福祉車両を買い替えるとき、気になるのが現在の車の査定額です。
「福祉装置が付いているから、一般的な車より高く売れるのでは?」
「車いす仕様に改造していると、逆に査定額が下がるのでは?」
このような疑問を持つ人も多いでしょう。
福祉車両の査定では、一般的な車と同じように、年式や走行距離、車の状態などが確認されます。
そのうえで、スロープ、リフト、電動ウインチ、車いす固定装置、回転シートなど、福祉車両ならではの装備も査定に影響します。
ただし、福祉装置が付いていれば、必ず査定額が高くなるわけではありません。
装置の種類や状態、その車を必要としている人がいるか、査定する業者が福祉車両の価値を判断できるかによって、評価が変わることがあります。
この記事では、福祉車両の査定額が決まる主なポイントと、少しでも納得できる査定を受けるための準備を解説します。
福祉車両の査定は「車本体」と「福祉装置」の両方を見る
福祉車両の査定額は、大きく分けて次の2つから判断されます。
・車本体の価値
・福祉装置の価値
車本体については、一般的な中古車と同じように、年式、走行距離、車種、グレード、修復歴、外装や内装の状態などが確認されます。
さらに福祉車両では、次のような装備の状態も重要になります。
・車いす用スロープ
・電動ウインチ
・車いす固定装置
・車いす用リフト
・回転シート
・昇降シート
・手動運転装置
・補助ステップ
・車高降下装置
福祉装置が正常に使えるだけでなく、次の利用者が安心して使用できる状態かどうかも査定のポイントです。
ただし、査定業者によって福祉装置の評価方法は異なります。
一般的な中古車買取店では車本体を中心に査定し、福祉車両を扱う業者では装置の状態や需要まで含めて査定することがあります。
そのため、同じ車でも査定額に差が出る可能性があります。
福祉車両の査定額を左右する8つのポイント
1.年式
年式は、福祉車両の査定でも重要な項目です。
一般的に、年式が新しい車ほど査定では評価されやすくなります。
年式が古くなると、車本体だけでなく福祉装置も経年劣化している可能性が高くなるためです。
ただし、古い車だから必ず価値がなくなるわけではありません。
福祉車両は、中古市場に出る台数が一般車ほど多くない車種や仕様もあります。
そのため、特定の車種や福祉装置を探している人がいれば、年式が古くても需要がある場合があります。
年式だけで判断せず、複数の業者から査定を受けることが大切です。
2.走行距離
走行距離も査定額に影響します。
走行距離が少ない車は、エンジンや足回りなどの消耗が少ないと判断され、評価されやすくなる傾向があります。
ただし、福祉車両では走行距離だけでなく、福祉装置がどの程度使われてきたかも重要です。
たとえば、通院や施設送迎で短い距離を何度も往復していた車は、走行距離が少なくても、スロープや電動ウインチを頻繁に使用していることがあります。
反対に、走行距離が多くても、長距離移動が中心で福祉装置の使用回数が少ない車もあります。
査定時には、走行距離だけでなく、福祉装置の動作状態も確認されます。
3.車種と福祉車両のタイプ
どの車種で、どのような福祉装置が付いているかも査定額を左右します。
福祉車両には、主に次のようなタイプがあります。
・車いすスロープ車
・車いすリフト車
・助手席回転シート車
・助手席昇降シート車
・後席昇降シート車
・運転補助装置付き車
・車いす収納装置付き車
同じ福祉車両でも、必要としている利用者や家庭は異なります。
たとえば、車いすのまま乗車できる軽自動車は、日常の送迎や通院に使いやすく、探している家庭が多い場合があります。
一方、複数人が乗れるリフト付きのミニバンやワゴンは、介護施設や送迎事業者などから需要があることもあります。
中古市場で需要のある車種や仕様であれば、査定で評価される可能性があります。
4.福祉装置が正常に作動するか
福祉車両の査定では、福祉装置が正常に作動するかが重要です。
見た目がきれいでも、スロープやリフト、電動ウインチなどが正常に使えなければ、修理や部品交換が必要になります。
査定時には、次のような部分が確認されることがあります。
・スロープを問題なく開閉できるか
・スロープに大きな変形や腐食がないか
・電動ウインチが途中で止まらないか
・ウインチから異音がしないか
・車いす固定装置が正常に作動するか
・固定ベルトがスムーズに伸び縮みするか
・リフトが最後まで昇降するか
・回転シートや昇降シートが安定して動くか
・車高降下装置が正常に作動するか
・警告灯や操作スイッチに異常がないか
不具合がある場合は、査定額から修理費用を見込んだ金額が差し引かれる可能性があります。
小さな異音や動作の遅れでも、査定前に販売店や整備工場で確認しておくと安心です。
5.車いす固定装置やベルトの状態
車いすのまま乗車する福祉車両では、車いす固定装置や乗員用シートベルトの状態が安全性に関わります。
次のような状態があると、査定に影響する可能性があります。
・固定ベルトが伸びたまま戻りにくい
・ベルトにほつれや傷がある
・金具が変形している
・ロック部分の動きが悪い
・固定装置にさびがある
・付属品が不足している
固定装置は、車いすを車内に載せるだけでなく、走行中に安全な位置へ固定するための重要な装備です。
正常に作動しない場合は、次の所有者がそのまま使用できないため、査定額が下がることがあります。
普段から固定装置の清掃や動作確認を行い、異常があれば早めに点検を受けましょう。
6.車内の汚れやにおい
福祉車両は、車いすのタイヤについた泥や砂が車内に入りやすく、スロープ周辺や固定装置の近くが汚れやすい車です。
また、通院や介護で使用している場合、飲食物、薬品、消毒液、ペット、たばこなどのにおいが残っていることもあります。
査定前に確認したい場所は次のとおりです。
・スロープの表面や裏側
・車いすを固定する床面
・固定装置の周辺
・シートのすき間
・フロアマットの下
・荷室や収納スペース
・ドリンクホルダー
・天井やドアの内側
通常の使用による小さな汚れで、査定額が大きく変わるとは限りません。
しかし、簡単に落とせる泥汚れやごみを残したまま査定を受けると、車全体の印象が悪くなることがあります。
専門的な清掃に高額な費用をかける必要はありませんが、自分でできる範囲で掃除をしておくとよいでしょう。
7.外装の傷や車体下部の状態
福祉車両も一般的な車と同じように、外装の傷、へこみ、塗装の状態が査定されます。
ただし、福祉車両ではスロープやリフトの取り付け部分、車体下部も確認しておきたいポイントです。
車いすスロープ車には、乗り入れをしやすくするため、車高を下げる装置が付いていることがあります。
段差や急な坂道で車体下部をこすっていると、傷や変形が生じている可能性があります。
また、スロープ周辺は雨水や泥が付着しやすいため、さびや腐食にも注意が必要です。
査定前に次の部分を目で確認してみましょう。
・バンパーの下側
・スロープの取り付け部分
・車体後部の下側
・リフトの土台部分
・ドアやバックドアの開閉部分
・車高降下装置の周辺
ただし、査定額を上げるために傷やへこみをすべて修理する必要はありません。
修理代より査定額の上昇分が少なくなる場合もあるため、先に査定を受けてから修理するか判断する方法もあります。
8.点検記録や付属品が残っているか
福祉車両を適切に整備してきたことが分かる記録は、査定時の安心材料になります。
査定前に、次のものが残っているか確認しましょう。
・車両の取扱説明書
・福祉装置の取扱説明書
・整備記録簿
・福祉装置の点検記録
・修理明細書
・保証書
・スペアキー
・電動装置のリモコン
・固定ベルトや金具などの付属品
・取り外した純正部品
特に、電動ウインチやリフトなどの点検・修理記録がある場合は、査定時に提示しましょう。
いつ、どこを点検し、どの部品を交換したかが分かれば、装置の状態を説明しやすくなります。
取扱説明書やリモコンなどを紛失している場合は、次の所有者が使用するときに再手配が必要になるため、査定に影響する可能性があります。
福祉車両ならではの装備は査定でプラスになる?
福祉装置が付いているからといって、購入時にかかった費用がそのまま査定額へ上乗せされるわけではありません。
中古車の査定額は、購入時の価格だけでなく、現在の需要や再販売のしやすさによって決まります。
たとえば、高額な福祉装置が付いていても、その仕様を必要とする購入者が少なければ、高い査定額にならない場合があります。
一方で、比較的多くの人が利用しやすい仕様や、流通台数が少ない人気車種であれば、福祉装置を含めて評価される可能性があります。
査定で評価されやすくするには、装置が付いていることだけでなく、次の点が重要です。
・福祉装置が正常に作動する
・安全に使用できる
・取扱説明書や付属品がそろっている
・点検や修理の履歴が分かる
・装置を必要とする販売先を業者が持っている
福祉装置の価値を判断できる業者に査定を依頼することも大切です。
後付けした福祉装置や改造はどう評価される?
購入後に手動運転装置や補助ステップ、車いす収納装置などを取り付けている場合、その装置が査定に影響することがあります。
ただし、後付け装置が必ずプラス評価になるとは限りません。
査定では、次のような点が確認されます。
・安全に取り付けられているか
・正常に作動するか
・取り付けを行った業者が分かるか
・車検や保安基準上の問題がないか
・取り外した純正部品が残っているか
・次の購入者がその装置を必要としているか
利用者の身体状況に合わせた特殊な改造は、同じ条件の購入者には価値があります。
しかし、一般的な購入者には使いにくく、元の状態へ戻す費用が必要になることもあります。
取り外した純正部品が残っている場合は、査定時に一緒に提示しましょう。
装置を外して元の状態へ戻せることで、再販売の選択肢が増える可能性があります。
事故歴や修復歴は福祉車両でも確認される
福祉車両であっても、事故歴や修復歴は査定に影響します。
小さな擦り傷を修理しただけで、必ず修復歴車になるわけではありません。
一般的に修復歴は、車の骨格に関わる部分を修理または交換した場合に確認されます。
査定時には、過去の事故や修理について、分かる範囲で正確に伝えましょう。
修理した事実を隠しても、査定時の確認で分かることがあります。
また、契約後に事故歴や修復歴が判明すると、査定額の変更や契約上のトラブルにつながる可能性があります。
修理明細や整備記録が残っている場合は、査定担当者に見せると説明しやすくなります。
福祉車両の査定額が業者によって違う理由
同じ日に同じ車を査定しても、業者によって金額が異なることがあります。
主な理由は、業者ごとに査定基準と販売ルートが違うからです。
一般的な中古車買取店
一般的な中古車買取店では、車種、年式、走行距離、グレードなど、車本体の相場を中心に査定することがあります。
全国に販売店舗や中古車オークションへの出品ルートを持っている業者であれば、幅広い車種を扱えることが強みです。
ただし、店舗や担当者によっては、福祉装置の価値を細かく判断するのが難しい場合があります。
福祉車両を扱う専門業者
福祉車両の販売や買取を行っている業者は、スロープやリフト、固定装置などの状態を確認し、福祉車両として再販売できるかを判断します。
福祉車両を探している個人、施設、事業者などへの販売ルートを持っていれば、その車の需要を査定額へ反映できる可能性があります。
ただし、専門業者であれば必ず最高額になるとは限りません。
車種や地域、在庫状況によっては、一般的な買取店のほうが高い金額を提示することもあります。
新しい車を購入する販売店
販売店の下取りでは、新しい車の値引きや購入条件と合わせて査定額が提示される場合があります。
下取り価格だけを見るのではなく、新しい車の最終支払額を確認する必要があります。
福祉車両を多く扱う販売店であれば、福祉装置を含めた査定が期待できます。
一方で、福祉車両の取り扱いが少ない店舗では、一般的な車として評価される可能性もあります。
査定前にやっておきたい7つの準備
1.車内とスロープ周辺を掃除する
車内のごみを捨て、掃除機や拭き掃除で簡単に汚れを落とします。
特に、スロープ、固定装置、車いすを置く床面は念入りに確認しましょう。
見た目を新車のようにする必要はありません。
大切なのは、日頃から丁寧に使用してきたことが伝わる状態にすることです。
2.福祉装置の動作を確認する
査定前に、スロープ、ウインチ、リフト、固定装置などを一通り作動させます。
異音、動作の遅れ、引っかかりなどがないか確認しましょう。
異常がある場合は、査定担当者に隠さず伝えることが大切です。
3.取扱説明書や付属品をそろえる
車両と福祉装置の取扱説明書、リモコン、スペアキー、固定金具などをそろえます。
後から見つけても、売却後では渡せない場合があります。
査定前に自宅や車内を確認しておきましょう。
4.整備記録や修理履歴を整理する
車検や定期点検の記録、福祉装置の修理明細などをまとめます。
口頭で「きちんと整備していた」と説明するより、書類で示せるほうが状態を伝えやすくなります。
5.純正部品を探す
後付け装置を取り付けた際に外したシート、内装部品、操作部品などが残っていないか確認します。
純正部品へ戻せる状態であれば、業者が再販売方法を選びやすくなる可能性があります。
6.下取り価格と買取価格を比較する
購入予定の販売店による下取りだけで決めず、一般的な買取店や福祉車両を扱う業者にも査定を依頼してみましょう。
2社から3社程度を比較すると、現在の車のおおよその相場を把握しやすくなります。
7.売却時期を決めておく
査定額には有効期限が設けられることがあります。
査定を依頼する前に、新しい車の納車予定や、現在の車をいつまで使う必要があるかを整理しておきましょう。
福祉車両が日常生活に欠かせない場合は、査定額だけでなく、引き渡し時期の条件も重要です。
査定額を上げるために修理したほうがよい?
傷や故障が見つかると、査定前に修理したほうが高く売れるのではないかと考えるかもしれません。
しかし、必ずしも修理したほうが得になるとは限りません。
たとえば、修理に10万円かかっても、査定額が10万円以上上がるとは限りません。
買取業者は、自社の提携工場などで一般の利用者より安く修理できることもあります。
そのため、大きな傷や福祉装置の故障がある場合は、先に査定を受けてから修理するか判断する方法があります。
ただし、安全に関わる不具合があり、査定日まで車を使用する場合は、売却とは別に早めの点検が必要です。
査定時に伝えておきたいこと
査定担当者には、車の状態だけでなく、福祉車両としての使い方や整備状況も伝えましょう。
たとえば、次のような情報です。
・福祉装置を定期的に点検していた
・電動ウインチを交換した時期
・固定ベルトを交換した時期
・スロープの修理履歴
・車高降下装置の点検履歴
・後付け装置の取り付け業者
・現在確認している不具合
・取り外した純正部品の有無
査定担当者が福祉装置に詳しくないようであれば、装置の名称や操作方法を説明することも必要です。
「福祉車両だから分かるはず」と思わず、評価してほしい装備を具体的に伝えましょう。
査定額だけで売却先を決めない
高い査定額は魅力ですが、売却先を決めるときは金額以外の条件も確認しましょう。
特に確認したいのは次の点です。
・提示された査定額がいつまで有効か
・車の引き渡し日はいつか
・契約後に減額される条件はあるか
・売却代金はいつ振り込まれるか
・名義変更はいつ行われるか
・キャンセルは可能か
・キャンセル料は発生するか
・納車まで現在の車を使えるか
・代車を用意してもらえるか
・福祉車両の代車に対応できるか
福祉車両は、通院や送迎などに欠かせないことがあります。
数万円高く売れたとしても、納車まで車が使えず、別の移動手段に費用がかかるなら、必ずしも条件がよいとはいえません。
査定額と生活への影響を合わせて判断しましょう。
まとめ|福祉装置の価値が分かる業者にも査定を依頼しよう
福祉車両の査定額は、年式や走行距離だけでは決まりません。
車本体の状態に加えて、スロープ、リフト、電動ウインチ、車いす固定装置など、福祉装置の状態も重要です。
査定額を左右する主なポイントは次のとおりです。
・年式
・走行距離
・車種と福祉車両のタイプ
・福祉装置の動作状態
・固定装置やベルトの状態
・車内の汚れやにおい
・外装や車体下部の状態
・点検記録や付属品の有無
査定前には、車内やスロープ周辺を簡単に清掃し、福祉装置の動作を確認しておきましょう。
取扱説明書、整備記録、修理明細、リモコン、スペアキーなどをそろえることも大切です。
また、福祉装置の評価は業者によって異なります。
購入予定の販売店による下取りだけでなく、一般的な買取店や福祉車両を扱う業者の査定も比較してみましょう。
査定額だけでなく、引き渡し時期や納車までの移動手段も含めて判断することが、納得できる買い替えにつながります。
次回は、現在の車の査定から新しい車の納車まで、「福祉車両を買い替える具体的な手順」を順番に解説します。
「福祉車両の買い替え」全4回
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