(本記事は介護送迎に使用する中古の「福祉車両ポルテ」を対象に、装備の仕組みと限界、費用、チェック手順までを一次情報中心に解説します。公式資料・自治体ページ・実在在庫へのリンクを付与しています)
はじめに
「助手席が回転して外に出るだけ?」「サイドアクセスは“簡易車いす”って何?」「中古は高い?総費用は?」――トヨタの福祉装備Welcab(ウェルキャブ)を備えたポルテは、2012年発表の2代目で大開口スライドドアと低床を前面に出し、助手席リフトアップやサイドアクセスなど送迎を支える装置を設定しました。
なおポルテは2020年に生産終了しており、中古が前提です。
ポルテが介護送迎に向く理由
大開口×低床のパッケージ
助手席側が電動スライドドアで、狭い場所でも乗降しやすいのが特長。初代の思想を含め、大開口(幅約1,020mm)と床地上高約300mmの低床設計が解説されています(2012年ニュースリリース/トヨタ75年史)。
ポルテの「介護機構」を正しく理解する
本稿でいう介護機構=ポルテのWelcab純正装置(乗降・積載補助)の総称です。代表は次の二系統です。
① 助手席リフトアップ(回転・昇降・チルト)
- 内容:助手席がドア側へ回転し、車外へスライドダウンして乗り降りを支援。リモコン操作可(機能は年式・タイプに依存)。公式解説
- Type B:標準で車いす積み降ろしの電動装置(後述)が付属。同リリース「Type B」記載
- 注意:操作は基本介助者が実施。取扱説明書ページに安全注意がまとまっています。
② サイドアクセス(脱着シート/専用車いす)
- 内容:助手席シートを車外に降ろして脱着し、専用フレームを装着すると「簡易車いす」として短距離移動に使用可。あるいは専用車いすで助手席位置へアクセス。主要諸元PDF/2019カタログ
- 簡易車いすとは:脱着した助手席の座面ユニットを車いすフレームに装着し、玄関⇄車・病院内などの短距離・平坦路の移動を想定したもの(長距離常用には不向き)。取扱書ページ
- 席数注意:サイドアクセス装着車は後席左・中央が使用不可=乗車定員3名。諸元PDF(※2注記)
(補足)ポルテに「後席スロープ+ウインチ」の車いす仕様はない
後席スロープで車いすのまま乗車しウインチを併用するタイプは、代表的にはシエンタの車いす仕様(参考:寸法例)。ポルテは助手席アクセス型です。
用途別:どちらを選ぶ?
ご家庭の送迎(自宅⇄病院)が中心:助手席リフトアップ(Type A)
要介助者が助手席で安定して座れる、駐車位置が平坦、介助者が操作できる前提ならType Aで十分な場面が多い。公式解説
折りたたみ車いすを毎回積む:助手席リフトアップ(Type B)またはサイドアクセス(B)
電動の車いす収納装置が付き、介助者の負担を軽減。~約35kgクラスの手動車いす想定(装置仕様による)。Type B=電動収納付の明記/2019カタログ(35kg表記)
玄関前~車・病院内~駐車場の短距離移動を一体化:サイドアクセス(A/B)
「座面=簡易車いす」で移乗回数を抑制。生活動線に坂・段差が多いと運用が難しいため、実地確認が必須。定員は3名に。諸元PDF
中古相場の傾向(装備×年式で変動)
- 助手席リフトアップ(A/B):掲載例で45万〜90万円台など(支払総額表示)。カーセンサー例
- サイドアクセス(A/B):Bで59〜70万円台などの例。カーセンサー(福祉車両絞り)/グーネット
- 一般のポルテ平均:全体平均で約50万円規模の表示も(市場により変動)。参考:グーネット統計表示
「車いす収納装置(=小型ウインチ)」の使い方
どこで・どう使う?
注意:操作は介助者が行う前提。傾斜・不整地での操作は禁止とされます(取扱書参照)。ウェルキャブ取扱説明書
安全と運用のポイント
- 操作主体:助手席リフトアップ/サイドアクセスとも介助者操作が基本。取扱書
- 場所:平坦・安全な場所で操作(傾斜・不整地は不可)。取扱書
- 席数:サイドアクセス装着車は定員3名(後席左・中央は使用不可)。諸元PDF
費用シミュレーション(中古購入→3年使用)
地域や個体で変動しますが、概算の考え方を可視化します。税の減免は自治体差があるため、大阪府の案内と減免のしおりを例示します。
ケース | 想定装備 | 中古の支払総額(参考) | 税の減免(3年・仮置き) | 福祉装置点検(例) | 概算3年総額 (保険・燃料除く) | 根拠リンク |
---|---|---|---|---|---|---|
A | 助手席リフトアップ Type A | 約70万円(中央値仮定) | ▲約10.8万円(条件合致時) | 約1.2万円(4,000円/年×3) | 約60.4万円 | 相場例/減免 |
B | サイドアクセス Type B(電動収納付) | 約65万円(中央値仮定) | ▲約10.8万円(条件合致時) | 約1.2万円 | 約55.4万円 | 相場例/仕様 |
C | 一般ポルテ+後付け収納装置 | 約50万円+後付14.96万円 | 0(想定) | 約1.2万円 | 約66.2万円 | 平均/後付 |
※相場は在庫や年式・走行・装置状態で変動。減免の適用可否は条件により異なるため、最新の自治体ページで必ず確認してください。
現車チェック&試乗の手順
助手席周り(通し動作)
- 回転→スライドダウン→着座→上昇→固定を連続で確認(異音・停止位置ズレ)。取扱書
- 介助者の立ち位置、雨天時の足元視認と滑り止めを確認。
席配置と定員
- サイドアクセスは後席左・中央が使用不可=定員3名。家族構成に合致するか事前にシミュレーション。諸元PDF
ラゲージでの車いす積み降ろし(Type Bのみ)
- 〜約35kg想定。スイッチ→昇降→固定をその場で実演。カタログ
簡易図解:見学チェックの流れ
[駐車位置決め] → [助手席リフト/サイドアクセス動作] → [席配置の合意] ↓ [Bタイプなら収納装置の実演]
自分の車いす・家族構成に合うか
- 移乗力・上体保持を評価して、助手席リフトアップ or サイドアクセスを選ぶ。
- 介助者の支え時間・体勢、医療機器・雨具など荷物の定位置化を想定。
- 将来的な体力・方法の変化を見込み、ドア開口・室内高さ・席配置に余裕を持たせる。
ポルテと代替有力車の比較
- ポルテ:助手席アクセス型(短中距離送迎×会話しやすさ)。
- シエンタ:後席スロープ+ウインチで車いすのまま乗車(寸法例・スロープ9.5°などの資料あり)。参考寸法ページ
補助・減免・保険
- 税の減免:自動車税(環境性能割・種別割)等の減免あり(要件・期限に注意)。大阪府の案内/減免のしおり
- 助成:自治体福祉課・社協・財団の公募を定期チェック(見積・仕様写真・用途説明をセット)。
- 保険・代車:福祉装置不具合時に同等装置の代車が確保できるか、販売店ネットワークとあわせて確認。
維持とトラブル予防
- 点検:半年点検に福祉装置を含め、正常時の音・速度を動画で記録。
- 要チェック部位:助手席リフト/チルトの駆動、脱着シートのロック、車いす収納装置の可動・配線。
よくある質問
助手席が「車いすそのもの」になるの?
サイドアクセス(脱着シート)は、助手席を脱着して専用フレームに装着し、短距離の簡易車いすとして使える方式。助手席リフトアップは座面を外に下げて乗降支援する装置で、車いす化はしません。取扱書/2019カタログ
ウインチはどこで使う?
ポルテではラゲージの「車いす収納装置」として使用。Type Bなどで電動積み降ろしに用います(〜約35kg想定)。Type B記載/カタログ
中古でも福祉装置付きは高い?
装置分の上乗せが生じるのが通例。実例では助手席リフトアップ:45〜90万円台、サイドアクセスB:59〜70万円台などが散見されます(時期・個体で変動)。カーセンサー/同(リフトアップ)/グーネット
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