ミニバンと軽自動車どちらがいい?

車いすの家族を乗せる福祉車両を探していると、最初に迷いやすいのが「ミニバンと軽自動車のどちらを選ぶか」です。

軽自動車は、車両価格や維持費を抑えやすく、狭い道や駐車場でも運転しやすいのが魅力です。

一方、ミニバンには車内の広さがあり、家族や荷物も一緒に乗せやすいため、「大きい車のほうが安心なのでは」と感じる人もいるでしょう。

しかし、福祉車両は単純に、大きければよいわけではありません。

普段は近所の病院へ2人で行くだけなのに、大きなミニバンを選ぶと、毎日の運転や駐車が負担になることがあります。

反対に、価格や運転のしやすさだけで軽自動車を選ぶと、車いすを乗せた途端に座席や荷物スペースが足りなくなり、後悔するかもしれません。

大切なのは、車の大きさではなく、次の条件に合っているかです。

  • どのような車いすを使用しているか
  • 車いす利用者を含めて何人で乗るか
  • 通院や買い物が中心か、旅行や帰省にも使うか
  • 車いす以外にどのくらい荷物を積むか
  • 自宅や病院の駐車場に十分な広さがあるか
  • 主に誰が運転・介助するか

この記事では、車いすに座ったまま乗車するスロープタイプの福祉車両を中心に、ミニバンと軽自動車の違いを詳しく比較します。

車いす利用者本人の快適性や介助者の負担、購入後に後悔しやすいポイントまで確認しながら、ご家庭に合った一台を考えていきましょう。

目次

ミニバンと軽自動車、結局どちらがいい?

最初に結論をお伝えすると、次のような分け方が一つの目安になります。

近距離・少人数・運転のしやすさを重視するなら軽自動車

軽自動車が向いているのは、主に次のような家庭です。

  • 通院や近所への買い物が中心
  • 車いす利用者と介助者の2人で乗ることが多い
  • 長距離移動はあまりしない
  • 車いす以外の荷物が少ない
  • 自宅周辺の道路や駐車場が狭い
  • 大きな車の運転に不安がある
  • 購入費用や維持費をできるだけ抑えたい

現在の軽自動車は、車高の高いスーパーハイトワゴンを中心に、車いすに乗ったまま乗車できる福祉車両が用意されています。

ただし、軽自動車は規格上、全長3.4メートル以下、全幅1.48メートル以下に収められています。高さを生かして広く見せる工夫はされていても、横幅と前後の長さには限界があります。

そのため、軽自動車を選ぶ場合は、「車いすが入るか」だけでなく、車いすを載せた状態で人と荷物がどの程度乗るのかまで確認する必要があります。

長距離・複数人・荷物の多さを重視するならミニバン

ミニバンが向いているのは、次のような家庭です。

  • 家族3人以上で出かけることが多い
  • 通院先までの距離が長い
  • 旅行や帰省にも使用したい
  • 車いす以外の介護用品や医療機器も載せる
  • 電動車いすやリクライニング車いすを使用している
  • 今後、車いすや介護用品が大型化する可能性がある
  • 車いす利用者の周囲に余裕を持たせたい

ミニバンは、軽自動車よりも車内の長さや幅を確保しやすく、車いす利用者以外の座席や荷物スペースも残しやすいのが特徴です。

ただし、「ミニバン」といっても、コンパクトミニバンとミドルサイズミニバンでは、車体寸法や車内レイアウトが大きく異なります。

ミニバンなら何でも広いと思わず、車いす乗車時の座席配置を一台ずつ確認しましょう。

大きさだけでは結論を出せない

軽自動車とミニバンのどちらがよいかは、ボディーサイズだけでは判断できません。

実際の使いやすさは、次の装備や設計にも左右されます。

  • スロープの長さと角度
  • 車高を下げる機能の有無
  • 電動ウインチの操作方法
  • 車いすの固定方法
  • 車いす乗車位置
  • 車内高と後部開口部の高さ
  • 車いす乗車時に残る座席数
  • エアコンの位置
  • 車いす利用者から窓までの距離

例えば、車両後部の車高を下げてスロープの傾斜を緩やかにしたり、電動ウインチで車いすの乗車を補助したりする車種があります。狭い場所で使いやすい短いスロープを採用したミニバンもあります。

つまり、「軽だから介助が大変」「ミニバンだから楽」とは一概にいえません。

カタログ上の車体寸法よりも、毎回の乗車操作を家族が無理なく続けられるかが重要です。

ミニバンと軽自動車の違いを比較

主な違いを整理すると、次のようになります。

比較項目軽自動車ミニバン
車両価格比較的抑えやすい高くなりやすい
維持費抑えやすい軽自動車より高くなりやすい
車内の広さ限られる余裕を確保しやすい
運転のしやすさ小回りが利きやすい車幅や全長に注意が必要
車いす利用者の圧迫感体格や車いすによって感じやすい比較的軽減しやすい
車いす乗車時の座席数少なくなりやすい座席を残しやすい
荷物スペース不足しやすい確保しやすい
長距離移動用途や本人の状態による比較的向いている
狭い道・駐車場扱いやすい取り回しに注意が必要
大型車いすへの対応制限されやすい選択肢を確保しやすい
将来の変化への対応車いす変更で合わなくなる場合がある比較的対応しやすい

これはあくまで一般的な傾向です。

福祉車両では、同じ車種でも仕様によって座席数や車いす乗車位置が変わります。必ず福祉車両としてのレイアウト図を確認してください。

軽自動車の福祉車両を選ぶメリット

車両価格と維持費を抑えやすい

軽自動車は、一般的にミニバンより車両価格を抑えやすく、税金やタイヤなどの維持費も比較的小さくできます。

福祉車両は、スロープやウインチ、車いす固定装置などが追加されるため、通常の軽自動車より価格が高くなります。それでも、同程度の福祉装備を備えたミニバンと比較すると、購入時の負担を抑えやすいでしょう。

ただし、見積もりを比較するときは、車両本体価格だけを見ないことが大切です。

福祉装備の内容やオプション、納車費用なども含めた総額で比較してください。

なお、車いすごと搬送できる昇降装置と固定装置を備えるなど、一定の条件を満たす身体障害者用自動車は消費税の非課税対象になります。すべての車両や装備が一律に非課税になるわけではないため、販売店の見積書で確認しましょう。

狭い道路や駐車場で扱いやすい

軽自動車の大きな魅力は、取り回しのしやすさです。

福祉車両は、病院や施設だけでなく、スーパー、薬局、住宅街などでも使用します。

特に次のような環境では、軽自動車のコンパクトさが役立ちます。

  • 自宅前の道路が狭い
  • 駐車場の横幅が小さい
  • 病院の立体駐車場を利用する
  • 狭い住宅街ですれ違うことが多い
  • バック駐車が苦手
  • 介護をきっかけに運転を始めた

どれだけ車内が広くても、運転する人が怖くて使わなくなってしまっては意味がありません。

毎日の通院や送迎で使う車だからこそ、運転者が無理なく扱えることは重要な条件です。

通院や近所の買い物に使いやすい

移動範囲が自宅周辺に限られ、乗車時間も短いのであれば、軽自動車で十分な場合があります。

例えば、次のような使い方です。

  • 週2回、車で15分の病院へ通う
  • 車いす利用者と配偶者の2人で乗る
  • 大きな荷物はほとんど載せない
  • 旅行や遠出には別の交通手段を利用する

このような家庭では、ミニバンの広さより、軽自動車の扱いやすさのほうが日々の負担を減らしてくれるでしょう。

大きな車に不慣れな人でも運転しやすい

普段介助をする人が高齢だったり、これまで小さな車にしか乗ったことがなかったりする場合、ミニバンへの乗り換えが心理的な負担になることがあります。

車幅の感覚がつかめず、狭い道や駐車場が怖くなると、外出そのものが減ってしまうかもしれません。

運転しやすい軽自動車を選ぶことで、通院だけでなく、買い物や気分転換の外出にも使いやすくなります。

福祉車両は、外出を諦めないための車です。広さだけでなく、「気軽に出かけられるか」という視点も忘れないようにしましょう。

軽自動車の福祉車両で注意したい点

車いすを乗せると座席や荷室が少なくなる

通常の軽自動車では4人乗れても、車いすを載せた状態では、同じように4人乗れるとは限りません。

後部座席を折りたたんだり、車いすスペースとして使用したりするため、車いす乗車時に使用できる一般座席が少なくなることがあります。

確認すべきなのは、カタログに大きく書かれている通常時の乗車定員ではありません。

必ず次の2つを分けて確認してください。

  • 車いすを乗せないときの乗車定員
  • 車いすを乗せたときに利用できる座席数

「普段は夫婦2人だから問題ない」と考えていても、病院へ付き添う家族やヘルパーが同乗することもあります。

どのような場面で誰が乗るのか、具体的に想像しておきましょう。

荷物を置く場所が足りなくなりやすい

車いすの外出では、車いすだけを載せるわけではありません。

家庭によっては、次のような荷物も必要になります。

  • 車いす用クッション
  • おむつや着替え
  • 膝掛けや雨具
  • 杖や歩行器
  • 酸素ボンベ
  • 吸引器
  • バッグや買い物袋
  • 移乗用ボード
  • 子どもの座位保持装置

車いすが車内に入った状態で、これらを安全に置けるか確認してください。

荷物を車いすの横や上に無理に積むと、乗降時の邪魔になったり、急ブレーキで動いたりするおそれがあります。

展示車を見るときは、空の状態だけでなく、普段持ち歩く荷物を置いた場面まで想像することが大切です。

車いす利用者が圧迫感を覚えることがある

軽自動車は車高が高くても、車幅には限りがあります。

車いす利用者の体格や車いすの形状によっては、次のような圧迫感を覚えるかもしれません。

  • 肩や腕が内装に近い
  • 頭上に余裕が少ない
  • 窓が小さく感じる
  • 前方が見えにくい
  • 介助者との距離が近すぎる
  • 荷物に囲まれてしまう

本人が言葉で不快感を伝えるのが難しい場合は、表情や姿勢、乗車後の疲れ方も確認しましょう。

「車いすが入ったから大丈夫」ではなく、本人がその場所で落ち着いて過ごせるかを見る必要があります。

長距離では揺れや騒音が負担になる場合がある

車いす利用者は、車に備え付けられたシートではなく、車いすに座った状態で移動します。

車いすの種類やクッション、本人の座位保持能力によっては、路面からの振動やカーブでの横揺れを強く感じることがあります。

Hondaも車いす仕様車の注意事項として、長時間のドライブや悪路での走行が、車いす利用者の負担になる場合があると案内しています。

特に注意したいのは、次のような人です。

  • 体幹が不安定
  • 自分で姿勢を戻せない
  • 腰や首に痛みがある
  • 筋緊張が強い
  • 長時間同じ姿勢を保つのが難しい
  • 車酔いしやすい

短時間の試乗だけでなく、可能であれば普段の移動に近い道路や時間で確認しましょう。

大型の車いすは載せられない場合がある

標準型の手動車いすが入っても、別の車いすが入るとは限りません。

特に確認が必要なのは、次のような車いすです。

  • 電動車いす
  • リクライニング車いす
  • ティルト式車いす
  • 座位保持装置付き車いす
  • 頭部支持装置の付いた車いす
  • 障害児用バギー
  • 大柄な人向けの車いす

例えば、Hondaの車いす仕様車では、乗車可能な車いすの全高、全長、全幅などの目安が車種ごとに示されています。

ただし、メーカーは、示された寸法内でも車いすの形状によっては乗車できない場合があるとして、実際に使用している車いすで乗車確認するよう案内しています。

カタログの数字だけで「入るはず」と判断しないようにしましょう。

ミニバンの福祉車両を選ぶメリット

車いす利用者の周囲に余裕を持たせやすい

ミニバンは軽自動車より車内の幅や長さを確保しやすく、車いす利用者の周囲に余裕を持たせやすいのが特徴です。

車いす利用者にとっては、単に広いだけでなく、次のような違いにつながります。

  • 肩や腕が内装に当たりにくい
  • 頭上に余裕を持たせやすい
  • 荷物と本人の距離を取れる
  • 介助者が姿勢を確認しやすい
  • 車内で必要なケアを行いやすい
  • 窓から外を見やすい位置を選べる可能性がある

ただし、ミニバンでも、車いすの乗車位置が車両最後部になることがあります。

広さだけでなく、本人から前方や窓がどのように見えるのかも確認しましょう。

家族や介助者も一緒に乗りやすい

家族で外出するとき、車いす利用者だけを乗せればよいわけではありません。

配偶者、子ども、きょうだい、ヘルパーなどが同乗することもあります。

ミニバンは軽自動車より座席配置の選択肢が多く、車いすを乗せた状態でも一般座席を残しやすい傾向があります。

例えば、同じ7人乗りと表示されている車でも、福祉車両の仕様や車いすの乗車台数によって、車いす使用時に座れる人数は変わります。トヨタのミニバン型福祉車両にも、車いす1名仕様や2名仕様など複数のレイアウトがあります。

「家族全員で乗れると思っていたのに、一人だけ別の車で行くことになった」という事態を防ぐため、車いす乗車時の座席数を必ず確認しましょう。

車いす以外の荷物も載せやすい

ミニバンは、車いすだけでなく、介護用品や医療機器、旅行用品も載せる家庭に向いています。

特に、日帰りではなく宿泊を伴う外出では、荷物が一気に増えます。

  • 着替え
  • おむつや衛生用品
  • クッション
  • 呼吸器や吸引器
  • 充電器
  • 食事用品
  • 入浴用品
  • 家族の旅行バッグ

車いすを乗せた状態でこれらを積むには、車内の床面積だけでなく、荷物を固定できる場所も必要です。

購入前には、車いすを載せた状態の荷室を見せてもらいましょう。

長距離移動や旅行に対応しやすい

遠方の病院への通院、帰省、旅行などで長時間乗る場合、車内に余裕があるミニバンのほうが使いやすい可能性があります。

例えば、次のような点で差が出ます。

  • 荷物と車いす利用者を離して置きやすい
  • 介助者が近くに座りやすい
  • 冷暖房の調整をしやすい
  • 必要に応じて休憩用品を載せられる
  • 家族が窮屈になりにくい

ただし、ミニバンであっても、車いす利用者が車両後部に乗ると、揺れや音を感じることがあります。

長距離利用を考えている場合は、本人が普段使っている車いすに乗った状態で試乗しましょう。

将来の身体状況の変化に対応しやすい

現在はコンパクトな手動車いすを使っていても、数年後には状況が変わる可能性があります。

  • 車いすがリクライニング式になる
  • 座位保持装置が大きくなる
  • 電動車いすへ変更する
  • 酸素ボンベなどの医療機器が増える
  • 移乗が難しくなり、車いすのまま乗る機会が増える
  • 介助者が複数必要になる

車内に余裕のあるミニバンは、このような変化に対応しやすい傾向があります。

ただし、「将来が心配だから」という理由だけで、必要以上に大きな車を選ぶ必要はありません。

今の使いやすさを犠牲にせず、数年先の変化にどこまで備えるかを考えましょう。

ミニバンの福祉車両で注意したい点

購入価格と維持費が高くなりやすい

ミニバンは軽自動車に比べて、車両本体だけでなく、燃料、タイヤ、保険などの負担も大きくなりやすい傾向があります。

福祉車両では、通常車両に加えてスロープやウインチ、車いす固定装置などが備わるため、仕様によっては価格差がさらに大きくなります。

購入時には、車両価格だけでなく、今後何年間保有するかを考え、維持費を含めて検討しましょう。

ただし、安さを優先して毎日の使い勝手を犠牲にすると、買い替えが必要になり、結果的に負担が増えることもあります。

狭い道や駐車場では扱いにくい

福祉車両では、車体を駐車できればよいわけではありません。

後方から車いすを乗せるスロープタイプの場合、車の後ろに次のスペースが必要です。

  • バックドアを開けるスペース
  • スロープを展開するスペース
  • 車いすが待機するスペース
  • 介助者が立つスペース
  • 車いすの方向を整えるスペース

車体の大きなミニバンを駐車すると、スロープを展開する余地が残らない場合があります。

特に注意したいのは、車止めの後ろに壁やフェンスがある駐車場です。

展示場では広い場所で簡単に乗降できても、自宅では同じように操作できないことがあります。

購入前に、販売店の担当者へ自宅駐車場の寸法や写真を見せると安心です。

普段の運転が負担になる場合がある

大きな車に慣れていない人にとっては、ミニバンの運転そのものが負担になることがあります。

  • 狭い道路でのすれ違い
  • 左折時の巻き込み
  • バック駐車
  • 立体駐車場への進入
  • 車幅感覚
  • 車高制限

家族の中で運転できる人が一人だけになると、その人が体調を崩したときに福祉車両を使えなくなります。

できれば、普段介助に関わる複数の家族が運転できる大きさを選びましょう。

大きければ必ず快適とは限らない

ミニバンには広さがありますが、車いす利用者の快適性が必ず高くなるとは限りません。

車いす乗車位置によっては、次のような問題が起こる可能性があります。

  • 後輪に近く揺れを感じやすい
  • 運転席から遠く会話しにくい
  • 前方が見えにくい
  • 窓から外が見えない
  • エアコンの風が届きにくい
  • 車内の音が大きく感じる
  • 介助者から本人の表情が見えにくい

展示車では、車内の広さに目が向きがちです。

実際に本人が乗った位置から、視界、音、温度、家族との距離を確認してください。

車いす利用者にとって快適なのはどちら?

車を選ぶとき、運転者と介助者の使いやすさだけで判断してしまうことがあります。

しかし、移動中に長く座っているのは車いす利用者本人です。

本人の視点から、次の項目を確認しましょう。

頭や肩の周囲に余裕があるか

車いすに本人が座った状態で、頭上や肩の周囲を確認します。

車いすの高さだけでなく、本人の座高、ヘッドサポート、クッションの厚さも含めて考えてください。

スロープを上がる途中では、車いすが傾くため、乗車口の上部に頭が近づくことがあります。

車内に入った状態だけでなく、乗り込む途中にも頭や手足が当たらないか確認しましょう。

窓の外や家族の顔が見えるか

車いす利用者が車両後方に乗る場合、一般座席に座る人より視界が制限されることがあります。

本人の目線から、次の点を見てください。

  • 窓から外が見えるか
  • 前方が見えるか
  • 家族の顔が見えるか
  • 車内が暗く感じないか
  • 荷物で視界を塞がれないか

外の景色や家族の顔が見えない状態で長時間移動すると、不安や車酔いにつながる人もいます。

揺れや振動に耐えられるか

試乗では、平らな道を数分走るだけでなく、可能であれば次のような場所も通ってみましょう。

  • 道路の継ぎ目
  • 小さな段差
  • カーブ
  • 坂道
  • 踏切
  • 少し荒れた路面

急加速や急ブレーキを試す必要はありません。

普段の運転で感じる揺れを、本人がどう受け止めるか確認することが目的です。

試乗後には、その場で「大丈夫?」と聞くだけでなく、帰宅後の疲労や痛みも確認しましょう。

冷暖房が届くか

車いす乗車位置は、運転席や一般座席よりエアコンの吹き出し口から離れることがあります。

特に夏場は、バックドアを開けて乗車操作をしている間に、車内の温度が上がりやすくなります。

次の点を確認してください。

  • 後方まで冷気や暖気が届くか
  • 風向きを調節できるか
  • 日差しが直接当たらないか
  • 後部に空調の操作機能があるか
  • 乗車操作中に暑さや寒さを避けられるか

暑さや寒さを自分で伝えにくい人の場合は、本人の体温調節の特徴も販売店へ伝えましょう。

普段の移動時間を過ごせるか

10分間快適に乗れたからといって、1時間でも快適とは限りません。

試乗するときは、普段の移動時間を基準に考えます。

片道30分の病院へ通うなら、短時間の試乗だけでなく、少なくとも姿勢や振動の影響を判断できる時間を確保したいところです。

長距離移動が多い場合は、どのくらいの間隔で休憩し、車いすから降りられる場所があるかも考えておきましょう。

介助する家族にとって楽なのはどちら?

介助者の負担は、車体の大きさよりも、乗車から出発までの一連の操作によって変わります。

福祉車両は一度だけ操作するものではありません。

通院の往復だけでも、乗車と降車を合わせて何度も操作します。雨の日や介助者が疲れている日でも続けられるかが重要です。

スロープを無理なく出し入れできるか

確認したいのは、次の点です。

  • スロープは手動か電動か
  • 持ち上げるときに重くないか
  • どこを持って操作するか
  • 腰を深く曲げる必要がないか
  • 指を挟みそうな場所がないか
  • 収納時に力が必要ないか
  • 雨の日でも滑らず操作できるか

販売スタッフの操作を見ただけで判断せず、普段介助する人が自分で操作してください。

担当者が簡単そうに扱えても、高齢の家族や腰痛のある人には負担になることがあります。

車いすをスロープ上で安全に誘導できるか

多くのスロープタイプでは、電動ウインチを使って車いすの乗車を補助します。

ただし、ウインチが付いていれば、何もしなくても乗車できるわけではありません。

介助者は、車いすの向きを整え、左右へずれないよう支えながら操作します。

次の点を確認しましょう。

  • スロープの傾斜が急すぎないか
  • ウインチのスイッチを操作しやすいか
  • 車いすを支えながら操作できるか
  • 介助者が後ろを歩ける幅があるか
  • 車いすが左右へ寄ったときに修正できるか
  • 途中で停止したときに車いすが後退しないか

Hondaの車いす仕様車では、スロープを水平で平坦な路面で使用し、周囲の安全を確認するよう案内されています。耐荷重や合計重量にも条件があるため、車種ごとの取扱説明を守る必要があります。

車いすを固定しやすいか

乗車後は、車いす本体を車両に固定し、さらに本人へシートベルトを装着します。

車いすの固定と、本人のシートベルトは別の役割です。

車いすだけを固定しても、本人の身体が守られるわけではありません。

Hondaやダイハツの案内でも、車いす利用者用の3点式シートベルトを正しく装着し、出発前に車いすが確実に固定されているか確認するよう示されています。

実車では、次の操作を確認してください。

  • 固定ベルトへ手が届くか
  • 深くかがみ込む必要がないか
  • フックを掛ける位置が分かりやすいか
  • 車いすの部品が邪魔にならないか
  • シートベルトが首や顔に当たらないか
  • 毎回同じ手順で固定できるか
  • 固定完了を目や音で確認できるか

介助者が一人で最初から最後まで操作できることが理想です。

雨の日でも乗降できるか

車いすの乗降には、通常の乗り降りより時間がかかります。

雨の日には、車いす利用者だけでなく、介助者、車いす、荷物、車内も濡れやすくなります。

自宅や病院で、屋根のある場所を利用できるか確認しましょう。

屋根がない場合は、次のような準備も必要です。

  • 車いす用レインカバー
  • 介助者のレインウエア
  • 車内を拭くタオル
  • 濡れたスロープで滑らない靴
  • 荷物を一時的に置く場所

駐車場が狭いと、傘を差しながら介助することも難しくなります。

晴れた日の展示場だけでなく、悪天候時の動きも想像して選びましょう。

生活スタイル別・軽自動車とミニバンの選び方

ここからは、具体的な生活場面ごとに考えてみます。

通院と近所の買い物が中心なら軽自動車

次の条件に当てはまる場合は、軽自動車が有力です。

  • 片道30分以内の移動が中心
  • 基本的に2人で乗る
  • 荷物は少ない
  • 標準的な大きさの手動車いすを使用している
  • 自宅周辺の道路や駐車場が狭い

軽自動車の取り回しのよさは、毎日の通院や買い物で大きなメリットになります。

ただし、本人の体格と車いすが無理なく収まり、必要な荷物を置けることが前提です。

家族3人以上で出かけるならミニバン

車いす利用者、介助者、子どもなど、3人以上で出かけることが多い家庭では、ミニバンが向いています。

確認するのは通常時の乗車定員ではなく、車いす乗車時に使用できる座席数です。

チャイルドシートを使用する場合は、取り付けられる座席の位置も確認してください。

旅行や帰省に使うならミニバン

宿泊を伴う外出では、車いす以外の荷物が増えます。

長時間の移動中に介助者が本人の近くへ座る必要がある場合も、ミニバンのほうが対応しやすいでしょう。

ただし、年に一度しか遠出をしないのであれば、その一度のために毎日の運転が大変な車を選ぶべきかは慎重に考える必要があります。

普段の用途と、特別な日の用途のどちらを優先するか整理しましょう。

自宅周辺の道や駐車場が狭いなら軽自動車

駐車環境に余裕がなければ、軽自動車が現実的です。

ただし、車体が収まるだけでは不十分です。

後ろにスロープを出し、車いすと介助者が動けるスペースがあるか測りましょう。

メジャーで測るときは、次の長さを確認します。

  • 駐車場の横幅
  • 駐車場の奥行き
  • 車止めから壁までの距離
  • バックドアを開けられる高さ
  • スロープを展開したときに必要な奥行き
  • 車いすを方向転換できる幅

電動車いすやリクライニング車いすならミニバンを中心に検討する

大型・重量のある車いすでは、軽自動車に乗せられる選択肢が限られます。

全幅だけでなく、次の項目も確認してください。

  • 車いすと本人を合わせた重量
  • 全高
  • 全長
  • ヘッドサポートの高さ
  • フットサポートの張り出し
  • リクライニングした状態の長さ
  • 車いすを固定できる位置
  • スロープの耐荷重

寸法表に収まっていても、車いすのフレーム形状によって固定できないことがあります。

必ず現物を販売店へ持ち込みましょう。

介助者が高齢なら操作の少なさを優先する

介助者が高齢だったり、腰や腕に不安があったりする場合は、軽自動車かミニバンかより、介助操作の内容を優先します。

確認したい装備は次のとおりです。

  • 電動ウインチ
  • 車高降下機能
  • 軽いスロープ
  • ワンタッチ式の固定装置
  • 操作しやすいスイッチ
  • 低い位置まで開くバックドア
  • かがまずに使える固定装置

トヨタの一部車いす仕様車では、バックドアを開けた際の車高降下や、電動ウインチの自動モード、ワンタッチ式固定装置など、介助負担を軽減する機能が用意されています。

販売店では、介助者本人がすべての操作を試しましょう。

障害のある子どもの成長を考えるなら将来の寸法も確認する

現在使用しているバギーが小さくても、子どもの成長に伴って、座位保持装置や車いすが大きくなることがあります。

購入時点でぴったり収まる軽自動車を選ぶと、数年後に買い替えが必要になるかもしれません。

販売店や担当の理学療法士、作業療法士などに相談し、今後使用する可能性がある車いすの大きさも確認しておきましょう。

ただし、将来を考えすぎて、現在の生活では扱いにくい車を選ぶ必要はありません。

予定している保有年数と、子どもの成長を合わせて考えることが大切です。

軽自動車を選んで後悔しやすいケース

軽自動車の福祉車両で後悔しやすいのは、車いすが載るかどうかだけで判断した場合です。

例えば、次のようなケースがあります。

車いすを載せたら家族全員が乗れなかった

通常時の乗車定員だけを確認し、車いす乗車時の座席数を見落とすケースです。

付き添いの家族やヘルパーが乗れず、別の車を出すことになる場合があります。

荷物を置く場所がなくなった

展示車が空の状態では広く見えても、車いすと介護用品を載せると、買い物袋を置く場所さえなくなることがあります。

車いすを変更したら載らなくなった

標準型車いすからリクライニング式や電動車いすへ変更した結果、車内に入らなくなるケースです。

長距離移動が想像以上に負担だった

通院には問題がなくても、旅行や帰省では揺れ、騒音、狭さ、荷物の多さが負担になる場合があります。

車いす利用者が圧迫感を覚えた

本人を乗せずに家族だけで車を決めると、実際に乗った本人が窮屈さや不安を感じることがあります。

こうした後悔は、「軽自動車だから起こる」というより、用途や本人の状態との相性を十分に確認しなかったことから起こります。

条件が合えば、軽自動車は日常の移動を支える便利な選択肢です。

ミニバンを選んで後悔しやすいケース

ミニバンでも、広さだけで選ぶと後悔する可能性があります。

自宅の駐車場でスロープを出せなかった

車体は駐車できても、バックドアやスロープを展開する余地が残らないケースです。

病院の駐車場で扱いにくかった

狭い駐車区画や立体駐車場が多い地域では、大きな車が負担になることがあります。

運転が怖くなり、外出が減った

車幅や長さに慣れず、運転できる家族が限られてしまうケースです。

福祉車両を買ったのに、気軽に使えなければ本末転倒です。

近距離しか使わず、維持費が負担になった

広さを求めて大きな車を選んでも、実際には近所の病院へ2人で行くだけということがあります。

使わない広さのために、購入費用や維持費を負担し続けることになります。

広いのに車いす利用者が快適ではなかった

車内は広くても、車いす乗車位置から外が見えなかったり、エアコンが届きにくかったりすることがあります。

「大きな車なら失敗しない」という思い込みを持たず、本人の乗車位置を確認しましょう。

購入前に必ず確認したい7つのポイント

1.普段使っている車いすを実際に載せる

カタログの寸法だけで判断せず、現在使用している車いすを持ち込んでください。

車いすに本人が座った状態で、乗車口、車内高、固定位置を確認します。

2.車いす乗車時に何人乗れるか確認する

通常時の乗車定員と、車いすを載せたときの座席数は分けて考えます。

家族、ヘルパー、チャイルドシートなども含め、実際の乗車人数を販売店へ伝えましょう。

3.普段の荷物を載せられるか確認する

車いすを載せた状態で、介護用品や医療機器、買い物袋を置く場所があるか確認します。

荷物を安全に固定できるかも重要です。

4.自宅の駐車場で乗降できるか確認する

駐車スペースの幅と奥行き、バックドア、スロープ、介助者の立ち位置まで測ります。

可能であれば、販売店へ自宅での実車確認ができないか相談しましょう。

5.よく行く病院や施設の駐車環境を確認する

自宅で使えても、通院先で使いにくければ困ります。

車高制限、駐車区画、後方のスペース、屋根の有無などを確認してください。

6.介助者が一人で操作する

販売スタッフの実演を見るだけでなく、普段介助する人が次の操作を一人で行います。

  1. バックドアを開ける
  2. スロープを展開する
  3. ウインチを車いすへ接続する
  4. 車いすを車内へ誘導する
  5. 車いすを固定する
  6. 本人へシートベルトを着ける
  7. スロープを収納する
  8. 降車時に逆の手順を行う

操作の途中で、腰、肩、膝に負担がないか確認しましょう。

7.車いす利用者本人が試乗する

本人が乗らないまま契約するのは避けましょう。

確認するのは「乗れたか」だけではありません。

  • 乗降時に怖くないか
  • 頭や手足が当たらないか
  • 姿勢が崩れないか
  • 外が見えるか
  • 家族と会話できるか
  • 揺れや音がつらくないか
  • 冷暖房が届くか
  • 試乗後に疲れや痛みが出ないか

言葉で感想を伝えるのが難しい場合は、表情、呼吸、筋緊張、姿勢の変化なども見てください。

迷ったら「普段の生活」と「数年後」を分けて考える

軽自動車とミニバンで迷ったときは、「何となく広いほうが安心」「安いほうがお得」と考えるのではなく、普段の生活を書き出してみましょう。

現在の使い方を整理する

次の質問に答えてみてください。

  • 週に何回乗るか
  • 主な行き先はどこか
  • 片道何分くらいか
  • 何人で乗ることが多いか
  • 誰が運転するか
  • 誰が乗降介助をするか
  • 荷物はどのくらいあるか
  • 自宅の駐車場は広いか
  • 旅行や帰省に使うか

ここで軽自動車の条件に十分収まるのであれば、無理にミニバンを選ぶ必要はありません。

数年後に変わりそうなことを考える

次に、数年後の変化を考えます。

  • 車いすが大きくなる可能性
  • 介護度や身体状況の変化
  • 医療機器の追加
  • 介助者の体力低下
  • 子どもの成長
  • 家族構成の変化
  • 通院先の変更

福祉車両を何年間使用する予定なのかも含めて考えましょう。

遠い将来だけで決めない

将来の不安を考え始めると、最も大きく、最も装備の多い車を選びたくなります。

しかし、10年後に必要になるかもしれない機能のために、現在の運転や駐車が毎日大変になるのも問題です。

現在の生活に合うことを基本にしながら、数年後まで対応できる余裕を考えるのが現実的です。

軽自動車が向いている人のチェックリスト

次の項目に多く当てはまるなら、軽自動車が向いています。

  • 主な用途は通院と近所への買い物
  • 乗車するのは1~2人が中心
  • 1回の移動時間が比較的短い
  • 車いす以外の荷物が少ない
  • 標準的な手動車いすを使用している
  • 自宅周辺の道が狭い
  • 駐車場に余裕がない
  • 大きな車の運転に不安がある
  • 購入費用や維持費を抑えたい
  • 実際の車いすで問題なく乗車できた

ミニバンが向いている人のチェックリスト

次の項目に多く当てはまるなら、ミニバンが向いています。

  • 家族3人以上で乗ることが多い
  • 長距離の通院がある
  • 旅行や帰省にも使用する
  • 介護用品や医療機器が多い
  • 電動車いすを使用している
  • リクライニング車いすを使用している
  • 車いす利用者の周囲に余裕が必要
  • 将来、車いすが大型化する可能性がある
  • 自宅の道路と駐車場に余裕がある
  • 普段運転する人がミニバンを無理なく扱える

まとめ|毎日の使い方に合うほうを選ぼう

軽自動車とミニバンには、それぞれ異なるメリットがあります。

軽自動車は、取り回しやすく、購入費用や維持費を抑えやすいため、少人数での近距離移動に向いています。

ミニバンは、車内空間、乗車人数、荷物スペースに余裕を持たせやすく、長距離移動や家族での外出、大型車いすへの対応を考える家庭に向いています。

ただし、軽自動車でも、本人、車いす、乗車人数、荷物が無理なく収まれば、日常生活では十分に役立ちます。

反対に、広いミニバンを選んでも、運転が怖い、自宅でスロープを出せない、本人の乗車位置が快適ではないということもあります。

福祉車両選びで最も重要なのは、カタログの広さや価格だけで決めないことです。

普段使っている車いすと、実際に乗る本人、普段介助する家族がそろった状態で、次の点を確認してください。

  • 本人が安全かつ快適に乗れる
  • 介助者が一人で操作できる
  • 必要な家族と荷物が乗る
  • 自宅や病院で乗降できる
  • 運転者が無理なく扱える

福祉車両は、大きい車を選べば安心というものではありません。

毎日の移動で無理なく使えて、車いす利用者本人と介助する家族の両方が「これなら出かけられる」と思える車を選びましょう。

ひとりで悩まず、まず整理。

福祉車両の選び方や制度を一緒に整理します。


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この記事を書いた人

やんち
出歩くのが好きなやんちが、外出が困難な方に役立つ色んな情報を発信しています。

仕事:技士をしていましたが現在事務職です。車いすユーザーです。
   手動装置のクルマと電車で通勤してます。
趣味:テニスと英語と美術館巡り
特技:ラジオドラマ脚本は5分番組から1時間番組まで多数放送化されました。
資格:福祉車両取扱士

関西を中心に出来る限り実体験ベースで検証記事を書いています。
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