雨の日に車いすで帰宅すると、困るのがタイヤの汚れです。
後輪には雨水や泥がつき、前輪の小さなキャスターにも砂や細かなゴミが付着しています。
そのまま家に入るのは嫌ですよね。
フローリングに黒いタイヤ跡がついたり、玄関から廊下まで水滴が続いたり…。
かといって、家に入るたびにタイヤを洗う訳にもいきません。
そこで今回は、できるだけ手間を増やさず、簡単に車いすのタイヤについた雨水や泥を室内へ持ち込まない方法
です。
前回は「車いす本体」、今回は「家を汚さない」がテーマ
このシリーズ第1回では、雨で濡れた車いすのフレーム、ハンドリム、タイヤ、キャスター、シートなどを帰宅後にどう手入れするか、でした。
雨で濡れた車いすはどうする?帰宅後の簡単お手入れ|車いすの雨・汚れ対策【全4回・第1回】
今回は視点を変えて、車いすではなく、玄関や室内を守る対策です。
屋外を走った車いすをそのまま室内で使う家庭では、雨の日だけでなく、普段からタイヤについた砂やホコリへの対策が必要になります。
雨の日はそこへ水分と泥が加わるため、いつも以上に汚れを持ち込みやすくなります。
車いすは「後輪だけ拭けばOK」ではないが
車いすを見ると、どうしても後輪に目がいきますが、室内の床を汚す原因になるのは後輪だけではありません。
・左右の前輪キャスター
・キャスター周辺
・靴が直接当たるフットサポート付近
・布地部分についたゴミなど
です。
特に前輪キャスターは、つい忘れがちです。
ところが、水たまりや泥の上を通れば当然汚れがつきます。
玄関で全部きれいにしようとしない
玄関では、室内へ持ち込むと困る汚れだけを落とす
と割り切ります。
優先順位をつけるなら、
泥 → 砂 → 水分
です。
タイヤに大きな泥のかたまりが付いていれば先に取り除きます。
次に砂や小さなゴミ。
最後に残った水分を取ります。
小雨の舗装道路を少し走っただけなら、水分を拭くだけで済むこともあります。
逆に雨上がりの公園や砂利道を走った日は、泥や砂を先に取ったほうが室内へ持ち込みにくくなります。
毎回同じ掃除をするのではなく、その日の汚れに合わせる。
これくらいで十分です。
方法① 玄関に「タイヤ用タオル」を常備する
もっとも簡単なのは、タイヤ専用のタオルや布を玄関に置いておく方法です。
ポイントは、
身体や車いすのシートを拭くタオルと分けておくこと。
タイヤには路面の泥や砂などが付着しています。
そのため、
「車いす用」
とひとまとめにするより、
タイヤ・キャスター専用
の布を決めておいたほうが使いやすくなります。
玄関に、
・乾いた布
・固く絞って使える布
・使用済みの布を入れる袋や容器
をまとめて置いておけば、便利です。
タイヤやゴム部分については、水を含ませて固く絞った布で拭く方法が効果的です。ただし清掃方法は車種によって異なるため、使用している車いすの取扱説明書を優先してください。
方法② 少し進んでは拭くとタイヤ全周を確認しやすい
後輪は大きいため、車いすを止めた状態ではタイヤ全体を一度に拭けません。
動かしながら拭くのがコツです。
前輪キャスターも同じです。
ただし、車いす利用者が乗ったまま車体を持ち上げたり、無理な姿勢で車輪の下へ手を入れたりする必要はありません。
本人だけで行う場合、介助者がいる場合、玄関の広さなどによって、無理なくできる方法を選んでください。
「完璧に一周拭くこと」より、安全にできることを優先します。
方法③ 吸水マットの上で一度止まる
玄関のスペースに余裕があるなら、屋外から入ってすぐの場所に吸水性のあるマットを置く方法もあります。
雨の日に濡れたタイヤで、
屋外 → そのままフローリング
と進むより、
屋外 → マット → 室内
とワンクッション置くわけです。
マットだけですべての泥が落ちるわけではありません。
しかし、タイヤ表面の水分を少し減らしてから室内へ入れるという意味では使いやすい方法です。
特に介助者がいる場合は、
マットの上で一度停止
↓
大きな泥を落とす
↓
タイヤとキャスターを軽く拭く
↓
室内へ入る
という流れを決めてしまうと、雨の日の作業が分かりやすくなります。
方法④ 玄関から車いすを置く場所まで床を保護する
玄関でタイヤを拭いても、多少の水分や砂が残ることはあります。
そこで、
「タイヤを完全にきれいにする」だけでなく、「汚れても困らない通り道を作る」
という方法もあります。
例えば、雨の日だけ玄関から車いすを置く場所まで、洗えるマットなどで床を保護する方法です。
車いすを頻繁に出入りさせる家庭なら、毎回タイヤを完璧に掃除するより、このほうがラクな場合もあります。
特に、
・介助が必要で玄関で長時間止まりにくい
・大型の車いすを使っている
・ティルト・リクライニング車いすを使っている
・雨の日でも毎日外出する
という家庭では、掃除の手間を減らす仕組みを作るほうが続けやすいでしょう。
方法⑤ タイヤカバーを使う方法もある
屋外で使ったタイヤを室内へ持ち込みたくない場合、車いす用のタイヤカバーも選択肢になります。
タイヤ部分をカバーして、床へ直接タイヤが触れないようにする用品です。
カバーの内側が汚れますが、カバーだけ洗えば十分です。
前輪キャスターも同様です。
製品によって、
・タイヤサイズ
・装着方法
などを確認します。
タイヤカバーを含めた雨・泥汚れ対策用品については、このシリーズ第4回でまとめて紹介します。
「外用と室内用の車いすを分ける」という方法もある
屋外用の車いすと室内用の車いすを分ける
という方法もあります。
これなら屋外を走ったタイヤを居室へ入れずに済みます。
玄関に1台分のスペースが必要です。
ただし、車いすから車いすへの移乗が必要になりますし、身体に合わせた座位保持装置やクッションを使っている場合など、室内用を用意するハードルが高い場合もあります。
でも、車いすの手入れについていえば、これが一番楽な方法でしょう。
自分で車いすを使っている人は「玄関でどう拭くか」も重要
介助者がいれば、車いす利用者が乗った状態でタイヤを拭いてもらえる場合があります。
一方、自分一人で外出して帰宅する人にとって、
自分が乗っている車いすのタイヤを玄関で拭く
というのは意外と大変です。
特に後輪の下側やキャスター周辺まで手を伸ばすのは難しいことがあります。
無理な姿勢で掃除するくらいなら、
・玄関マットで水分を減らす
・拭ける範囲だけ拭く
・床を保護して室内へ入る
・後で掃除しやすい状態にしておく
という考え方でもいいでしょう。
タイヤを完璧に掃除できなければ家に入れない、という仕組みにしないこと。
毎日の生活で続けられる方法を選ぶことが大切です。
フローリングは「水滴+砂」に注意
フローリングでは、濡れたタイヤから落ちる水滴だけでなく、タイヤに付いた細かな砂にも注意したいところです。
砂が残った状態で車いすを何度も往復すると、床の汚れにつながります。
そのため、雨の日はまず、
泥や砂をできるだけ玄関で落としてから室内へ入る
ことを優先します。
床に水滴が落ちた場合も、そのままにせず早めに拭いておきます。
カーペットは玄関での処理を少し丁寧に
フローリングなら、室内に少しタイヤ跡がついても後から拭くことができます。
ところがカーペットでは、泥水が入り込むと掃除が面倒です。
室内へ入ってすぐカーペットがある住宅では、
玄関で大きな泥を取る
↓
タイヤ・キャスターの水分を取る
↓
必要なら床保護用のマットを使う
というように、フローリングより少し丁寧に対策したほうが後がラクです。
畳の部屋へ入るなら「タイヤをきれいにしてから」が基本
畳は、フローリングのように濡れたタイヤ跡を簡単に拭き取れる床ではありません。
車いすで畳の部屋まで入る場合は、玄関や廊下でできるだけタイヤの水分と泥を取っておきたいところです。
住宅によっては、畳の上に車いす用の床保護材などを使う方法も考えられます。
雨の日だけの問題ではないため、普段から車いすで畳の上を移動する場合は、床を保護する仕組みそのものを考えるほうが現実的です。
「玄関を汚さない」必要はない
ここも発想を変えていいと思います。
雨の日に、
玄関まで一切汚さない
ようにするのは難しいものです。
屋外と室内の境目なのですから、玄関は多少汚れる場所でもあります。
それより、
「玄関までは汚れてもいい。そこから先へ持ち込まない」
と区域を決めるほうが分かりやすくなります。
例えば、
玄関のこのマットまで
↓
ここでタイヤを拭く
↓
使用済みタオルはこの容器へ
↓
その先は室内
という流れを家族で決めておけば、雨が降るたびに方法を考える必要がありません。
雨の日のおすすめは「3段階」
いろいろ紹介しましたが、毎回全部やる必要はありません。
家庭で取り入れやすいのは、次の3段階です。
軽い雨
タイヤとキャスターの水分をサッと取る。
普通の雨
玄関マットで一度止まり、タイヤ・キャスターの水分と目立つ砂や泥を取る。
泥汚れがひどい日
大きな泥や砂を玄関で落とし、タイヤ・キャスターを拭いてから室内へ入る。必要なら床を保護する。
このくらいに分けておけば、
小雨の日まで毎回大掃除
ということにはなりません。
玄関に「雨の日セット」を作っておくとラク
雨の日対策で一番面倒なのは、実は掃除そのものより、
「タオルどこ?」
「汚れた布をどこへ置く?」
「マットを出さないと」
と準備することかもしれません。
そこで玄関付近に、
・タイヤ用の布
・乾拭き用タオル
・使用済みタオルを入れる袋や容器
・必要なら床を守るマット
などをひとまとめにしておくと便利です。
雨が降ったら箱やバッグを一つ出すだけ。
これなら家族や介助者が変わっても同じ方法で対応できます。
具体的にどんな用品が使いやすいのかは、第4回の**「雨・泥汚れの後始末に役立つグッズ」**でまとめて紹介します。
スロープ車の場合は、家に着く前にもう一つ問題がある
ここまで読んで、
「家に着いてからなら何とかできそう」
と思った人もいるでしょう。
ところがスロープ車を使って外出している家庭には、もう一つ困る場面があります。
例えば、
スロープ車で出かける
↓
外で車いす利用者を降ろす
↓
雨の中を車いすで移動する
↓
用事を済ませる
↓
再び車いすのままスロープ車へ戻る
というケースです。
このときは、泥や雨水の付いたタイヤで自宅ではなくスロープ車の中へ入ります。
すると、
・スロープ床
・車いす固定スペース
・車内床
へ雨水や泥が入り込みます。
しかも外出先なので、自宅の玄関のように掃除道具が揃っているとは限りません。
そこで次回は、
「スロープ車へ戻る直前に何をすればいいのか」
そして、
「車内やスロープ床を雨・泥汚れからどう守るのか」
を詳しく考えます。
まとめ|タイヤを完璧に洗うより「室内へ持ち込まない仕組み」を作る
雨の日に車いすで帰宅するたび、
タイヤを洗って、
キャスターを掃除して、
完全に乾かしてから家へ入る。
これができれば理想かもしれません。
でも、毎日の生活としては大変です。
それよりも、
玄関で大きな泥を落とす
↓
タイヤとキャスターの水分を減らす
↓
必要ならマットやタイヤカバーなどで床を守る
という仕組みを作っておくほうが続けやすくなります。
そして、
「玄関までは多少汚れてもいい。でも居室へはできるだけ持ち込まない」
と考えれば、雨の日の後片付けも少しラクになります。
自分で車いすを使う人、介助者と一緒に使う人、大型の車いすを使う人。
家庭によって一番ラクな方法は違います。
大事なのは、毎回完璧に掃除することではなく、その家庭で無理なく続けられる方法を決めておくことです。
次回、第3回では、
「雨の日にスロープ車へ戻ったときの車内・スロープ床の雨泥対策」
を紹介します。

コメント