福祉車両を買い替えたいと思っても、「何から始めればよいのか分からない」という人は少なくありません。
一般的な車の買い替えであれば、現在の車を査定してもらい、新しい車を選ぶという流れになります。
しかし、福祉車両の場合は、それだけでは不十分です。
現在使っている車いすが新しい車に載るか、利用者の姿勢が安定するか、介助者が無理なく操作できるかなど、実際の使い方まで確認する必要があります。
また、現在の福祉車両を先に売却してしまうと、新しい車が納車されるまで通院や送迎ができなくなる可能性もあります。
この記事では、福祉車両を買い替える具体的な手順を、準備から査定、車選び、契約、納車まで順番に解説します。
福祉車両の買い替えは早めの準備が大切
福祉車両は、一般的な車よりも希望条件に合う車を見つけるのに時間がかかることがあります。
特に中古福祉車両は、車種だけでなく、福祉装置の種類や車いす乗車位置、乗車定員などの条件が一台ずつ異なります。
希望する車種が見つかっても、現在使用している車いすが載らないこともあります。
また、新車の場合でも、福祉装置の仕様や納期によっては、すぐに納車されないことがあります。
現在の車が完全に故障してから探し始めると、十分に比較できないまま次の車を決めることになりかねません。
福祉装置の不具合が増えた、車検や修理費が高くなってきた、介助者の負担が大きくなったと感じた段階で、少しずつ準備を始めましょう。
福祉車両を買い替える全体の流れ
福祉車両の買い替えは、次の流れで進めると分かりやすくなります。
1.現在の困りごとを整理する
2.次の車に必要な条件を決める
3.買い替えに使える予算を確認する
4.現在の車の査定を受ける
5.新しい福祉車両を探す
6.車いすを使って実車確認する
7.見積もりと査定条件を比較する
8.購入先と売却先を決める
9.必要書類や制度を確認する
10.契約と納車日を調整する
11.納車時に福祉装置を確認する
12.現在の車を引き渡す
それぞれの手順を詳しく見ていきましょう。
手順1.現在の福祉車両で困っていることを整理する
最初に、なぜ買い替えたいのかを整理します。
単に「車が古くなったから」だけでは、次の車でも同じ不便を感じる可能性があります。
現在の車で困っていることを、利用者と介助者の両方の視点から書き出してみましょう。
たとえば、次のような内容です。
・スロープの傾斜がきつい
・車いすを押し上げるのが重い
・車いす固定装置の操作に時間がかかる
・車内で利用者の頭が天井に近い
・介助者が腰を曲げて作業する必要がある
・家族全員が乗ると荷物を置けない
・医療機器や介助用品を積む場所がない
・車高が高く、乗り降りしにくい
・狭い駐車場でバックドアを開けにくい
・長距離移動で利用者が疲れやすい
現在の不満を明確にすると、次の車に必要な条件が見えやすくなります。
手順2.次の福祉車両に必要な条件を決める
現在の困りごとを整理したら、次の車に必要な条件を決めます。
最初から車種を一台に絞るのではなく、「絶対に必要な条件」と「あれば便利な条件」に分けるのがおすすめです。
絶対に必要な条件の例
・現在の車いすが安全に載る
・車いすに座ったまま乗車できる
・利用者の頭上と足元に余裕がある
・介助者一人で乗り降りを補助できる
・必要な乗車定員を確保できる
・自宅や施設の駐車場に入る
・通院や送迎に必要な荷物を積める
あれば便利な条件の例
・電動ウインチが付いている
・車高降下装置が付いている
・自動で車いすを固定できる
・両側スライドドアが付いている
・バックカメラや安全運転支援機能がある
・介助者が車内で移動しやすい
・荷物を置くスペースが広い
すべての希望を満たそうとすると、予算を超えたり、車種が限られたりします。
家族で優先順位を決めておくと、車選びで迷いにくくなります。
手順3.買い替えに使える予算を確認する
次に、新しい福祉車両の購入に使える予算を確認します。
考える必要があるのは、車両本体価格だけではありません。
次の費用も含めて考えましょう。
・福祉装置やオプションの費用
・登録や名義変更などの諸費用
・自動車保険の変更費用
・現在の車のローン残額
・納車までの移動費用
・必要に応じた駐車場の変更費用
・車いすや介助用品の買い替え費用
現在の車の下取り価格や買取価格が分かれば、次の車に使える金額を計算しやすくなります。
ただし、査定額は車の状態や売却時期によって変わる場合があります。
最初から査定額を全額使える前提にせず、少し余裕を持った予算を組みましょう。
手順4.現在の福祉車両の査定を受ける
買い替えの予算を考えるために、現在の車がいくらで売れるのかを確認します。
最初に、新しい車を購入する予定の販売店で下取り査定を受けると進めやすいでしょう。
そのうえで、一般的な中古車買取店や、福祉車両を扱う業者にも査定を依頼します。
比較したい査定先は次のとおりです。
・新しい車を購入する販売店
・一般的な中古車買取店
・福祉車両を扱う買取業者
福祉車両は、スロープやリフト、電動ウインチ、車いす固定装置などの評価によって、査定額に差が出る可能性があります。
査定時には、次のものを準備しておきましょう。
・車検証
・整備記録簿
・福祉装置の取扱説明書
・点検や修理の記録
・スペアキー
・リモコンなどの付属品
・取り外して保管している純正部品
査定額だけでなく、車をいつまで使えるのか、引き渡し日の変更ができるのかも確認しておきます。
手順5.新しい福祉車両を探す
必要な条件と予算が決まったら、新しい福祉車両を探します。
主な購入先は次のとおりです。
・自動車メーカーの販売店
・福祉車両専門店
・中古車販売店
・中古福祉車両を扱う買取販売業者
新車は、希望する仕様を選びやすく、保証やアフターサービスを受けやすい点がメリットです。
一方、中古福祉車両は、新車より価格を抑えられる可能性があります。
ただし、中古車は同じ車種でも、福祉装置、乗車定員、車いすの乗車位置などが異なります。
掲載写真や車両説明だけで決めず、できるだけ実車を確認しましょう。
手順6.現在の車いすを使って実車確認する
福祉車両選びで特に重要なのが、現在使用している車いすを実際に載せて確認することです。
カタログ上の寸法だけでは、使いやすさまでは分かりません。
車いすの幅や高さが収まっても、乗り降りの途中でタイヤやフットサポートが当たることがあります。
実車確認では、次の項目を確認しましょう。
スロープやリフトを使った乗り降り
・スロープの幅に余裕があるか
・傾斜がきつすぎないか
・車いすの前輪が引っかからないか
・電動ウインチを使いやすいか
・リフトへ安全に車いすを載せられるか
・介助者一人で操作できるか
車内での位置と姿勢
・利用者の頭が天井に近すぎないか
・足元やひざ周りに余裕があるか
・車いすが傾いていないか
・乗車中の視界に問題がないか
・エアコンの風が届くか
・利用者と介助者が会話しやすいか
車いすの固定
・固定装置へ手が届きやすいか
・ベルトを無理なく取り付けられるか
・介助者が腰を深く曲げずに操作できるか
・固定後に車いすが大きく動かないか
・利用者用シートベルトを適切に装着できるか
家族や荷物の乗車
・必要な人数が乗れるか
・介助用品や医療機器を積めるか
・買い物や旅行の荷物を置けるか
・荷物が福祉装置の操作を妨げないか
可能であれば、普段主に介助する人が実際に操作しましょう。
販売員が簡単に操作できても、家族にとって使いやすいとは限りません。
手順7.見積もりと査定条件を比較する
候補となる車が見つかったら、購入見積もりを出してもらいます。
複数の店舗を比較するときは、車両本体価格だけを見るのではなく、最終的な支払総額を確認しましょう。
見積書では、次の項目を分けて確認します。
・車両本体価格
・福祉装置の費用
・オプション費用
・税金や登録費用
・保証や整備費用
・値引き額
・下取り価格
・最終的な支払総額
下取り価格が高く見えても、新しい車の値引きが少ない場合があります。
反対に、下取り価格が低くても、車両本体の値引きが大きいこともあります。
下取りに出す場合と、買取業者へ売却する場合の両方で、最終的な負担額を計算しましょう。
手順8.購入先と売却先を決める
見積もりと査定額を比較したら、新しい車の購入先と現在の車の売却先を決めます。
手続きを簡単にしたい場合は、購入する販売店へ下取りに出す方法があります。
少しでも査定額を比較したい場合は、買取業者への売却も検討します。
判断するときは、査定額だけでなく次の条件も確認しましょう。
・現在の車を引き渡す日
・新しい車の納車予定日
・査定額の有効期限
・契約後に減額される条件
・売却代金が振り込まれる日
・キャンセルできるか
・代車を借りられるか
・福祉車両の代車があるか
福祉車両を日常的に使っている家庭では、車が使えない期間を作らないことが特に重要です。
数万円高い査定額が提示されても、早く車を手放す必要がある場合は、生活への影響も考えて判断しましょう。
手順9.必要書類や利用できる制度を確認する
福祉車両の購入や買い替えでは、一般的な車の登録書類に加えて、税金の減免や助成制度の手続きが必要になる場合があります。
制度の対象や必要書類は、利用者の状況や自治体によって異なることがあります。
買い替え前に、販売店や自治体の窓口へ確認しておきましょう。
確認したい内容は次のとおりです。
・自動車税や軽自動車税の減免
・環境性能割などの取り扱い
・福祉車両購入に関する助成制度
・車両改造費の助成
・運転補助装置に関する助成
・現在の車から新しい車への減免変更手続き
・身体障害者手帳など必要書類の有効期限
現在の車で税金の減免を受けている場合、新しい車へ自動的に引き継がれるとは限りません。
現在の車を手放す時期と、新しい車の登録時期を含めて確認することが大切です。
手順10.契約前に納車日と引き渡し日を調整する
購入する車と売却先が決まっても、すぐに契約するのではなく、納車と引き渡しの日程を確認します。
福祉車両を毎日の通院や送迎に使用している場合は、現在の車を先に手放さないよう注意しましょう。
契約前に確認したい項目は次のとおりです。
・新しい車の納車予定日
・納車が遅れた場合の対応
・現在の車を納車日まで使用できるか
・車検満了日までに納車されるか
・代車を借りられるか
・代車が車いすに対応しているか
・現在の車の引き渡し場所
・納車と引き渡しを同じ日にできるか
納車予定日は、部品不足、整備、登録手続きなどによって変更されることもあります。
現在の車を買取業者へ売却する場合は、納車日が確定してから引き渡し日を決めると安心です。
手順11.納車時に福祉装置を確認する
新しい福祉車両が納車されたら、車体の傷や装備だけでなく、福祉装置も必ず確認します。
納車時に販売員と一緒に、実際に装置を操作しましょう。
確認したいポイントは次のとおりです。
・スロープが正常に開閉するか
・電動ウインチが正常に作動するか
・リフトが最後まで昇降するか
・車いす固定装置が使えるか
・固定ベルトに傷やほつれがないか
・車高降下装置が作動するか
・回転シートや昇降シートが正常に動くか
・操作スイッチやリモコンがそろっているか
・取扱説明書がそろっているか
・警告灯や異音がないか
操作方法が分からないまま帰宅すると、実際に使用するときに困ることがあります。
家族の中で主に介助する人が、装置の操作を一通り練習しておきましょう。
できれば、車いすを実際に載せ、固定から降車までの流れを確認します。
手順12.現在の車を引き渡す
新しい車の状態と福祉装置を確認したら、現在の車を引き渡します。
車内に私物や必要書類が残っていないか、最後に確認しましょう。
忘れやすいものは次のとおりです。
・ETCカード
・障害者用駐車許可証などの掲示物
・車いす固定用の付属品
・介助用品
・駐車場のリモコン
・自宅の鍵
・ドライブレコーダーの記録媒体
・音楽や連絡先などナビの登録情報
・保険会社の書類
・整備記録や領収書
売却先へ渡す書類と、新しい車で使用する書類を分けておくと安心です。
カーナビや車載機器に個人情報が登録されている場合は、初期化や削除も忘れないようにしましょう。
買い替え中に車が使えなくなる期間を防ぐ方法
福祉車両の買い替えで特に注意したいのが、現在の車の引き渡しから新しい車の納車までの空白期間です。
一般的な代車は借りられても、車いすのまま乗れる代車が用意されるとは限りません。
車が使えない期間を防ぐためには、次の方法があります。
・新しい車の納車日に現在の車を引き渡す
・納車が確定するまで売却契約をしない
・売却契約時に引き渡し日を指定する
・販売店に福祉車両の代車があるか確認する
・家族や介護タクシーなど代替手段を確認する
・現在の車の車検期限に余裕を持って動く
特に中古福祉車両は、契約後に整備や登録手続きが必要です。
「店頭にあるからすぐ乗れる」と思い込まず、実際の納車日を確認しましょう。
中古福祉車両を選ぶときの注意点
中古福祉車両を購入する場合は、車本体だけでなく福祉装置の状態を確認する必要があります。
年式や走行距離が同じでも、装置の使用回数や整備状況によって状態は異なります。
確認したいポイントは次のとおりです。
・福祉装置が正常に作動するか
・スロープに変形や腐食がないか
・電動ウインチから異音がしないか
・固定ベルトが正常に戻るか
・リフトや回転シートの動きが安定しているか
・福祉装置の修理履歴があるか
・取扱説明書や付属品がそろっているか
・納車前にどこまで点検してもらえるか
・福祉装置の保証が付くか
・故障時にどこへ修理を依頼できるか
福祉装置の保証内容は、車本体の保証とは別になっていることがあります。
保証期間だけでなく、対象となる装置や修理先も確認しておきましょう。
福祉車両の買い替えでよくある失敗
車種だけで決めてしまう
人気車種や見た目だけで選ぶと、現在の車いすが載りにくかったり、介助者が操作しにくかったりすることがあります。
必ず実際の車いすを使って確認しましょう。
査定額だけで売却先を決める
高い査定額だけを見て売却すると、新しい車が納車される前に現在の車を手放すことになる場合があります。
引き渡し日や契約条件も比較することが大切です。
カタログ寸法だけで判断する
車いすの寸法が車内に収まっても、スロープの途中で部品が当たることがあります。
介助者が固定装置へ手を伸ばしにくい場合もあります。
実車確認を省略しないようにしましょう。
福祉装置の保証を確認しない
車本体に保証が付いていても、電動ウインチやリフトなどが保証対象外になっている場合があります。
契約前に、福祉装置の保証範囲を確認しましょう。
現在の困りごとを解決できていない
以前の車と同じタイプを深く考えずに選ぶと、介助負担や車内の狭さが改善されない可能性があります。
今回の買い替えで何を解決したいのかを、最初に明確にしておくことが重要です。
福祉車両買い替えチェックリスト
買い替えを進める前に、次の項目を確認してみましょう。
□ 現在の車で困っていることを書き出した
□ 次の車に必要な条件を決めた
□ 家族や介助者と優先順位を話し合った
□ 購入予算を確認した
□ 現在の車の下取り査定を受けた
□ 買取業者の査定額とも比較した
□ 現在の車いすを使って実車確認した
□ 利用者の頭上や足元を確認した
□ 介助者が福祉装置を操作した
□ 家族と荷物が載るか確認した
□ 福祉装置の保証内容を確認した
□ 納車予定日を確認した
□ 現在の車の引き渡し日を調整した
□ 納車までの移動手段を確保した
□ 税金の減免や助成制度を確認した
□ 納車時に福祉装置を動かして確認した
すべてを一度に決める必要はありません。
一つずつ確認しながら進めることで、買い替え後の後悔を減らせます。
まとめ|査定と車選びを同時に進めるのがポイント
福祉車両の買い替えは、現在の車を売却してから次の車を探すのではなく、査定と車選びを同時に進めることが大切です。
買い替えの主な流れは次のとおりです。
・現在の困りごとを整理する
・次の車に必要な条件を決める
・予算を確認する
・現在の車を査定してもらう
・新しい福祉車両を探す
・現在の車いすで実車確認する
・見積もりと査定額を比較する
・購入先と売却先を決める
・制度や必要書類を確認する
・納車日と引き渡し日を調整する
・納車時に福祉装置を確認する
福祉車両は、車そのものが新しくなればよいわけではありません。
利用者が安全に乗車でき、介助者が無理なく操作でき、家族の生活に合っていることが重要です。
現在の車が完全に故障してから慌てて探すのではなく、違和感や使いにくさを感じた段階から情報を集めましょう。
時間に余裕を持って比較することで、自分たちに合った福祉車両を選びやすくなります。
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