使いやすく、故障部分を直せば問題なく使えるのであれば、修理を選ぶ方法もあります。

買い替えを検討したいケース

・複数の故障が続いている
・福祉装置の部品が手に入りにくい
・修理費用が高くなっている
・現在の車いすが収まりにくい
・利用者の身体状況に合わなくなった
・介助者の負担が大きい
・安全性に不安がある
・今後、家族構成や利用方法が変わる予定がある

買い替えるか迷ったときは、「あと何年乗れるか」だけではなく、「あと何年、安全に無理なく使えるか」を考えることが大切です。

買い替えを考え始めたら確認したいチェックリスト

次の項目に当てはまる数が多いほど、買い替えを検討する時期が近づいている可能性があります。

□ 福祉装置の故障や不具合が増えた
□ 修理費が以前より高くなった
□ 車検時に交換部品が増えた
□ 車いすを乗せにくくなった
□ 車内で利用者の姿勢が安定しない
□ 車いす固定に時間がかかる
□ 介助者の腰やひざに負担がかかる
□ 一人での乗り降り介助が難しくなった
□ 家族や荷物を十分に乗せられない
□ 走行中の安全性に不安がある
□ 外出すること自体がおっくうになった
□ 数年以内に身体状況や生活環境が変わる可能性がある

一つ当てはまったからといって、必ず買い替えが必要というわけではありません。

ただし、安全性に関する項目や、利用者・介助者の身体的な負担に関する項目は、早めに確認することをおすすめします。

故障する前に買い替えを考えるメリット

車が完全に故障してから買い替えようとすると、短期間で次の車を決めなければならなくなります。

福祉車両は、一般的な車よりも確認する項目が多いため、急いで選ぶと失敗しやすくなります。

事前に買い替えを考えておけば、次のような準備ができます。

・現在の車の査定額を比較する
・次の福祉車両を試乗する
・車いすが実際に乗るか確認する
・介助者が装置を操作してみる
・必要な装備を整理する
・中古車と新車を比較する
・納車までの期間を確認する

福祉車両は、車種や仕様によっては希望する条件の車がすぐに見つからないことがあります。

故障する前から情報を集めておくことで、焦らずに自分たちに合った車を選びやすくなります。

買い替え前に現在の車を査定してもらおう

買い替えを考え始めたら、現在の福祉車両がいくらで売れるのかを確認しておきましょう。

査定額が分かれば、次の車に使える予算を考えやすくなります。

ただし、福祉車両は通常の中古車とは評価されるポイントが異なる場合があります。

車の年式や走行距離だけでなく、スロープやリフト、固定装置などの状態も査定に影響します。

また、福祉車両の取り扱い経験が少ない店舗では、福祉装置の価値が査定額に十分反映されない可能性もあります。

下取りだけで決めず、福祉車両を扱っている買取業者などと比較することが大切です。

まとめ|使いにくさを我慢し始めたら買い替えのサイン

福祉車両を買い替えるタイミングは、年式や走行距離だけでは決まりません。

大切なのは、利用者と介助者が安全に、無理なく使えているかどうかです。

買い替えを考えたい主なサインは、次のとおりです。

・福祉装置の故障が増えた
・修理費や車検費用が高くなった
・現在の車いすが合わなくなった
・利用者の身体状況が変化した
・介助者の負担が大きくなった
・家族構成や利用目的が変わった
・安全面に不安を感じるようになった

特に、安全性や身体的な負担に関する問題は、我慢を続けないことが大切です。

現在の車に違和感を覚えたら、まずは点検や修理の見積もりを依頼し、同時に査定額も確認してみましょう。

修理費用、現在の車の価値、今後の使い方を比べることで、買い替えるべきか判断しやすくなります。

次回は、福祉車両を手放すときに知っておきたい「下取りと買取の違い」を解説します。


「福祉車両の買い替え」全4回

次の記事はこちら

第2回|福祉車両の下取りと買取の違い

この記事を書いた人

やんち
出歩くのが好きなやんちが、外出が困難な方に役立つ色んな情報を発信しています。

仕事:技士をしていましたが現在事務職です。車いすユーザーです。
   手動装置のクルマと電車で通勤してます。
趣味:テニスと英語と美術館巡り
特技:ラジオドラマ脚本は5分番組から1時間番組まで多数放送化されました。
資格:福祉車両取扱士

関西を中心に出来る限り実体験ベースで検証記事を書いています。

Xでは日常で気づいたことを書いています。

Substackでは「やんち」名義で、テーマを深掘りしています。

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