年式・走行距離だけでは決められない中古福祉車両の選び方【全4回・第2回】

中古車を探すとき、多くの人が最初に確認するのが年式と走行距離です。

「年式が新しい車のほうが安心」

「走行距離が少ない車のほうが長く乗れそう」

このように考えるのは、決して間違いではありません。

しかし、中古福祉車両の場合、年式と走行距離だけで状態を判断するのは危険です。

中古福祉車両には、スロープや電動ウインチ、車いす固定装置、回転シートなど、一般的な中古車にはない福祉装置が付いています。

車両本体の状態が良くても、福祉装置が劣化していれば、安全で使いやすい車とはいえません。

反対に、多少年式が古く、走行距離が多くても、定期的に整備されてきた車両なら、安心して使える場合があります。

中古福祉車両を選ぶときは、数字だけでは見えない部分まで確認することが大切です。

全4回シリーズの第2回では、年式や走行距離以外に確認したいポイントを解説します。

目次

年式が新しくても安心とは限らない

中古福祉車両を探していると、同じ車種でも年式によって価格が大きく違います。

一般的には、年式が新しい車両ほど価格が高くなります。

新しい車両には、安全装備が充実している、内外装がきれい、部品の劣化が少ないといったメリットがあります。

しかし、年式が新しいというだけで、すべての状態が良いとは限りません。

以前の使用方法によっては、年式が新しくても福祉装置が頻繁に使われている可能性があります。

例えば、病院や介護施設などの送迎車として使用されていた場合です。

1回の走行距離は短くても、1日に何度もスロープを開閉し、電動ウインチや車いす固定装置を使用していたかもしれません。

一方、個人の家庭で通院や外出のときだけ使用されていた車両なら、同じ年式でも福祉装置の使用回数が少ない可能性があります。

中古福祉車両では、「何年前の車か」だけでなく、「どのように使われていた車か」を確認することが重要です。

走行距離が少なくても福祉装置は使われている

走行距離は、中古車の状態を判断する大切な目安です。

しかし、走行距離で分かるのは、主に車が道路を走った距離です。

スロープを何回開閉したのか、電動ウインチを何回使用したのかまでは分かりません。

例えば、自宅から近い病院や施設まで、毎日送迎に使われていた車両を考えてみましょう。

1回の走行距離が短ければ、年間の走行距離はそれほど増えません。

それでも、乗車と降車のたびにスロープやウインチを使用するため、福祉装置には繰り返し負担がかかります。

そのため、

「走行距離が少ないから福祉装置も新しい状態だろう」

と判断することはできません。

中古福祉車両では、走行距離と福祉装置の使用状況を分けて考える必要があります。

走行距離が多い車両は避けるべき?

走行距離が多い中古福祉車両を見ると、不安を感じる人もいるでしょう。

確かに、走行距離が増えれば、エンジンや足回り、消耗部品などの劣化が進んでいる可能性があります。

ただし、走行距離が多いという理由だけで、すぐに候補から外す必要はありません。

大切なのは、定期的に点検や整備が行われてきたかどうかです。

オイル交換や消耗部品の交換が適切に行われ、福祉装置も定期的に点検されている車両なら、走行距離が多少多くても検討できる場合があります。

反対に、走行距離が少なくても、長期間ほとんど動かされていなかった車両には注意が必要です。

車は動かさなければ傷まないわけではありません。

バッテリーやタイヤ、ゴム部品などは、走行距離に関係なく時間とともに劣化します。

中古福祉車両は、走行距離の数字だけで良し悪しを決めるのではなく、保管状況や整備状態も含めて判断しましょう。

最初に確認したいのは整備記録

中古福祉車両を選ぶときは、点検整備記録簿などの記録が残っているか確認しましょう。

整備記録を見ることで、これまでどのような点検や修理が行われてきたのかを把握しやすくなります。

確認したいのは、エンジンやブレーキなど、一般的な車両部分だけではありません。

福祉装置についても、次のような記録がないか販売店に確認します。

・電動ウインチの点検や修理
・スロープの調整や部品交換
・車いす固定装置の交換
・回転シートや昇降シートの点検
・福祉装置のスイッチや配線の修理
・メーカーや専門業者による点検

福祉装置の整備記録が残っていない場合は、販売店に現在の状態を詳しく説明してもらいましょう。

「動作確認済み」という説明だけでは、どの部分をどのように確認したのか分かりません。

どの装置を動かし、異音やがたつき、ベルトの傷みまで確認したのかを聞くことが大切です。

前の所有者がどのように使っていたか確認する

中古福祉車両の状態を判断するうえで、前の所有者や使用目的は重要な情報です。

販売店が把握している範囲で、次のような点を確認してみましょう。

・個人が使用していた車両か
・病院や介護施設などが使用していた車両か
・通院や買い物が中心だったか
・毎日の送迎に使用されていたか
・屋内や屋根付きの場所で保管されていたか
・屋外で長期間保管されていたか

施設で使用されていた車両が、必ず悪いわけではありません。

定期的に点検や整備を受けている場合もあります。

個人が使用していた車両でも、十分な点検が行われていなかった可能性があります。

重要なのは、個人使用か施設使用かだけで決めることではありません。

どのくらいの頻度で使われ、どのように管理されてきたのかを確認することです。

福祉装置の修理や部品交換に対応できるか

中古福祉車両では、購入後に福祉装置の修理が必要になることがあります。

そのときに困るのが、修理できる場所が見つからないケースです。

一般的な整備工場では、エンジンやタイヤなどの整備はできても、スロープや電動ウインチ、昇降シートなどの修理に対応できない場合があります。

購入前に、次の点を確認しておきましょう。

・販売店で福祉装置の修理に対応できるか
・故障した場合の連絡先があるか
・メーカーや専門業者へ修理を依頼できるか
・交換部品を取り寄せられるか
・購入後の保証に福祉装置が含まれているか

中古車保証が付いていても、福祉装置は保証対象外になっていることがあります。

「保証付き」と書かれているだけで安心せず、どの部分が保証されるのかを確認することが重要です。

福祉装置の年式も確認する

車両本体の年式と、福祉装置が取り付けられた時期が同じとは限りません。

新車時から福祉車両として製造された車両もあれば、一般車両を購入後に改造している車両もあります。

また、途中で福祉装置の一部が交換されている場合もあります。

そのため、可能であれば次の点を確認しましょう。

・新車時から福祉車両だったのか
・後から福祉装置を取り付けた車両なのか
・どの事業者が改造したのか
・福祉装置が取り付けられた時期
・過去に部品交換や改修が行われているか

後付けの福祉装置が悪いという意味ではありません。

大切なのは、取り付け内容や整備先が分かり、今後も修理や点検を受けられることです。

車いす固定ベルトは消耗品として見る

車いす固定ベルトや電動ウインチのベルトは、安全に関わる重要な部品です。

見た目では問題がなさそうでも、長期間の使用によって傷みが進んでいることがあります。

次のような状態がないか確認しましょう。

・ベルトに擦れやほつれがある
・ベルトがねじれている
・汚れや変色が目立つ
・巻き取りがスムーズではない
・フックが変形している
・ロック部分にがたつきがある
・左右で動き方が違う

固定ベルトは、車いすが動かないようにするための重要な装置です。

「まだ使えそう」という感覚だけで判断せず、交換時期や点検状況を販売店に確認しましょう。

納車前に交換できるのか、交換する場合はいくらかかるのかも聞いておくと安心です。

スロープは開閉できるだけでは不十分

スロープを確認するときは、単に開け閉めできるかを見るだけでは足りません。

実際の使用を想定して、次の点を確認する必要があります。

・開閉時に異音がしないか
・途中で引っかからないか
・左右にがたつきがないか
・スロープ表面が滑りやすくなっていないか
・変形や大きな傷がないか
・収納時に確実に固定できるか
・介助者が無理なく操作できる重さか

スロープの状態によっては、車いすをまっすぐ乗せにくくなることがあります。

また、スロープを手動で出し入れする車両では、介助者が毎回無理なく操作できるかも重要です。

販売員が操作するところを見るだけでなく、実際に介助する人が操作してみましょう。

電動ウインチは車いすを載せて確認する

電動ウインチは、スイッチを押してベルトが動けば問題ないとは限りません。

車いすを接続していない状態では、負荷がほとんどかかっていないためです。

できるだけ普段使用している車いすを持ち込み、実際に乗せながら確認しましょう。

確認したいポイントは次のとおりです。

・左右のベルトが同じように動くか
・巻き取り中に止まらないか
・異音や振動がないか
・スイッチの反応が悪くないか
・解除操作が分かりやすいか
・緊急時に手動で操作できるか
・車いすが斜めにならずに進むか

車いす利用者が乗った状態で確認できる場合は、乗車中の姿勢や揺れにも注意しましょう。

販売店での操作説明を動画に残してよいか確認しておくと、購入後に操作方法を忘れたときにも役立ちます。

車両本体の状態も忘れずに確認する

福祉装置に目が向きすぎると、一般的な中古車としての確認がおろそかになることがあります。

中古福祉車両も、車両本体は通常の中古車です。

次のような部分も確認が必要です。

・エンジンや変速機の状態
・ブレーキや足回りの状態
・タイヤの残り溝やひび割れ
・バッテリーの状態
・エアコンの効き方
・ドアやバックドアの開閉
・車体下部のさび
・雨漏りの跡
・修復歴や事故歴
・車検までの残り期間

特に、車いす利用者が乗車する後部は、空調が届きにくい場合があります。

前席だけでなく、車いすを固定する位置でも暑さや寒さを確認しましょう。

車内の傷や汚れだけで判断しない

中古車では、内装がきれいな車に魅力を感じます。

確かに、車内が清潔に保たれていることは大切です。

しかし、内装の見た目がきれいでも、福祉装置の状態が良いとは限りません。

反対に、床や内装に車いすを使用した傷があっても、装置の点検や整備がきちんと行われている車両もあります。

中古福祉車両では、多少の傷だけを理由に候補から外すのではなく、安全性や使いやすさを優先して判断しましょう。

ただし、車いす固定部分の床に大きな変形や腐食がある場合は注意が必要です。

見た目だけでは判断できない場合は、販売店に詳しく説明してもらいましょう。

価格が安い理由を必ず確認する

同じ車種、同じくらいの年式や走行距離でも、販売価格に大きな差があることがあります。

安い車両を見つけると魅力的に感じますが、価格だけで契約を急いではいけません。

価格が安い理由としては、次のような可能性があります。

・年式が古い
・走行距離が多い
・修復歴がある
・福祉装置に傷みがある
・保証が付いていない
・納車前整備の内容が少ない
・タイヤやバッテリーの交換が必要
・車検が近い
・内外装に大きな傷がある
・修理部品の入手が難しい

安い理由を理解したうえで、必要な修理費や交換費用を含めて考えることが大切です。

車両本体価格だけでなく、乗り始めるまでに必要な総額を確認しましょう。

車両価格ではなく購入後の総費用で比較する

中古福祉車両を比較するときは、表示されている車両価格だけを見ないようにしましょう。

購入時や購入後には、次のような費用が発生する可能性があります。

・税金や登録に必要な費用
・納車前の点検整備費用
・車検費用
・タイヤやバッテリーの交換費用
・福祉装置の修理費用
・固定ベルトなどの交換費用
・自宅までの陸送費用
・購入後の定期点検費用

一見すると高く見える車両でも、整備や部品交換が済んでいて、福祉装置の保証が付いているなら、結果的に安心で割安な場合があります。

反対に、車両価格が安くても、購入直後にタイヤやバッテリー、福祉装置の部品交換が必要になれば、総額が高くなることがあります。

複数の車両を比べるときは、同じ条件で総費用を計算しましょう。

中古福祉車両を数字だけで選ばないための確認項目

中古福祉車両を選ぶときは、年式と走行距離に加えて、次の項目を確認しましょう。

・以前の使用目的
・福祉装置の使用状況
・車両本体の整備記録
・福祉装置の点検記録
・スロープの状態
・電動ウインチの動作
・車いす固定装置の状態
・修復歴や事故歴
・車体下部のさび
・保証の対象範囲
・故障時の修理先
・交換部品の入手が可能か
・納車前に交換される部品
・購入後に必要となる総費用

すべての条件が完璧な中古車を見つけるのは簡単ではありません。

だからこそ、自分たちが譲れない条件を先に決めておくことが大切です。

安全に関わる部分、毎回の介助負担に関わる部分、修理できる体制については、価格より優先して確認しましょう。

まとめ

中古福祉車両は、年式が新しく、走行距離が少なければ必ず安心というわけではありません。

走行距離が少なくても、送迎などでスロープや電動ウインチが頻繁に使用されている可能性があります。

反対に、走行距離が多少多くても、定期的に点検や整備が行われている車両なら、検討できる場合があります。

中古福祉車両選びで重要なのは、次の点です。

・年式と走行距離だけで判断しない
・前の所有者や使用目的を確認する
・車両本体と福祉装置の整備記録を見る
・スロープや電動ウインチを実際に動かす
・保証に福祉装置が含まれるか確認する
・故障したときの修理先を確認する
・車両価格ではなく購入後の総費用で比較する

中古福祉車両は、数字だけを見て選ぶと、本当に大切な部分を見落としてしまいます。

購入後に安心して使い続けるためには、車両の状態だけでなく、福祉装置の状態や修理体制まで確認することが必要です。

次回は、販売店で中古福祉車両を見るときに確認したいポイントを、現車確認のチェック項目として詳しく解説します。

実際に使用している車いすを持ち込み、どこを見て、何を試し、販売店に何を質問すればよいのかを確認していきましょう。

◀ 前回:中古福祉車両を買って後悔する原因|中古福祉車両の選び方【全4回・第1回】

▶ 次回:購入前に確認したい中古福祉車両のチェックポイント【全4回・第3回】

この記事を書いた人

やんち
出歩くのが好きなやんちが、外出が困難な方に役立つ色んな情報を発信しています。

仕事:技士をしていましたが現在事務職です。車いすユーザーです。
   手動装置のクルマと電車で通勤してます。
趣味:テニスと英語と美術館巡り
特技:ラジオドラマ脚本は5分番組から1時間番組まで多数放送化されました。
資格:福祉車両取扱士

関西を中心に出来る限り実体験ベースで検証記事を書いています。

Xでは日常で気づいたことを書いています。

Substackでは「やんち」名義で、テーマを深掘りしています。

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