福祉車両を買い替えるとき、現在乗っている車をどのように手放すかで迷う人は少なくありません。
新しい車を購入する販売店に、そのまま引き取ってもらう「下取り」。
中古車買取店などに査定を依頼して売却する「買取」。
どちらも車を手放す方法ですが、手続きの流れや査定額の決まり方には違いがあります。
特に福祉車両は、スロープやリフト、電動ウインチ、車いす固定装置など、一般的な車にはない装備が付いています。
そのため、どこに査定を依頼しても同じ金額になるとは限りません。
この記事では、福祉車両の下取りと買取の違い、それぞれのメリット・デメリット、どちらを選ぶべきかを分かりやすく解説します。
下取りと買取の基本的な違い
まずは、下取りと買取の違いを確認しておきましょう。
下取りとは
下取りとは、新しい車を購入する販売店に、現在乗っている車を引き取ってもらう方法です。
現在の車の下取り価格を、新しく購入する車の代金から差し引いてもらう形が一般的です。
たとえば、新しい車が300万円で、現在の福祉車両の下取り価格が50万円だった場合、差額の250万円を支払うイメージです。
車の購入と売却を同じ販売店で進められるため、手続きが比較的簡単です。
買取とは
買取とは、中古車買取店や福祉車両を扱う専門業者などに、現在乗っている車を売却する方法です。
売却して受け取ったお金を、新しい車の購入費用に充てることができます。
新しい車を購入する店舗と、現在の車を売却する店舗が別になる場合があるため、下取りより手続きは少し増えます。
その一方で、複数の業者に査定を依頼し、金額を比較しやすいのが特徴です。
福祉車両を下取りに出すメリット
車の購入と売却をまとめて進められる
下取りの大きなメリットは、手続きの分かりやすさです。
新しい福祉車両の商談と、現在の車の査定を同じ店舗で進められます。
複数の業者と連絡を取る必要がないため、時間や手間を減らせます。
仕事や介助で忙しく、何度も査定に立ち会うのが難しい家庭には便利な方法です。
車の引き渡し時期を調整しやすい
福祉車両は、通院、通所、学校や施設への送迎など、日常生活に欠かせない場合があります。
現在の車を先に売却してしまうと、新しい車が納車されるまで移動手段がなくなる可能性があります。
下取りであれば、現在の車の引き渡し日を新しい車の納車日に合わせてもらえることがあります。
車を使えない期間をできるだけ作りたくない場合は、大きなメリットです。
名義変更などの手続きを任せやすい
車を売却すると、名義変更や必要書類の提出などの手続きが発生します。
下取りでは、新しい車を購入する販売店が一連の手続きを案内してくれるため、初めて買い替える人でも進めやすいでしょう。
福祉車両の買い替えでは、車両本体だけでなく、税金の減免や助成制度などについて確認が必要になる場合があります。
購入先でまとめて相談できる点も安心材料になります。
福祉車両を下取りに出すデメリット
査定額を比較しにくい
下取りは手軽ですが、その販売店が提示した金額だけで決めてしまうと、査定額が適正なのか判断しにくくなります。
新しい車の値引き額と下取り価格が、まとめて提示されることもあります。
たとえば、「車両本体からの値引きは少ないが、下取り価格を高く見せる」といった形です。
反対に、下取り価格は低くても、新しい車の値引きが大きい場合もあります。
比較するときは、下取り価格だけでなく、新しい車の最終的な支払総額を確認する必要があります。
福祉装置が十分に評価されないことがある
一般的な販売店では、福祉車両の流通や装備について詳しくない場合があります。
その場合、査定が車本体の年式や走行距離を中心に行われ、福祉装置の価値が十分に反映されない可能性があります。
スロープ、リフト、電動ウインチ、車いす固定装置などが正常に使える車でも、通常の中古車と同じ基準で評価されてしまうことがあります。
ただし、すべての販売店で福祉装置が評価されないわけではありません。
福祉車両を日常的に取り扱っている販売店であれば、装備や需要を含めて査定してもらえる可能性があります。
福祉車両を買取に出すメリット
複数の査定額を比較できる
買取の大きなメリットは、複数の業者から査定を受けられることです。
同じ福祉車両でも、業者によって査定額が異なることがあります。
その理由は、業者ごとに販売ルートや得意な車種が違うからです。
軽自動車の福祉車両を探している顧客が多い業者もあれば、リフト付きミニバンや法人向け車両を得意とする業者もあります。
その車を必要としている販売先を持っている業者ほど、査定額が高くなる可能性があります。
福祉装置を評価してもらえる可能性がある
福祉車両を専門的に扱う買取業者であれば、車本体だけでなく福祉装置の状態も査定対象になります。
たとえば、次のような部分です。
・スロープの開閉状態
・電動ウインチの作動状態
・車いす固定装置の状態
・リフトの動作
・回転シートや昇降シートの状態
・福祉装置の点検や修理履歴
・取扱説明書や付属品の有無
一般的な買取店では評価が難しい装備でも、専門業者なら再販売時の価値を判断できる可能性があります。
新しい車の購入先を自由に選べる
買取で現在の車を売却する場合、新しい車を同じ店舗で購入する必要はありません。
新車ディーラー、中古福祉車両販売店、福祉車両専門店など、希望する購入先を自由に選べます。
現在の車は高く評価してくれる業者へ売り、新しい車は条件の合う販売店から購入するという選び方ができます。
福祉車両を買取に出すデメリット
査定や手続きの回数が増える
複数の買取業者を比較する場合、それぞれに車の情報を伝え、査定を受ける必要があります。
電話やメールへの対応、査定日の調整など、下取りよりも手間がかかります。
介助や仕事で時間を取りにくい人は、比較する業者を最初から数社に絞ったほうがよいでしょう。
売却時期と納車時期の調整が必要
買取では、現在の車を売却する日と、新しい車が納車される日を自分で調整しなければならない場合があります。
査定額が高くても、すぐに車を引き渡すことが条件になっていることもあります。
福祉車両が毎日の生活に必要な場合、車がない期間が生じると困ります。
契約前に、次の点を確認しておきましょう。
・車の引き渡し日はいつか
・納車日まで現在の車に乗れるか
・引き渡し日の変更は可能か
・代車を借りられるか
・車いすに対応した代車があるか
一般的な代車は用意されても、車いすのまま乗れる福祉車両の代車が用意されるとは限りません。
売却金額だけでなく、移動手段を確保できるかも重要です。
下取りと買取はどちらが高く売れる?
一般的には、複数の業者を比較できる買取のほうが、高い査定額を見つけやすい傾向があります。
ただし、必ず買取のほうが高くなるとは限りません。
新しい車を購入する販売店が、福祉車両の販売に力を入れている場合や、買い替えキャンペーンを行っている場合は、下取り条件がよくなることもあります。
また、下取り価格が多少低くても、新しい車の値引きや用品サービスを含めると、最終的な負担額が少なくなる場合があります。
比較するときは、次の金額を分けて確認しましょう。
・新しい車の車両価格
・オプションや福祉装置の費用
・値引き額
・下取り価格
・買取業者の査定額
・税金や手数料
・最終的な支払総額
「下取り価格が高い」という言葉だけで判断せず、最終的にいくら支払うのかを確認することが大切です。
福祉車両は専門業者にも査定してもらうべき?
福祉車両を手放す場合は、可能であれば福祉車両を扱う業者にも査定を依頼してみましょう。
福祉車両には、一般的な中古車とは異なる需要があります。
車いす利用者の家庭だけでなく、介護施設、福祉施設、送迎事業者などが中古福祉車両を探していることもあります。
福祉車両の販売ルートを持つ業者であれば、次に必要とする人へ販売できるため、装備を含めて評価しやすくなります。
ただし、「専門業者だから必ず高い」とは限りません。
一般的な買取店のほうが高い査定額を提示する場合もあります。
最初から一つに決めず、次のような組み合わせで比較するとよいでしょう。
・新しい車を購入する販売店の下取り
・一般的な中古車買取店
・福祉車両を扱う買取業者
2社から3社程度を比較するだけでも、おおよその相場をつかみやすくなります。
下取りが向いている人
下取りは、次のような人に向いています。
・売却手続きに手間をかけたくない
・新しい車の購入と同時に進めたい
・現在の車を納車日まで使いたい
・複数の業者とのやり取りが難しい
・査定額よりも手続きの簡単さを優先したい
・購入先が福祉車両の取り扱いに慣れている
介助や通院などで忙しく、査定に時間をかけにくい家庭にとっては、下取りの手軽さが大きなメリットになります。
買取が向いている人
買取は、次のような人に向いています。
・少しでも高く売却したい
・複数の査定額を比較したい
・福祉装置を評価してほしい
・新しい車の購入先と売却先を分けてもよい
・売却や納車の日程を自分で調整できる
・現在の福祉車両に需要があるか確認したい
時間や手間をかけられる場合は、下取りだけで決めず、買取査定も受けてみる価値があります。
下取りと買取で迷ったときの進め方
下取りと買取のどちらにするか迷った場合は、最初から一つに決める必要はありません。
次の順番で進めると比較しやすくなります。
1.購入予定の販売店で下取り査定を受ける
まずは、新しい福祉車両を購入する予定の販売店で、現在の車の下取り価格を確認します。
見積書には、新しい車の価格、値引き額、下取り価格を分けて記載してもらいましょう。
2.買取業者にも査定を依頼する
次に、一般的な買取店や福祉車両を扱う業者へ査定を依頼します。
査定を受ける際は、福祉装置が正常に作動することや、点検・修理履歴があることを伝えましょう。
3.査定額だけでなく条件を比べる
金額だけでなく、次の条件も比較します。
・車を引き渡す時期
・査定額の有効期限
・契約後に減額される条件
・名義変更の手続き
・キャンセルの条件
・代車の有無
・福祉車両の代車に対応できるか
数万円高く売れても、納車前に車を手放す必要があり、その間の移動手段に費用がかかれば、実際のメリットは小さくなります。
4.最終的な負担額で決める
買取査定のほうが下取りより高かった場合は、その金額を販売店へ伝えることで、下取り条件を見直してもらえることもあります。
ただし、無理に価格交渉を続ける必要はありません。
査定額、手続きの負担、納車までの使いやすさを含めて、家庭に合った方法を選びましょう。
査定を受ける前に準備しておきたいもの
査定をスムーズに進めるために、次のものを準備しておきましょう。
・車検証
・自賠責保険証明書
・整備記録簿
・福祉装置の取扱説明書
・点検や修理の記録
・スペアキー
・リモコンなどの付属品
・取り外して保管している純正部品
・購入時の書類
福祉装置の定期点検や修理を行っている場合は、その記録も査定時に見せられるようにしておきます。
装置が正常に作動することを説明しやすくなり、車を大切に使用してきたことも伝わります。
査定額だけで即決しないことが大切
査定を受けた際に、「今日契約すればこの金額です」と即決を求められる場合があります。
しかし、福祉車両は新しい車の納車時期や、車いすでの移動手段も考えなければなりません。
金額だけで急いで決めず、次の点を確認してから契約しましょう。
・新しい車の納車日は決まっているか
・現在の車をいつまで使えるか
・査定額が変更される条件はあるか
・契約後にキャンセルできるか
・売却代金はいつ振り込まれるか
・必要な移動手段を確保できるか
家族や介助者とも相談し、生活に支障が出ない方法を選ぶことが大切です。
まとめ|下取りだけで決めず買取査定とも比較しよう
福祉車両の下取りと買取には、それぞれメリットとデメリットがあります。
下取りは、新しい車の購入と現在の車の売却をまとめて進められるため、手続きが簡単です。
一方、買取は複数の業者を比較でき、福祉車両を得意とする業者に査定を依頼することで、福祉装置を含めて評価してもらえる可能性があります。
手軽さを優先するなら下取り。
査定額や福祉装置の評価を重視するなら買取。
ただし、最初からどちらか一方に決める必要はありません。
まずは購入予定の販売店で下取り査定を受け、その後、買取業者や福祉車両を扱う専門業者の査定額と比較してみましょう。
査定額だけでなく、車の引き渡し時期、納車までの移動手段、手続きの負担を含めて判断することが、後悔しない買い替えにつながります。
次回は、年式や走行距離だけでは分からない「福祉車両の査定額が決まるポイント」を解説します。
「福祉車両の買い替え」全4回
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