スロープ車で出かけた雨の日。
目的地に着いたら車いすのままスロープを降り、病院や買い物などの用事を済ませます。
そして再び車へ戻ってきたとき、
「このまま車いすで乗っていいのかな?」
と思うことがあります。
後輪は濡れています。
前輪キャスターには水や砂、場合によっては泥も付いています。
レインポンチョや衣服にも雨水が残っています。
その状態でスロープを上がれば、
スロープ → 車いす固定スペース → 車内床
へ雨水や泥をそのまま持ち込むことになります。
かといって、外出先で車いすをきれいに洗うことなどできません。
そこで今回は、
雨の日にスロープ車へ戻ったとき、その場でできる簡単な雨・泥対策
を紹介します。
目指すのは、車いすを完全にきれいにすることではありません。
「車内へ持ち込む水と泥を、乗る前に少し減らす」
それくらいの考え方で十分です。
前回は「家」、今回は「スロープ車」を汚さない方法
シリーズ第2回では、屋外で使った車いすのタイヤで玄関や室内を汚さない方法を紹介しました。
車いすのタイヤで家を汚さない方法|玄関・室内の雨・泥対策【全4回・第2回】
自宅なら、
・玄関にタオルを置いておく
・吸水マットを使う
・床を保護する
・室内用と外出用の車いすを分ける
など、いろいろな方法が考えられます。
ところが、外出先からスロープ車へ戻るときは事情が違います。
自宅の玄関のような場所はありません。
しかも車いす利用者が乗ったまま車内へ入るため、
その場で短時間にできること
が中心になります。
雨の日のスロープ車で汚れやすいのは3か所
まず、どこが汚れるのかを考えてみます。
特に気になるのは、
1.スロープ床
2.車いす固定スペース
3.その周辺の車内床
です。
タイヤが最初に通るのがスロープ。
そのまま車内へ進み、車いすの定位置まで移動します。
つまり雨の日には、
屋外の雨水・砂・泥が、タイヤの通ったルートに沿って車内へ入ってくる
と考えると分かりやすいでしょう。
実際、ダイハツのハイゼット/アトレー スローパーの取扱説明書でも、スロープの引き出しレールに泥・小石・砂などが詰まると、スロープの引き出しや格納ができなくなる可能性があるとして、異物を取り除く清掃方法を案内しています。
単に「床が汚れる」だけではなく、スロープ周辺に砂や小石を残さないことも大切です。
車へ戻ったら、まず雨をしのげる場所があるか確認する
できることなら、車いすをスロープへ乗せる前に、
・立体駐車場
・建物のひさし
・屋根付きの乗降スペース
・車寄せ
など、雨が直接当たりにくい場所へ車を移動できると作業しやすくなります。
もちろん、どこでもできるわけではありません。
病院や施設などでは、乗降場所や駐車ルールを優先してください。
屋根がなくても、
「乗車前に何分も掃除する」
必要はありません。
大きな泥や水分だけ取って、早く安全に乗車することを優先します。
乗車前にやること① 後輪の大きな水分と泥を取る
まず目につくのが大きな後輪です。
雨の中を走ったあとなら、タイヤ表面には水分が残っています。
泥のある場所を通っていれば、タイヤの溝に泥や砂が付いていることもあります。
乗車前には、
今見えている範囲の大きな水滴や泥をタオルで軽く取る
くらいで構いません。
ここでタイヤを完璧に一周拭こうとする必要はありません。
車いす利用者が乗っている状態で無理に車体を持ち上げたり、タイヤの下へ手を入れたりするのは避けます。
まずは、
車内へ大量に持ち込みそうな汚れだけを減らす。
これが目的です。
乗車前にやること② 前輪キャスターも忘れない
後輪を拭いたら、前輪キャスターも確認します。
小さいので忘れやすいのですが、キャスターも同じ路面を走っています。
特に、
・水たまり
・土のある駐車場
・公園
・砂利道
・雨上がりの未舗装部分
を通った場合は、砂や泥が付いていることがあります。
目立つ泥があれば軽く取り除きます。
ここでもピカピカにする必要はありません。
「スロープに大きな泥を落とさない程度」
と考えると作業しやすいでしょう。
乗車前にやること③ フレームから垂れる水もサッと拭く
タイヤ以外にも水は付いています。
車いすの、
・アームサポート
・フレーム
・フットサポート
・背もたれ
・ハンドグリップ
などから、水滴が垂れることがあります。
車いす利用者がレインポンチョを着ている場合は、その表面にもかなり水分が残っていることがあります。
全部乾かすのは無理ですが、
ポタポタと車内へ落ちそうな水だけタオルで取る
だけでも違います。
レインポンチョは「車に乗ったら終わり」ではない
雨具も意外と車内を濡らします。
スロープ車へ乗ったあと、濡れたレインポンチョを脱いで丸め、そのまま車内へ置けば、そこから水が落ちます。
そこで、
・大きな水滴を軽く払う
・表面をタオルで軽く拭く
・脱いだら防水性のある袋などへ入れる
という流れを決めておくと扱いやすくなります。
帰宅後に袋から出して乾かすことを忘れないようにします。
濡れた雨具を長時間入れっぱなしにするための袋ではなく、車内を濡らさず持ち帰るための一時収納と考えるとよいでしょう。
車内に「雨の日セット」を常備しておくとラク
雨の日に、
「タオル持ってきた?」
「袋は?」
と探していると面倒です。
そこで、スロープ車には最初から雨の日セットを積んでおくと便利です。
例えば、
・タイヤや泥用のタオル
・車いす本体用のタオル
・身体用のタオル
・濡れたタオルを入れる袋
・濡れた雨具を入れる袋
・必要なら簡単なブラシ
などです。
ポイントは、用途を分けること。
泥の付いたタイヤを拭いたタオルと、身体やクッションを拭くタオルは分けます。
タオルを色や大きさで分けておくと、家族や介助者にも分かりやすくなります。
スロープ車では「汚さない」より「汚れても処理しやすくする」
ここでも第2回と同じ考え方が使えます。
雨の日に車内を一滴も濡らさないのは難しいでしょう。
だったら、
汚れたときに処理しやすい状態を作っておく
ほうが現実的です。
例えば、車種や固定装置に支障がない範囲で、車いすが通る場所の汚れを処理しやすくしておく方法があります。
ただし、ここには重要な注意点があります。
車いす固定用のレールや固定金具、ウインチ、ベルトなどがある場所へ、自己判断で厚いマットやシートを敷くのは避けたほうがいいでしょう。
固定装置やスロープの動きを妨げては本末転倒です。
使用できるマットや床保護用品については、車両の取扱説明書や販売店で確認してください。
ダイハツの取扱説明書でも、車いす固定ベルトを取り付ける部分の固定溝や固定金具に、泥・小石・砂などが付いていないことを確認するよう案内されています。
床を守る用品より、車いすを安全に固定できることが優先です。
スロープそのものに泥や砂が残ったら
雨の日に何度か乗り降りしていると、スロープにも泥や砂が残ります。
特にタイヤが通る部分だけでなく、スロープの端や可動部分、引き出しレール周辺も確認したいところです。
ダイハツのスローパー取扱説明書では、引き出しレール部の泥・小石・砂などはブラシなどで取り除き、その後、水またはぬるま湯を含ませた布で軽く拭く方法を案内しています。スロープ全体も、水またはぬるま湯を含ませた布で軽く拭く方法が示されています。
また、金ブラシや金たわしなどはスロープを傷つけたり腐食の原因になったりするおそれがあるとして、使用しないよう注意されています。汚れが強い場合の清掃方法についても車種ごとの取扱説明書を確認してください。
外出先でそこまで掃除する必要はありません。
その場では大きな泥や砂を取り、帰宅してから必要に応じて清掃する。
この二段階で考えるとラクです。
車内を水でジャブジャブ洗うのはNG
泥汚れがひどいと、
「いっそ車内を水で流したい」
と思うこともあります。
しかしスロープ車には、ウインチやスイッチなど電気関係の装置もあります。
少なくともダイハツのハイゼット/アトレー スローパーでは、車内を水洗いせず、雨水などが電気部品へかからないよう注意することが取扱説明書に明記されています。
これはかなり重要です。
スロープ車の車内は「水で丸洗いできる荷室」とは考えないほうが安全です。
実際の清掃方法は、使用している車種の取扱説明書に従ってください。
固定ベルトも濡れたままにしない
車いすを固定するときには、車いす固定ベルトやウインチベルトなどを使う車種があります。
雨の日はタイヤや車いすから落ちた水が、その周辺まで届く可能性があります。
ベルトが濡れたり汚れたりした場合も、自己流で強い洗剤や溶剤を使わないようにします。
ダイハツの取扱説明書では、ウインチベルトや車いす固定ベルトなどが汚れた場合、中性洗剤またはぬるま湯を含ませた布で軽く拭き、乾くまで使用しないよう案内しています。
固定装置は「掃除用品」ではなく安全装置です。
異常を感じたら自己判断で分解・修理せず、販売店などへ相談します。
雨の日こそスロープ上では掃除しない
タイヤの泥が気になるからといって、
車いすがスロープの途中にある状態で掃除を始める
のはおすすめできません。
スロープでの乗降時は、まず安全に乗り降りすることが最優先です。
ダイハツの取扱説明書でも、スロープ先端が完全に接地していることや、車いすの車輪がスロープ端部から外れないよう注意することなどが案内されています。
タイヤの泥を落とすなら、
スロープへ乗る前の安全な場所で行う。
乗車を始めたら、まず車いすを所定位置まで移動させ、安全に固定する。
この順番は崩さないほうがよいでしょう。
外出先では「完璧」ではなく、このくらいで十分
では実際に、雨の日に車へ戻ったとき何をすればいいのでしょうか。
僕なら、次のように考えます。
小雨なら
後輪・キャスターの大きな水分を軽く取る。
車いす本体から水が垂れていなければ、そのまま安全に乗車する。
普通の雨なら
後輪を軽く拭く。
キャスターの泥や砂を確認する。
フレームから落ちる水分を取る。
濡れた雨具を車内でどう収納するか準備する。
その後、安全にスロープから乗車する。
泥汚れがひどいなら
タイヤについている大きな泥や砂を先に取る。
キャスターも確認する。
車いすから大量に水が落ちる場合は軽く拭く。
帰宅したらスロープや車いす固定スペースも確認する。
外出先では応急処置、帰宅後に必要な清掃。
この分け方が現実的です。
「1回の雨」より汚れをためないことが大切
スロープに少し泥が付いた。
車内に水滴が落ちた。
それだけなら、それほど大変ではありません。
面倒になるのは、
雨の日に付いた砂や泥をそのままにして、次の外出でもまた汚れが重なることです。
特にスロープの引き出しレールや固定金具周辺は、砂や小石などの異物が装置の動作に影響する可能性があります。ダイハツの取扱説明書でも、スロープレールや固定金具周辺の異物確認・除去が案内されています。
雨のあとに、
「大きな泥や砂が残っていないか」
だけでも確認しておくとよいでしょう。
車に積んでおくなら「すぐ取れる場所」が重要
タオルを積んでいても、
荷物の一番下。
助手席の奥。
バックドアから届かない場所。
では、雨の中で使いにくくなります。
雨の日用品は、
バックドアを開けたら介助者がすぐ取れる場所
に置くのがおすすめです。
スロープを展開してから、
「あ、タオルが前の席だ」
では面倒です。
小さなバッグやケースにまとめて、定位置を決めておくと使いやすくなります。
ただし、スロープや固定装置、ベルトの動きを妨げる場所には置かないようにします。
雨の日セットに何を入れる?
ここまで読んで、
「だったら車に何を積んでおけばいい?」
と思った人もいるでしょう。
実は、このシリーズではそこが次のテーマです。
例えば、
・吸水性のあるタオル
・泥を落としやすいクロス
・濡れた物を入れる防水袋
・車内床を守る用品
・タイヤ汚れ対策用品
・簡単なブラシ
など、雨の日の後片付けをラクにできる用品があります。
ただし、
何でも車いす専用品でそろえる必要があるとは限りません。
家庭用品やカー用品の中にも使いやすいものがあります。
逆に、スロープ車では固定装置との干渉などを確認しなければならない用品もあります。
そこで最終回では、
「雨・泥汚れの後始末に本当に使いやすいグッズ」
を、家・車いす・スロープ車という使用場所ごとに整理して紹介します。
まとめ|スロープ車へ戻る前に「大きな水と泥」だけ減らす
雨の日に外出先からスロープ車へ戻ると、
「車いすをきれいにしてから乗せないと」
と思うかもしれません。
でも外出先です。
そこまで頑張る必要はありません。
基本は、
後輪の大きな水・泥を取る
↓
前輪キャスターを確認する
↓
車いす本体から垂れる水を軽く取る
↓
安全にスロープを上がって車いすを固定する
↓
帰宅後、必要ならスロープや車内を掃除する
という流れで十分です。
そして、もっと大事なのは、
掃除より安全な乗降を優先すること。
雨の日は路面も濡れています。
スロープの途中でタイヤを拭いたり、無理に車いすを動かして掃除したりするのではなく、乗車前の安全な場所でできる範囲だけ対処します。
スロープ車の雨対策は、
「汚さないこと」ではなく、「汚れを増やさず、あとで簡単に処理できるようにすること」
と考えるとかなりラクになります。
次回はいよいよ最終回。
「車いすの雨・泥汚れの後始末に役立つグッズ」
を紹介します。
家で使うもの、外出先で使うもの、スロープ車に積んでおくもの。
これまで第1回から第3回で紹介してきた対策を、もっと簡単にするための用品をまとめていきます。

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